休刊中の9/17に入ってきた情報で、紹介できていないものが少なからずありました。

遅れをお詫びします。

  • IAEA、原子力発電の成長予測を引き上げ、SMRのシェアが拡大
  • 中国のSMRに発電機固定子を据え付け
  • エンドユーザーが原子力発電所の新設を支援するには
  • IEA、エネルギー転換における原子力の役割拡大について議論
  • 議定書締結で、ウズベキスタンの原子炉建設サイトでの現地工事開始へ
  • テレストリアル社、一体型溶融塩炉のパートナーを追加
  • 英国ドンレイでヘビ型ロボットを試験
  • 原子力発電所の作業員には専門的な応急処置訓練が不可欠
  • NRC コミッショナー指名候補、批判に反論し環境レビューを支持
     

IAEA、原子力発電の成長予測を引き上げ、SMRのシェアが拡大

IAEA(国際原子力機関)は、原子力発電容量の成長予測を引き上げ、ハイケースシナリオでは、2023年の3億7,200万kWから2050年までに2.5倍の9億5,000万kWに増加すると予測している。IAEAの最新報告書「2050年までの世界のエネルギー・電力・原子力発電予測」(第44版)は、オーストリアのウィーンで開催されたIAEA総会初日に発表された。世界統計を地域別にまとめたこの報告書には、2050年までに発電容量が40%増加にとどまり5億1,400万kWになると予測する低ケースシナリオも含まれている。この報告書での予測成長率の引き上げは4年連続であり、高ケースシナリオは2023年の報告書より7%高く、低ケースシナリオでも11%高い。

どちらの予測でも、小型モジュール炉(SMR)の占める割合が増加しており、低ケースシナリオでは新規発電能力の6%がSMRによるものであるのに対し、高ケースシナリオでは新規発電容量の24%、つまり約1億4,000万kWがSMRによって発電されると予測されている。報告書では、あらゆる電源からの総発電量が2050年までに2倍以上に増加すると予測している。

IAEAのアンリ・パイユエール氏が新報告書の要点を説明(画像:WNN)

 

中国のSMRに発電機固定子を据え付け

中国核工業集団公司(CNNC)は、中国海南省昌江の小型モジュール型原子炉(SMR)ACP100実証プロジェクトで、発電機固定子が所定の位置に据え付けられたと発表した。CNNCによると、ACP100(玲龍一号とも呼ばれる)の発電機は、固定子、回転子、冷却器の他、2つのベアリングボックスで構成される。長さ約6m、重量130tを超える発電機固定子は、9/14に二次系建屋内の発電機ベースに正常に据え付けられた。

CNNCによると、楊重作業の主な難点は取付エリア狭いこと。「発電機固定子は2基のクレーンで吊り上げ、保守用取り出しホールから蒸気タービンプラットフォームまで通し、最終的に発電機ベースに定置することが必要で、非常に高い位置決め精度が必要だった」とCNNCは述べている。さらに、「発電機固定子の吊り込み設置が成功したことで、その後の蒸気タービン発電機ユニット据付のための強固な基盤が築かれた」と述べている。

発電機固定子の吊り上げ(画像:CNNC)

発電機ベースに据え付けられた固定子(画像:CNNC)

 

エンドユーザーが原子力発電所の新設を支援するには

人工知能(AI)、大規模エネルギー集約型産業ユーザー、電化により、より多くの電力を求める新たな市場動向が生まれている。また、電力はクリーンで信頼性が高く、安価でなければならない。世界原子力シンポジウム 2024 のパネリストは、原子力発電所が新しいタイプのエンドユーザーのニーズを満たすのに役立つ新しいビジネスモデルを俯瞰した。

たとえば、セメント業界は現在、セメント1トンあたり約100kWhを使用しているが、CCSを導入することで業界のエネルギー需要が2倍になり、追加のグリーン電力の「大きな需要」につながるという。この分野の多くのプレーヤーは、太陽光、風力、バイオマス、廃熱の利用など、「独自の電力生産」に向かっているが、これらの電源だけでは、エネルギー集約型産業の増大する需要を満たすことはできない。「正直に言えば、その需要を満たすには原子力以外に方法はない」という。

(画像:世界原子力協会)

 

