- カナダ政府が原子力投資を発表
- 中国のユニットにパッシブ安全モジュールを据付
- クルスク II 期3号機をロシア原子力規制当局が承認
- ロイド・ レジスター、AI を活用して洋上原子力許認可を支援へ
- ストラテック・グローバルと アルバトロス・グループ が戦略的提携を締結
- オラノとエネルゴアトム、ウクライナ原発向けウラン濃縮役務提供契約を締結
- 欧州、ITER の 真空容器第2セクターの製造を完了
- 使用済燃料貯蔵関連の口頭弁論、米国最高裁は二分
- スウェーデン、放射性廃棄物の10万年記憶プロジェクトを計画
- Ac-225: 核廃棄物からがん治療へ
カナダ政府は、次世代のCANDU原子炉技術の開発を支援するため、4年間でアトキンス・レアリスに最大3億400万カナダドル(314億円)を貸し付ける予定であり、また、サスカチュワン州、アルバータ州、オンタリオ州の原子力プロジェクトに対する数百万ドルの新たな資金提供と支援も発表した。ジョナサン・ウィルキンソン・エネルギー天然資源大臣は、政府がアトキンス・レアリスと予備契約を締結し、「新しい大規模なCANDU原子炉(例:モナーク)」の設計費用の半分まで、最大3億400万カナダドルを4年間の融資で賄うと発表した。アトキンス・レアリスもこれに同額を拠出する予定だ。カナダ原子力公社(AECL)、発電所運営者、およびカナダのサプライ・チェーン全体も、CANDUの設計を近代化する作業に参加する。同相はまた、環境・気候変動省のスティーブン・ギルボー大臣に代わって、カナダ環境・気候変動省の未来電力基金による原子力プロジェクトへの追加資金提供を発表した。さらに、カナダ天然資源省の2つのプログラムの下で、サスカチュワン州、アルバータ州、オンタリオ州におけるSMRおよびCANDU原子炉の開発と導入、および脱炭素化の取り組みを支援するさまざまなプロジェクトに総額5,240万カナダドルを拠出すると発表した。
モナーク・コンセプトのレンダリング(画像:アトキンス・レアリス)
中国遼寧省の徐大堡原子力発電所3号機(VVER-1200)に原子炉建屋のパッシブ水タンクが据え付けられた。一方、福建省の漳州原子力発電所3号機(華龍一号)には、パッシブ原子炉キャビティ注水タンクの最初のモジュールが据え付けられた。
徐大堡3号機の原子炉建屋の受動水タンクは4モジュールで構成され、各モジュールは鉄筋コンクリートスラブ、ステンレス鋼被覆、貫通部、熱交換器、壁補強材で構成される。中国核工業集団(CNNC)の子会社である中国核電工程有限公司(CNPEC)は、4モジュールが2/25に所定の位置に吊り込まれたと発表した。
(画像:CNPEC)
CNNCは、また、漳州原子力発電所3号機原子炉建屋の受動型原子炉キャビティ注水タンクの最初のモジュールが3/2に無事に吊り込まれたと発表した。
(画像:CNNC)
ロシア連邦環境・技術・原子力監督局(Rostekhnadzor)は、クルスク II 期原子力発電所の 3号機の建設予定地の許可を発行し、建設準備作業の開始を許可した。クルスク II はロシア西部にある新しい原子力発電所で、ウクライナ国境から約 60 km。ロシアの大型軽水炉設計の最新版である VVER-TOI 原子炉 4 基が設置される。圧力容器がアップグレードされ、定格熱出力が 330万kW に向上し、発電端電気出力 130万kW を実現する。1号機の建設は 2018 年に始まり、ポーラークレーンが 2021年10月に設置され、原子炉容器は2022 年 6 月に据え付けられた。1号機の外側ドームのコンクリート打設は 2023年8月に完了。2 号機も建設中。
クルスク II はクルスク(I期)原子力発電所の出力を十分代替する (画像: ロスアトム)
ロイド・ レジスター、AI を活用して洋上原子力許認可を支援へ
英国を拠点とする船級協会兼専門アドバイザリー サービスのロイド・ レジスター(LR)社は、マイクロソフトと共同で生成 AI を活用し、洋上原子力技術の応用を推進すると発表した。LRは、マイクロソフトAzure OpenAI サービス上に構築されたパーミッティング・ケイパビリティに生成 AI を使用する初の海事組織の1つとなり、「陸上と海上のアプリケーション間のギャップを埋める」ことを目指す。「この機能は、原子力技術の規制プロセスを強化するように設計されており、LRは、洋上アプリケーションでの原子力の展開を促進するためにこれを使用する」と同社は言う。Azure の生成 AI 機能は、過去の原子力許認可データを分析することで機能し、許認可担当技術者が新しい許可文書をより迅速に作成して、レビューと改良の準備を整えることを可能とする。また、大規模な規制データセットに埋もれている規制、前例、その他の貴重な情報をすばやく検索することもできる。
原子力発電船の将来の設計予想(画像:Lucid Catalyst)
ストラテック・グローバルと アルバトロス・グループ が戦略的提携を締結
南アフリカの高温ガス冷却炉開発企業ストラテック・グローバルは、アフリカと中東での潜在的プロジェクトの実現可能性調査の準備を目的として、フランスのアルバトロス・グループ(Groupe Albatros) との戦略的提携を発表した。ストラテックによると、この提携は、アフリカと中東全域に小型モジュール炉(SMR)を展開することを目的としている。ケルビン・ケム会長は「ストラテック・グローバル・コンソーシアムは、極めて高度な原子炉の開発に数十年を費やしてきたが、この原子炉は、稼働するのに大きな水域を必要としない。現在、世界中のほとんどの原子力発電所の制約は、冷却に海か非常に大きな湖を使う必要があることだ。当社のHTMR-100原子炉は、水があるかどうかに関係なく、どこにでも設置できる」と述べた。アルバトロス・グループのアンリ・ギヨーム・ゲダン会長は「アフリカと中東が野心的なエネルギー安全保障と工業化の目標を追求する中、信頼性が高く、拡張可能で、排出ガスのない発電の必要性はかつてないほど高まっている。SMRシステムの世界の未来は今、私たちの目の前に広がっている。この機会を逃すわけにはいかない」と述べた。
