• 海外報道:福島第一原子力発電所の原子炉燃料デブリ取り出しが遅延
  • ラスト・エナジーの英国プロジェクトにおける許認可活動が進捗
  • INL試験キャンペーン、MARVEL冷却システムの検証を完了
  • ナノ・ニュークリア社のALIPポンプ技術、市場投入に一歩前進
  • ノースウェスタン・エナジー、サウスダコタ州におけるSMRの実現可能性調査へ
  • 米国の発電量と電力価格が過去最高を記録
  • 米国で党派間の緊張が高まる中、上院はD.ライト氏をNRC委員長として承認
  • ライトブリッジ社、濃縮ウラン先進燃料サンプルを製造
  • ジェレズノゴルスクの再処理センター第2期工事開始
  • チェコ・ドコバニ原子力発電所のランドマーク、煙突の解体作業が開始
  • ミズーリ大学の研究者らがテルビウム161の製造について報告
     

海外報道:福島第一原子力発電所の原子炉燃料デブリ取り出しが遅延

福島第一原子力発電所の損傷した原子炉からの本格的な燃料デブリ取り出しの開始は、当初予定の2030年代初頭ではなく、早くても2037年になる見込みだ。福島第一原発1~3号機には、推定で合計880トンの燃料デブリがある。これらの燃料デブリによるリスクを低減するため、原子炉からの燃料デブリ取り出しの準備が進められている。当初は、使用済燃料が既に取り出されている3号機から取り出しを開始することを目指していた。取り出された燃料デブリは、サイト内に建設される新たな貯蔵施設に保管される。

東京電力ホールディングス株式会社(東電)は、2024年11月と2025年4月に、2号炉から少量の燃料デブリサンプルの採取に成功。しかし、東電は具体的な取り出し方法を検討した結果、作業の準備だけでも12年から15年かかるとの結論に至ったと報じられている。

共同通信によると、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志廃炉総括監は7/29の記者会見で、「最初の少量のデブリの取り出しの困難さが明らかになった」と述べた。

福島第一原発(写真:東京電力)

東電プレス:

https://www.tepco.co.jp/press/release/2025/pdf3/250729j0101.pdf 

東電発表工程:

ラスト・エナジーの英国プロジェクトにおける許認可活動が進捗

米国のマイクロ原子炉開発企業であるラスト・エナジーは、英国原子力規制局(ONR)によるPWR-20発電所の設計に関する予備設計審査(PDR)を無事に完了したことを受け、南ウェールズ・プロジェクトの立地許可決定を2027年12月までに取得できる見込みであると発表した。リンフィ発電所は12万kWの石炭火力発電所で1951~1977年まで運転された。ラスト・エナジーのプロジェクトは正式名称を「Prosiect Egni Glan Llynfi(ウェールズ語で「リンフィ・エネルギー・プロジェクト」の意味」といい、ラスト・エナジーUKリミテッドが開発を進めている。2025年1月、ラスト・エナジー社は、マイクロ原子炉開発企業として初めて、自社プロジェクトの原子力立地許可取得活動を正式に開始。ONR、環境庁、ウェールズ天然資源庁(NRW)は、PWR-20のPDRを完了した。これら当局の共同報告書は、2025年6月に審査が無事完了したことを確認したものである。報告書によると、ラスト・エナジー社が2027年12月までに立地認可決定を受けるという目標は達成可能だが、これは同社が予備設計審査で合意された基準とスケジュールに従って提案を提出することを条件としている。

リンフィ・クリーン・エネルギー・プロジェクトのレンダリング(画像:ラスト・エナジー)

関連記事:

https://ameblo.jp/hamasaki-pejp-nr/entry-12886865896.html 

 

