世界って広いんですね♪ | 浜田真実*しげのぶ真帆 文筆と朗読の「まほろふ舎」

浜田真実*しげのぶ真帆 文筆と朗読の「まほろふ舎」

昭和の終り頃、シャンソン喫茶「銀巴里」にて歌手デビュー。平成の中頃に、心と身体を整えるボイトレ教室「マミィズボイススタイル」オープン。「声美人で愛される人になる」「説得力のある声をつくる」等出版。この頃は「しげのぶ真帆」名義で、文章を書き朗読もしています。

以前、レッスンに通って下さっていたA子さん(20代)。
彼女は、歌のレッスンをしていたのだけれど、歌おうとすると身体が緊張して、心臓の鼓動が早くなるらしい。見ていると、呼吸も浅いし、全身がカチカチ。
歌が苦手だと思い込んでいた。
いや、苦手というより、恐れていたみたい。

眉間にシワを寄せて、必死で歌っているA子さんを見ていると、歌は楽しみや歓びではなく、「苦痛」や「苦行」のようだ。
「ゆるめてね~」と、何度注意をしても、A子さんには「ゆるめる」という感覚すら分かってもらえなかった。

ある日レッスンの際に、A子さんと一緒に、人体図を見た。
人間の身体って、構造的には大きな個体差はないでしょう。自分だけ、特別骨組みが違うとか、血液が青いなんてないし。私たちはどうしたって、同じ人間なんだわねぇ
と言った私のぼんやりした一言で、A子さんはハッと気づいたらしい。

あぁ、そうか!私も人間だわ。考えるのではなく、もっと身体を意識して生きてみよう。せっかく身体があるんだし

それからA子さんは、通勤時にふっと息を抜き、電車の揺れに身を任せてみた。
「力を抜くと重心が安定して、よろけたりしないんだ。なるほど~。それに、この揺れって、意外に気持ち良いなぁ」
さらに、駅から会社まで歩くとき、呼吸を深めてただ自分の身体を感じてみたそうだ。
すると…

「人の動きが見えるんです。びっくりしました~!」

A子さんは、毎朝、こんなにたくさんの人が自分の側を歩いていたなんて、今までまったく気付かなかったそうだ。
きっと、眉間にシワを寄せて、自分の前の狭い空間しか見ていなかったんだろう。
緊張と、ごちゃごちゃしている思考から離れることで、身体がゆるみ、視野が拡がり、自分の横の空間の広がりも、空の高さにも気付いたと言うA子さん。
 
私の身体のまわりに、初めて世界ができたようです

なかなかの名言だった。
 
私たちは、思考にとらわれると身体から切り離される。
場合によっては、身体を緊張させることで、世界との関わりを意識的に閉ざそうとする人もいる。
生きて行くのは、辛いことも多いからね。
でも、もったいない。
良いことも素敵なことも、たくさんあるのに。

私たちは、世界の、自然の一部。
「心」と「身体」と「頭」のバランスをとることで、必ず本質に戻れる。
歓びの中で、幸せに穏やかに生きることも出来るはずだし、きっと、自分自身を救い、自分以外の誰かを歓ばせることにもつながる。

A子さんは、レッスンの最後に晴れやかな笑顔で言った。
「あきらめなくて、良かった・・・」

ホント、良かったね。
私も、嬉しい。
  
◆ボイストレーニングのマミィズボイススタイル
◆濱田真実ホームページ

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