でもやっぱり #1 | 五月雨ゆか

五月雨ゆか

稚拙な文章ですが趣味で小説書いています。内容はすべてフィクションです。




アイドルが恋愛してはいけないというのはよく言われることだけどそれがグループ内となれば話は別だ。そういう勝手な理論のもと、私と菜緒は付き合っていて同棲中だ。だけれども…

「ただいま~」

「…」

「菜緒?ただいま~」


玄関から声をかけるが、返事がない。今日はグループの仕事の後、私は単独の仕事があったので菜緒の方が確実に先に帰っているはずなのだ。玄関の鍵も開いてたし。


「ただいま~」

リビングの扉を開けると菜緒が台所で黙々と料理をしていた。気付いてるはずなのになぜか頑なにこっちをみようとしない。


「どうしたん?」


そういうと菜緒はチラッとこちらをみた。そして小さくため息をつきながら、おそらくレシピをみていたのであろう、近くに置いていたスマホを手に取るとなにやら操作してから私の方に見せてきた。


「これは何かな?」

「あっ…」


そう、それは番組収録の楽屋でメンバーの河田陽菜といちゃいちゃしているところだった。何を隠そう、菜緒は異常なほど嫉妬深いのだ。

「はい、そこに正座」

「はい…」

言われたとおり正座する。
多少の言い訳はあるのだけれど、ここで言い訳すると火にガソリンを注ぐような事態になるのでこの状況ではすべて菜緒に従わなくてはならないのだ。


「何か言い訳はありますか?」

「いいえ、気軽な意思でやってしまいました。」

「金村さんが好きなのは誰ですか」

「小坂菜緒さんです」

「金村さんと付き合ってるのは誰ですか」

「小坂菜緒さんです」

「今後他のメンバーとのいちゃいちゃは二度としないと約束できますか」

「もちろんです。私には小坂菜緒さんしかいません」

「はい、よろしい。じゃあ着替えて一緒に料理しよ!」


ここまでがいつものテンプレートなのだ。ここまでいうと機嫌が戻っていつも通りの菜緒になるのだ。