INL試験キャンペーン、MARVEL冷却システムの検証を完了

米国アイダホ国立研究所(INL)は、実物大の熱モックアップである一次冷却装置試験を用いて、マイクロ原子炉研究実証プロジェクトMARVELの安全冷却システム試験(PCAT: Primary Coolant Apparatus Test)を完了した。技術者らは、原子炉の受動的自然循環を検証し、試験データと予測モデルとの整合性を確認。これにより、製造、安全性に関する文書作成、そして最終的にはINLの過渡原子炉試験施設(TREAT)への導入の道が開かれた。

MARVEL とそのサブシステムの断面図(画像:INL)

 

ナノ・ニュークリア社のALIPポンプ技術、市場投入に一歩前進

ナノ・ニュークリア・エナジー社は、ニューヨーク州ウェストチェスターの実証施設に特設されたテストループに「環状線形誘導ポンプ(ALIP:  Annular Linear Induction Pump )」を組み込み、商用化に向けた重要なマイルストーンを達成した。ALIPシステムは、機械コンポーネントではなく電磁気コンポーネントを用いて導電性流体を移動させるもので、溶融塩炉および液体金属炉向けに設計されている。

ナノ・ニュークリア・エナジー社のALIP技術(中央)は、カスタム設計された熱チャンバー内のテストループに組み込まれている(画像:ナノ・ニュークリア・エナジー)

 

ノースウェスタン・エナジー、サウスダコタ州におけるSMRの実現可能性調査へ

米国の電力会社ノースウェスタン・エナジー社は、最近承認された料金値上げから54万ドル以上を充当し、サウスダコタ州における小型モジュール原子炉(SMR)の実現可能性調査を行う。同社の複数年にわたる調査には、立地選定、パートナーシップの構築、地域社会への働きかけなどが含まれており、2027年までにSMRの実現可能性に関する判断が下される予定。ノースウェスタン・エナジーは、SMRが設置面積の縮小、受動的安全システム、信頼性の高いカーボンフリーエネルギーといった潜在的なメリットをもたらすことを強調している。また、地元指導者層は、SMRが州のエネルギーミックスの一部となれば、人材育成と経済成長の機会が生まれると考えている。

2025/1/15、サウスダコタ州を通る二酸化炭素パイプライン建設の申請に関するサウスダコタ州公益事業委員会会合(写真:Adam Thury / Mitchell Republic)

 

米国の発電量と電力価格が過去最高を記録

2025年上半期、米国の発電量は、太陽光発電と風力発電の大幅な増加に牽引され、過去最高を記録した。化石燃料は総電力の54.8%を占め、クリーンエネルギーは45.2%を占めた。小売電力価格も、データセンターや電気自動車などの需要増加やインフラ整備の影響を受けて、平均1kWhあたり18.2セントと過去最高を記録した。

米国の1月から6月までの電力生産量は2025年に過去最高(画像:Reuters Open Interest)

2000年以降の米国の月間平均電気料金(画像:Reuters Open Interest)

 

米国で党派間の緊張が高まる中、上院はD.ライト氏をNRC委員長として承認

米国NRC(原子力規制委員会)委員長を務めていたデビッド・ライト氏は、連邦議会上院で50対39の賛成多数で再任を承認され、任期5年のNRC委員長に就任した。2020年からC委員長を務めていたライト氏は、トランプ大統領によって再指名され、2030年までその職を務める。ライト氏の承認は、NRCの民主党委員の解任や、上院民主党議員による委員会の独立性に関する懸念を受けて、党派間の緊張が高まる中で行われた。

2021年、連邦議会でNRC委員のデビッド・ライト氏。上院は、任期満了後のライト氏のNRC復帰を承認した。(写真:Francis Chung/E&E News)

関連報道:

https://www.foxnews.com/politics/senate-confirms-trump-pick-lead-independent-nuclear-regulatory-commission 

 