IEA、エネルギー転換における原子力の役割拡大について議論

9/13に開催された国際エネルギー機関(IEA)の会議では、政府、産業界、金融、国際機関、学界から約80名の専門家が集まり、エネルギー転換における原子力の役割拡大について議論した。出席者は、エネルギー安全保障と気候変動緩和における原子力の重要性を強調した。出席者はまた、投資不足、政策リスク、市場競争などの課題についても言及した。

(画像:IEA)

 

議定書締結で、ウズベキスタンの原子炉建設サイトでの現地工事開始へ

ウズベキスタン原子力庁(ウザトム:Uzatom)原子力発電所建設局とロシアのロスアトムのエンジニアリング部門であるJSCアトムストロイエクスポルトによる議定書の署名により、ウズベキスタン初の原子力発電所の建設現場での現地工事着工が可能となった。

この文書は、加圧水型原子炉RITM-200Nをベースとして、ウズベキスタンのジザフ地域に建設される6基の小型モジュール炉(SMR)原子力発電所の契約が5月に調印されたことを受けてのものだ。5万5000kWのRITM-200Nは、ロシアの原子力砕氷船で使用されているRITM-200を改造したものである。これはロシアのSMRにとって初の輸出注文であり、陸上型の最初のバージョンは現在ロシア北極圏のサハ共和国で建設中であり、2028年の運転働開始を目指している。

(画像:ウズベキスタン国営通信社)

 

テレストリアル社、一体型溶融塩炉のパートナーを追加

テレストリアル・エナジー社とニューメリカル・アドバイザリー・ソリューションズ(NAS)社は、テレストリアル社の溶融塩炉をさらに発展させるための覚書を交わした。「NASの親会社であり、主要産業部門と地域市場に精通したエンジニアリング・サービスのマーケット・リーダーであるザックリー社とのパートナーシップは、IMSR 展開の能力が拡大し、テキサスを拠点とする産業分野を含む複数の分野と市場に到達できるようにする」と、テレストリアルのサイモン・アイリッシュCEOは語る。

 

英国ドンレイでヘビ型ロボットを試験

英国スコットランドのドンレイで、閉鎖空間を調査するために、新たなヘビ型検査ロボットの試験運用が行われた。1954年から1994年まで英国の高速増殖炉実験研究開発センターであったドンレイのチームは、ノッティンガム大学と共同で、作業員が近づけない厳しく制限されたエリアにアクセスできる、シンプルで安価で使い捨て可能なロボットの開発に取り組んできた。放射線を検知するためのカメラ、ライト、指用線量計(訳注:ヘビ型なので指輪のように装着するものと思われる)を備えたこのロボットは、現在ドンレイで使用されていないラボの1つで試験中であり、セルの大部分を占めるターンテーブル下のエリアを検査している。

ヘビ型ロボット(画像:原子力復旧サービス(NRS、旧マグノックス社))

 

原子力発電所の作業員には専門的な応急処置訓練が不可欠

原子力施設は独特の危険をもたらすため、従業員が緊急事態に効果的に対処するための専門的な応急処置訓練が必要となる。米国労働安全衛生局(OSHA) などの規制当局やIAEA(国際原子力機関)は、放射線被ばく、感電死、火傷などのリスクを軽減するための備えの重要性を強調している。プラント管理組織は、作業員が心肺蘇生法や自動体外式除細動器(AED)の使い方を知っていることを確認し、充実した救急キットを維持しておくことを優先すべきである。

原子力施設での作業には特有のリスクが伴うため、こうした傷害が発生したときにどのように対処するかを理解することは重要である(画像:Nuclear Engineering International)

 

NRC コミッショナー指名候補、批判に反論し環境レビューを支持

アイダホ国立研究所(INL)に派遣された上院環境公共事業委員会の政策顧問マシュー・マルツァーノ氏は、NRC(原子力規制委員会)コミッショナーへの指名に関する承認公聴会で、ブレークスルー研究所の批判的な論文に反論し、自身の資格を擁護した。マルツァーノ氏は、原子力発電所の再認可に新たな環境レビューを義務付けるという NRC の決定に同意し、上院議員らからさまざまな反応が寄せられた。(訳注:この後、同氏への指名投票は11/17に延期されている)

マルツァーノ氏(画像:EXCHANGE MONITOR)

関連報道:

https://www.eenews.net/articles/senate-republican-questions-nrc-nominees-qualifications-2/