HTMR-100 ユニットの外観 (画像: ストラテック・グローバル)
オラノとエネルゴアトム、ウクライナ原発向けウラン濃縮役務提供契約を締結
オラノ社とウクライナ国営原子力発電会社エネルゴアトムは、2040 年までのウラン濃縮役務提供に関する長期商務契約を締結したことを発表した。これは3/6、エネルゴアトムとオラノの共同声明への署名で確認された。本契約により、エネルゴアトムはウクライナの原子力発電所に燃料を供給するための濃縮役務の信頼性と多様性を確保できる。顧客の需要増大に対応するため、オラノは2023年にフランスのジョルジュ・ベス2ウラン濃縮工場の生産能力を30%拡大する大規模プロジェクトを開始。これにより、現在から次の10年初頭までに、同工場の年間最大容量は11,000tSWUに増加し、世界中のウラン濃縮役務提供における主要プレーヤーとしてのオラノの地位が強化される。
(画像:エネルゴアトム)
関連報道:
ITER計画とBA活動を推進するEUの担当機関「フュージョン・フォー・エナジー(F4E)」は、アンサルド・ヌクレアーレ、ウェスティングハウス、ウォルター・トスト社で構成されるAMWコンソーシアムと連携して、国際熱核融合実験炉 (ITER) の真空容器の欧州 2 番目のセクターの製造を完了した。ITERのプラズマ・チャンバーすなわち真空容器は、核融合反応を収容し、最初の安全閉じ込めバリアとして機能する。内部容積は 1,400㎥で、高さ 14m以上、重量 440tの 9個のくさび形鋼セクターで構成される。組み立てられた ITER 真空容器は、外径19.4m、高さ11.4m、重量約 5,200tになる。その後、ブランケットやダイバータなどの容器内コンポーネントを設置すると、真空容器の重量は 8,500tになる。各真空容器セクターは4セグメントで製造され、組み立てには 1.6㎞を超える溶接が必要となる。真空容器セクターの製造は、欧州(5セクター)と韓国(4セクター)が分担している。
(画像:アンサルド・ヌクレアーレ)
米国NRC(原子力規制委員会)によるテキサス州オフサイト使用済燃料貯蔵中間貯蔵施設の認可をめぐる最高裁判例の口頭弁論で、判事たちはNRCの認可権限について議論し、放射性物質を無期限に貯蔵することの広範な意味について疑問を呈した。連邦法はオフサイト貯蔵を明確に禁止していないというNRCの主張を4人の判事が受け入れる姿勢を示し、意見は分かれたようだ。
ワシントン D.C. の最高裁判所は、2025/3/4撮影(写真:グレッグ・ナッシュ)
関連報道:
スウェーデンの放射性廃棄物管理の10万年計画には、深地層処分場と、廃棄物の危険性を将来の世代が理解できるように設計された「重要情報ファイル(KIF)」が含まれている。このプロジェクトには、地下500mに建設される使用済燃料処分施設と、将来の社会に放射性廃棄物の危険性を警告するために設計された42ページの文書が含まれている。KIFには、放射性廃棄物の概要、処分場の技術的詳細、および将来の世代への指示が含まれている。
スウェーデンは、核廃棄物を10万年間安全に保管できるように設計された長期保管施設を建設中(写真:リンショーピング大学/iStock)
冷戦後に残された使用済核廃棄物を処分する米国DOE(エネルギー省) の取り組みは、新しいがん治療に非常に求められている放射性アイソトープであるアクチニウム 225 (Ac-225) の供給にとって恩恵となっている。最近、テネシー州のDOEオークリッジ環境管理局 (OREM) のスピンオフとも言えるこの取り組みについて、主な関係者(OREM マネージャーのジェイ・マリス氏、テラパワー・アイソトープス社長スコット・クローンチ氏、アイソテック社サラ・シェイファー氏)が AuntMinnie.com に最新状況を語った。
Ac-225 は親アイソトープ・トリウム-229 (Th-229) から崩壊して生成する。Th-229は、テネシー州のウラン-233(U-233) ストックパイルから抽出されてワシントン州エバレットのテラパワー社の施設に送られ、Ac-225と言うミルクを生む「乳牛」役を果たす。テラパワー・アイソトープスは、1グラムのTh-229 から年間約 2,000ミリキュリーのAc-225 を「搾乳」できると予想していると、クローンチ社長は述べた。「したがって、計算上、サプライ・チェーンが大規模になれば、年間約 90,000 ミリキュリーの収穫が見込まれる」と同氏は述べた。
テラパワーは最近、このプロジェクトを通じて最初のAc-225バッチを出荷し、米国、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパの放射性医薬品開発企業と10件以上の供給契約を結んでいる。他のアイソトープ開発企業はIAEA(国際原子力機関)を通じてAc-225へのアクセスを得ているが、英国は、最近OREMと同様の取り組みを開始した。
画像:AuntMinnie.com動画からのキャプチャ