ライトブリッジ社、濃縮ウラン先進燃料サンプルを製造

ライトブリッジ社は、同社製次世代商用燃料に使用する予定の合金燃料組成を有する濃縮ウラン-ジルコニウム合金のクーポンサンプルを製造した。同社によると、これは既存の軽水炉および加圧重水炉向けの独自の次世代核燃料技術であるライトブリッジ燃料の開発における重要なステップであり、原子炉の安全性、経済性、そして核拡散抵抗性を大幅に向上させることができるとしている。濃縮ウラン-ジルコニウム合金クーポンサンプルは、同社独自の方法を用いて製造された。この方法は、以前、アイダホ国立研究所(INL)でジルコニウム合金被覆を施した劣化ウランサンプルを用いて実証されている。

濃縮クーポンサンプルは、ライトブリッジとINLとの既存の共同研究開発契約に基づき、INLの改良型試験炉(ATR)で照射試験を受ける予定。ライトブリッジ燃料は、小型モジュール炉向けにも開発されている。

完成した濃縮ウラン-ジルコニウム合金クーポンサンプルが INLとライトブリッジ社の煙突よってグローブボックス内で目視検査されている(画像:ライトブリッジ社)

濃縮ウラン・ジルコニウム棒(押し出し加工後)(画像:ライトブリッジ)

 

ジェレズノゴルスクの再処理センター第2期工事開始

使用済核燃料処理の「実験・実証センター」の第2複合施設が、初期実験段階を経て、開設された。クラスノヤルスク地方ジェレズノゴルスクの鉱業化学コンビナート(MCC)に設置されたこのセンターは、産業用モジュールであり、放射性廃液を生成せずに燃料を再処理する世界初の施設となるとロスアトムは述べている。使用済核燃料の再処理に加え、将来の大規模再処理施設の設計に資するデータと試験装置を取得することも目的としている。ロスアトムのアレクセイ・リハチェフ総裁は、「実験・実証センター第2期の開設は、クラスノヤルスク地方に核燃料サイクルの完結に貢献するクラスターを創設するという、我々の大規模な取り組みの重要な一部である。…天然ウランの割合を大幅に削減し、使用済核燃料処理生成物を再利用することで、世界で初めて産業規模で核燃料サイクルを完結させる。今後数十年にわたり、MCCの実験・実証センターは、第4世代原子力技術への移行過程において、原子力産業全体にとって重要な拠点の一つとなるだろう。実験・実証センター第2期が設計容量に達すると、年間約200トンの使用済核燃料を処理できるようになる」と述べた。

リハチェフ氏、開始式典で演説(写真:ストラナ・ロスアトム)

 

チェコ・ドコバニ原子力発電所のランドマーク、煙突の解体作業が開始

チェコ共和国のドコバニ原子力発電所では、原子炉建屋よりも古い高さ100mのガス排出煙突の解体作業が始まった。この煙突は、1970年代半ばに稼働を開始した補助ボイラー室の一部で、建設現場の暖房や最初のユニットの起動に必要な熱供給を支えていた。解体工事は、発電所の各ユニットが稼働している間に行う。工事は9月末までに完了する予定。工事は、500トンクレーンのロープに吊り下げられた機材を用いて行われ、2台目のクレーンに乗った作業員が遠隔操作で操作する。煙突の直径は、基部で6.69m、上部で2.69m。内部は耐火粘土レンガ、外殻はコンクリートブロックでできている。

ドコバニ原子力発電所のランドマーク、煙突の解体作業が開始された(画像:CEZ)

1978年の現場の様子 (画像:CEZ)

(画像:CEZ)

 

ミズーリ大学の研究者らがテルビウム161の製造について報告

ヘザー・ヘンケンス準教授らミズーリ大学研究原子炉(MURR)の研究者らは、がん治療用テルビウム161(Tb-161)の製造、精製、製剤化に向けた取り組みについて、Radiochimica Acta誌に論文を発表した。このラジオアイソトープは、既にがん治療に実用化されているルテチウム177(Lu-177)と同じ化学族に属す。

ヘザー・ヘンケンス准教授(画像:ミズーリ大学)