小規模個人再生と給与所得者等再生は、再生計画に対する決議の要否という相違点のほかに、履行可能性の観点と最低弁済額の観点からの相違点もあります。

個人再生では、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」がある必要がありますが、給与所得者等再生では、さらに、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」でなければなりません。

すなわち、給与所得者等再生を利用するためには、より一層の安定収入が求められるのです。実務上は、申立て前2年間の年収が20パーセント以上変動していないかを見ることが多いでしょう。

また、給与所得者等再生を利用する場合、「可処分所得」の2年分以上の額を返済することが求められます。

可処分所得とは、大まかに言えば、収入から公租公課(税金、社会保険料等)と生活費を差し引いた額のことをいいます。

個人再生手続における可処分所得の計算は、年収や家族構成、居住している地域等の諸条件を計算式にあてはめることによって自動的に算出されものですので、可処分所得の2年分が清算価値を上回るケースもよくあります。そのため、給与所得者等再生を選択すると、再生計画における計画弁済総額が高額になってしまい、弁済負担が大きくなってしまうことがありますので、収入が安定している方でも、大口債権者が再生計画に反対する可能性が低い場合には、小規模個人再生を選択する方が有利であると言えます。

このように、小規模個人再生を選択するか給与所得者等再生を選択するかは、収入の安定性、可処分所得の多寡、大口債権者の動向を勘案し、総合的に判断する必要があるのです。

改正前民法では、契約自由の原則が規定されていませんでしたが、契約が当事者の申込みと承諾によって成立するという大原則も、規定されていませんでした。

改正法では、国民にわかりやすい民法の観点から、契約の成立と方式に関する明文規定が新設されました。

 

(契約の成立と方式)
第五百二十二条  契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。  
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

 

522条1項で申込みと承諾によって成立することが明記され、2項で原則として申込みと承諾だけで成立する(意思主義)ことが規定されました。
したがって、契約は、口頭でも成立しますし、メールやラインでも成立するということになります。

もっとも、契約の成否やその内容について紛争となった場合、裁判において、口頭で契約が成立したと主張しても、それを裏付ける客観的な証拠がなければ、主張を認めてもらうことは難しいということになります。

そこで、不動産取引においては、契約書を作成するのが通例となっており、さらに、宅建業法によって、重要事項説明書の交付も義務付けられているのです。

但し、契約書が作成されていなくとも、例えば、不動産取引で言えば、移転登記や代金の支払がある、契約当事者が物件の引渡しを受けて居住している、というような場合は、契約があったことが推定できることになります。

 


 

個人再生手続には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。

名称からすると、個人事業主は前者、サラリーマンは後者を選択すべきようにも思えますが、個人の方であれば、職業にかかわらず、いずれの手続も利用することができます(実務上は、小規模個人再生の利用が多いです。)。

両手続の最も大きな違いは、再生計画の認可において、「小規模個人再生」では債権者による決議が必要であるのに対し、「給与所得者等再生」では、債権者に対する意見聴取で足りるという点です。

例えば、住宅ローンを除く負債総額が1000万円であり、そのうち、600万円の債権を有する債権者が、債務者の個人再生手続に消極的である場合、小規模個人再生を選択すると、当該債権者が再生計画を不同意として再生計画が否決されてしまいます。

申立ての前の段階で、大口債権者が、個人再生手続に明確に反対の意思を表明している場合や、再生計画に反対する可能性が高い場合には、小規模個人再生ではなく、給与所得者等再生を選択すべきということになります。