久々にチョルノービリの様子について近況を語っている。巨大な新安全閉じ込め構造物(NSC)へのドローン攻撃でに開いた穴をふさぐ応急処置工事が進行中ということだが、NSCの防護機能は維持できていて、放射性物質の漏洩はないということを強調している。ウクライナ側からは、機能を失っていることを強調する発信することが多いのと対照的であり、本件に対するスタンスに違いが出てきている。

実際には、通常の状態であれば、ほとんど影響はないとみてよいだろう。ただし、NSCの内部で事故現場を覆っているのは、事故直後に急ごしらえで造られた「石棺」である。この石棺の損傷・崩壊による放射性物質漏洩に備えて造られたのがNSCなので、石棺が崩壊したりすると、NSCの穴から放射性物質が漏洩することは避けがたい。そこは理解しておいてほしい。

 

ザポリージャでは、毎日、爆発音、南ウクライナ原発ではドローン、フメリニツキー原発では空襲警報で屋内退避。破局的事故紙一重の状態は、いささかも緩和していない。

 

IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、4/30、ウクライナの技術者と建設作業員が、2025年にドローン攻撃で甚大な被害を受けたチョルノービリ原子力発電所の新安全閉じ込め構造物(NSC)の応急的な修復作業を行っていると述べた。

 

2/14のドローン攻撃により、1986年の事故で破壊された原子炉からの放射性物質の放出を防ぎ、外部からの危険から原子炉を守るために建設されたNSCの屋根に大きな穴が開いた。この攻撃による火災とくすぶりは、完全に鎮火するまでに数週間を要した。

 

ウクライナ北部のチョルノービリ原子力発電所に駐在するIAEAチームは、先ごろ、NSCを実地検分し、約3か月前の攻撃を受けて同発電所が進めている建屋の構造健全性評価の取り組みについて協議するとともに、浸水を防ぐための内外装の補修状況を視察した。

 

「ドローン攻撃直後、ウクライナの緊急対応要員は火災の拡大防止と消火を急いだ。現在、サイト側は、被害の全容把握と短期的な復旧作業に注力している。巨額の費用と国際的な支援を受けて建設されたNSCが広範囲に被害を受けたことは明らかだ」とグロッシ事務局長は述べた。

 

しかしながら、事務局長は、今回の被害による放射性物質の放出はなく、NSCは引き続き防護機能を維持できていると改めて強調した。

 

ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)では、IAEAチームが過去1週間、毎日、遠方での爆発音を聞き続けており、原子力安全・核セキュリティが直面する潜在的な危険を常に思い起こさせている。

 

IAEAチームは、サイトにわたってウォークダウンを行い、6基の原子炉の緊急時制御室、4号機の安全系設備、そして2か所の新燃料貯蔵施設を実地検分した。

 

ウクライナで運転中の3つの原子力発電所(フメリニツキー、リウネ、南ウクライナ)では、計9基の原子炉のうち3基が燃料取替と保守のため停止を続けている。

 

南ウクライナ原子力発電所では、IAEAチームから過去1週間にわたり多数の空襲警報の報告があった。チームはサイト側から、4/25夜、プラントから1.5kmの距離で6機のドローンが検知されたとの報告を受けた。これは、ドローンを撃墜しようとしたらしい軍事活動の音とも一致していた。

 

フメリニツキー原子力発電所では、IAEAチーム員は4/30朝、空襲警報のため屋内退避を余儀なくされた。

 

IAEAのウクライナ向け医療支援プログラムの一環として、日本の資金援助を受け、ウクライナ国立医学アカデミー国立放射線医学研究センター(NRCRM)にインフルエンザ治療薬200箱が届けられた。

 

NSCの損傷個所を内部から見た映像(画像:NHK動画からのキャプチャ)

 

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NHKによるチョルノービリ取材