この週も、ドローン攻撃など予断を許さない状況は続いているが、目立った危機的状況は報告されていない。

 

 

IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、5/3、IAEA専門家らが、4/30、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)付近で100発以上の銃撃音を聞き、同発電所の訓練センター付近を飛行していたドローンに反応したものとされているとの報告を受けたと発表した。

 

IAEAは、ドローン操縦者の訓練基地とドローン発射台がZNPP6号機と訓練センターの近くに配備されているとする報道は承知している。「ZNPP駐在のIAEA専門家は、サイト外周壁内でドローンが発射された形跡や発射台の存在を確認していない。さらに、具体的な5原則によれば、発電所からのいかなる種類の攻撃も固く禁じられている」とグロッシ事務局長は述べた。

 

IAEAチームからは、サイトからさまざまな距離での軍事活動の報告をほぼ毎日受け続けている。4/30午後は、1時間以内に3回、欧州最大の原子力発電所(NPP)ZNPPのIAEAチームは合計100発を超えるライフル銃の発砲を聞いた。5/2、ZNPP側からIAEA専門家に対し、ロシア連邦軍がZNPP訓練センター付近でドローンと交戦しており、被害や死傷者は出ていないとの通知があった。IAEA専門家にはドローンの存在を確認する機会は与えられなかった。

 

グロッシ事務局長は、「同発電所での今回の最近の軍事活動は、この大型原子力施設に重大な原子力安全・核セキュリティ上の課題をもたらす不安定な状況が続いていることを示している」と述べた。

 

IAEAのザポリージャ支援・援助ミッション(ISAMZ)チームはこの週、2024年以降の計画保全活動についてZNPP側との議論を続けた。プラント側は、2年以上前の武力紛争開始以来、ZNPPで実施される予定だった最も大規模な保守活動についての延期されていた作業を続ける計画であることを確認した。

 

グロッシ事務局長は、「どんな原子力発電所でも、安全上重要な機器の動作の信頼性を確保するには厳格な手順が必要だ」と発言。「武力紛争の真っ只中に初めて置かれたプラントZNPPでの安全上重要な設備の保守は、複雑かつ最重要な課題だ。」

 

IAEAには、1号機の安全上重要な機器の保守活動が5月中旬に再開される予定であり、3系統ある安全系トレンのうち第1トレンから再開されるとの説明があった。1号機の保守作業は年央頃までに完了する予定で、同時期に6号機で約3カ月間の保守作業を始める予定。続いて2024年後半に、2号機で約6か月にわたる保守活動を開始する予定である。

 

ISAMZは、一部の安全系設備は、コンポーネントの分解と再組み立てを含む包括的な方法で保守されるとの説明を受けた。IAEA専門家は、これらの保守活動を支障ない範囲で視察できるよう要請する予定。

 

ISAMZチームはこの週もZNPPサイトでの定期的ウォークダウンを継続した。5/2、チームは 750kVの屋外開閉所を実地検分し、4系統の750 kV主電力系のうち1系統だけが接続を維持している状況を視察した。チームには、紛争が続いているため、他の3系統の発電所への接続を回復するための作業ができないと、あらためて説明があった。IAEA専門家は引き続きザポリージャ火力発電所(ZTPP)の330kV屋外開閉所を実地検分する許可を求めているが、この要請は相変わらず拒否されている。

 

チームは5/3早くにZNPP冷却水ポンドと給水関連施設を実地検分し、ZTPP放水キャナル隔離ゲートの健全性を確認し、ZNPP冷却水ポンドの測定点を視察することができた。しかし、ZNPP冷却水ポンド隔離ゲートを実地検分したいというチームの要請は「安全上の理由」により承認されず、そのためチームはゲートの補強の状況や全体的な健全性を確認することができなかった。 IAEAが最後にZNPP冷却水ポンドの実地検分を許可されたのは2023年11月だった。

 

先週、IAEAの専門家らは1号機と5号機の原子炉建屋と安全システム室を実地検分し、原子炉の冷却ポンプや稼働中の使用済燃料プールを視察した。チームは原子力安全上の問題を視認することはなかった。1号機では、チームは安全系熱交換器群の今後の保守に向けた準備作業を視察した。チームは1号機と2号機のタービン建屋も訪れ、設備の一部を視察することができたが、やはり建屋の西側への立ち入りは許可されなかった

 

さらにこの週、ZNPP側からISAMZに対し、5月中旬に予定されているサイトでの冷却システムに関連したシナリオに基づく緊急時対応演習へのオブザーバ参加を許可すると通知があった。

 

ウクライナの他の地域では、フメリニツキー、リウネ、南ウクライナの原子力発電所、およびチョルノービリ・サイトのIAEAチームから、原子力安全・核セキュリティは引き続き維持されていると報告があった。リウネ原子力発電所のIAEAチームには、2系統の750 kV電力系のうちの1系統が4/26早朝から13時頃までの数時間利用不能となったが、発電所の運転の安全性には影響がなかったと説明があった。

 

この週、IAEAはウクライナへの原子力安全・核セキュリティ関連機器の新たな納入2件を手配し、納入実績は46回となった。南ウクライナ原子力発電所は、高放射線場およびガンマ線スペクトロメータに使用するビデオ監視システムを受領した。この機器はオーストラリアと欧州連合からの資金で調達され、サイトでの原子力安全・核セキュリティの強化に有効と想定されています。

 

関連報道:

 

ロシアメディア:

https://iz.ru/1691527/2024-05-03/eksperty-magate-soobshchili-o-mnogochislennykh-vystrelakh-vozle-zaes