低温停止中の1,2,6号機の原子炉建屋へのIAEA立ち入りが、またも拒絶された。理由は格納容器が「封印」されていることだと言うが、全く意味不明であきれるしかない。元々、立ち入りもエアロック経由でしかできない密閉構造のはず。何の説明にもなっていない。

「封印」して、隠密の作業を中で行っていると誰でもが思うだろう。また、いつものカルチャア氏(ロシア国内で原子力発電所の運転を行っているロスエネルゴアトム社の総裁付顧問の肩書を持つ人物。本件に関する露側スポークスマン。原子力科学技術のバックグラウンドはない。)の言い訳がタス通信に掲載されるだろうから、楽しみに待っておこう。

厳冬のザポリージャでも、井戸水は凍ることなく冷却水は確保できているという点は一安心。

 

 

IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、1/12、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)駐在のIAEA専門家は、まだ1、2、6号機の原子炉建屋への立ち入りが許可されておらず、同発電所の原子力安全・核セキュリティ、国連安全保障理事会で確立された5つの具体的な原則の状況を監視する能力を妨げられていると述べた。

 

1/11にIAEA専門家のローテーションが首尾よく終えられ、2022年9月にIAEA支援・援助ミッション(ISAMZ)が始まって以来、15番目の専門家チームが原発に到着したのを受け、新チームは6号機原子炉建屋への立ち入り要請を繰り返した。

 

ZNPP側は原子炉建屋が「封印(sealed)」されているとして、1/12は立ち入りを許可しなかった。 ZNPP側はチームに対し、立ち入りを拒否しているわけではないと説明し、約1週間以内の期間に当該エリアに立ち入ることをチームに提案した。

 

2023年12月、ISAMZチームは1、2、6号機原子炉建屋への立ち入りを拒否されたが、これは低温停止中の原子炉建屋にIAEA専門家が適時に立ち入ることを許可されなかった初の事例であった。それまでは、ISAMZの全チームが低温停止中のどのユニットの原子炉建屋にもアクセスできており、プラント側が格納容器の状態を「封印」されている等と言うことはなかった。

 

「専門家によるZNPPへのタイムリーなアクセスをこのように制限することは、原子炉ユニット、使用済燃料プール、安全関連機器の状態に関する報告内容を、独立的かつ効果的に確認するなどして安全・セキュリティ状況を評価するIAEAの能力を妨げている」とグロッシ事務局長は述べた。

 

また、昨年10/18以降、ISAMZチームは各ユニットのタービン建屋の一部にアクセスできていない。最新事例は、1/10水曜日、1,2号機のタービン建屋で立ち入りがまたも制限されている

 

「原子力安全・核セキュリティの状況は依然として非常に不安定であり、IAEAが原子力安全と核セキュリティの7つの柱を評価し、原子力安全と核セキュリティを確保するための5つの具体的な原則の遵守状況を監視できるよう、アクセスを妨げないことを求める要請を私から改めて繰り返す。ZNPPでの原子力事故を防止し、プラントの健全性を確保するために尽力する」とグロッシ事務局長は付け加えた。

 

IAEA専門家の新チームは、ZNPPで進められている保全活動の状況を監視することになる。 12/22に6号機の弁、ポンプ、複数の安全システム室の床でホウ酸の堆積が観察されたことを受け、IAEAチームは1/9に状況を評価するためフォローアップ・ウォークダウンを実施した。 原子力安全機能を維持するため、一次冷却材にはホウ酸水が使用されている。漏洩が発生する可能性は否定できないが、迅速に調査、補修、除染を行って、さらなる損傷を防ぎ、安全への影響を回避することが重要だ。

 

ウォークダウン中、チームは、12/22のウォークダウン時と比較してホウ酸の堆積が大幅に減少し、漏れも大幅に減少したことに注目した。しかし、一部の堆積が6号機格納建屋の3部屋に残置されており、1つは同じレベル、2つはレベルが大幅に低減していた。

 

チームは、漏洩の原因は経年劣化によるホウ酸タンクのマイクロクラックと漏洩検知管の閉塞によるものであると報告を受けた。管の閉塞は修復されたが、ホウ酸タンクのマイクロクラックからの微小な漏洩は幾分残っている。ZNPP側は、漏洩量は現在技術仕様書(T-Spec.または「安全管理要領書」とも)で定められた制限を超えておらず、マイクロクラックはタンクをドレンすれば修繕可能なので、定期保守期間中に対処すると述べた。 IAEAチームは引き続き状況を監視する。

 

さらに、この週、ZNPP駐在IAEA専門家は、3、4号機のポンプ場、および1~6号機の中央制御室に立ち入った。プラントに設置されている9基の可搬式ディーゼルボイラー全基が、前週、冬季間の暖房ニーズに追加的に対応するよう利用された。

 

冬の天候が寒くなるにつれ、IAEA専門家から、ZNPPの外気温度が朝には―10℃まで下がるようになったとの報告があった。チームからは、この温度低下も、原子炉の冷却やその他の原子力安全・核セキュリティ機能に使用されるスプリンクラー・ポンドに冷却水を供給する11基の井戸の運用には影響しなかったとの報告があった。水の流量は一定のレベルを維持していた。

 

ZNPPの6基の原子炉のうち5基は低温停止状態にあり、4号機は蒸気と温熱を生産するために高温停止状態にある。これには、ほとんどの発電所スタッフが住んでいる近隣のエネルホダル市も含まれる。

 

新ISAMZ チームは、プラントの人員配置状況、特に中央制御室の運転要員や安全上クリティカルなインフラやプロセスの保守要員に細心の引き続き注意を払っていく。

 

1/12、専門家の新チームは、4基の新たなディーゼルボイラーを含め、サイトのウォークダウンを実施した。チームは新たな機器を視察し、設置が完了し、試運転の活動が開始されたとの説明を受けた。これら新たなディーゼルボイラーは、ZNPPのニーズを満たす蒸気を生成することを目的としている。

 

紛争がZNPPに物理的に近接していることを日々想起させるかのように、当地のIAEA専門家は原発までの様々な距離での大きな爆発音を聞き続けている

 

リウネ、フメリニツキー、南ウクライナ原子力発電所(NPP)及びチョルノービリ・サイトのIAEAチームからは、前週のウクライナへの複数回のミサイル攻撃による困難にもかかわらず、原子力安全・核セキュリティは維持されているとの報告が続いている。

 

フメリニツキー原発のIAEA専門家は、1/6,7の週末、またも数回にわたりシェルターへの避難することが必要となった。リウネ原発と南ウクライナ原発のチームも1/6にシェルター避難を求められた。チョルノービリ・サイトでは、チームから、前週いっぱい遠くで爆発音が聞こえたとの報告があった。

 

グロッシ事務局長は、この戦争中、原子力事故を防ぐためにはあらゆる手段を講じるべきであると繰り返し述べた。「原子力発電所とその関連インフラが影響を受けないようにすることが重要だ。原子力事故からは誰も得をしないし、事故は避けなければならない」と語った。

 

またこの週、IAEAはリウネ原発と南ウクライナ原発に無線通信システムを提供した。同機材は英国資金で調達された。これは、34回目のIAEAからウクライナへの原子力安全・核セキュリティ関連機器提供であり、必要に応じて、各サイトでの通信手段の多様性と信頼性を高め、確実に利用できるようにすることを目的としている。