QSLカード問題 | はじめてのアマチュア無線

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アマチュア無線を始めたばかりの方、あるいはン十年ぶりに再開局された方、アマチュア無線のイロハを解説するブログです。

※本記事は作成時点の情報をもとに記載しています。事実と異なる部分が見つかれば、随時修正をしていきますが、その旨をご了承ください。

 

QSLカード問題は2つある

QSLカード問題と聞いて、まず先に浮かぶのが、「QSLカードの転送に10か月もかかる」ということかと思います。

開局して、QSOして、その最初のカードが到着するのが10か月後では、冷めてしまいますね。

昔は3,4か月で来たのにというOMさんもいらっしゃると思いますが、現在は隔月配送となっていますので、5,6か月が適切ではないかと思います。

 

もう一つの問題は、電子QSL問題です。

世界的にはe-QSLやLoTW、CLUBLOGといった電子QSL、国内ではhQSLといった電子QSLが増えています。

それぞれ一長一短ありますので、どれが良いということはありませんが、いずれにしてもJARLとして行っているサービスはありません。

 

JARLの検討状況

かつて存在した「電子QSL委員会」に代わって、「QSL問題対策委員会」が設置されたことは、単に電子QSLを検討するのではなく、総合的に「QSLカード」というテーマに対して対策を考えていこうという意味では大きな進歩と言えると思います。

ここでは、確認できている事実だけを列挙します。

QSLカード転送問題

 QSLカード会社を2社体制(一説では分業・委託)とする。

 QSLカードを従量制にする。

 QSLカードの削減を行う。

電子QSL問題

 国内で利用者の多いhQSLを推奨していく(理事会決定ではない)

 LoTWとの連携を模索する。

 

世界の潮流

世界的には、e-QSL、LoTW、CLUBLOGといったサービスの利用者が増えており、紙QSLを移行した雰囲気の残るe-QSLやマッチング処理やアワード発行を主体に考えるLoTWといったように、それぞれ特徴を持ったサービスとなっています。

特にデジタルモードでは、QSO後、即これらのサービスにデータがアップされることも多く、すでに世界的な流れとなっています。

また、世界では、元々アマチュア局の少なかった地域や政情不安定等で、閉鎖されるビューローがあったり、ビューローといっても、数人のボランティアによって成り立っている地域もあります。

 

IARUは紙QSLカードの削減を推奨しています。ビューローの負荷の低減や、物流コストの削減もありますが、直接的な記載こそないものの、紙を使用するという環境問題にも向き合っているのではないかと思います。

 

日本のアマチュア局の現状

 世界的には電子QSLが多く利用されるようになっています。大きなDXペディションも電子QSLで発行されるようになってきており、この流れを止めることはできないと思われます。

 日本の局の現状を見ているとデジタルモードでは電子QSLがかなりの比率を占めている(紙カードと両方を送られる方もいる)一方で、フォーンやCWなどは紙カードが多いというのが現状かと思います。

 

なぜ、QSLカードが必要なのか

 元々、QSLカードは「交信証明書」であり、通信が不確実な時代、お互いが発行することでその証明として使われてきました。

 現在は、QSLカードにいろんな楽しみ方があり、人それぞれなので一概には言えませんが、主な目的がアワード取得のためという方は多いのではと思います。最近では電子QSLも認められているアワードが多いようですが、そうではないものもまだあるのではと思います。

 

 

どうするべきか(ここからは推測と意見も入ります)

1.QSLカード転送問題

 (1)カード枚数の削減

 現状の10か月を適正な期間(概ね5,6か月)にすることが先決です。

 ただ、一時的にコストをかけて処理をしても、キャパを超えた枚数が毎月送られてくるようでは、いつまでも解決しません。

 IARUの推奨に従い、紙QSLカードの削減に取り組む必要があります。

 例としては、以下のものです。

  ・デジタルモードでは、紙QSLカードは発行せず、電子QSLのみ送るようにする。

  ・同時期の複数回のQSOは1枚のカードに記載する。

  ・コンテスト時のQSLカード発行の抑制

 このほかにも施策はあると思いますが、これを浸透させ、現在のキャパに収まれば、転送問題は半分解決です。

 

 (2)コスト問題(収入面)

  ほとんどの方は知らないと思いますが、昔はカードにステッカーを貼って出すといういわゆる発行者負担の仕組みがありました。これを再び導入しようという流れがあるようです。課金については、別の方法が望ましいですが、複雑な仕組みにして、結果的にビューローの負荷を上げてしまっては元も子もありません。ここで案を上げると、こんな感じになるのではと思います。

 ・従量課金とし、100g(大体30~40枚)までは無料、100gを超え、100gごとに100円

 ・JARLが発行したステッカー(ステッカーはネット、事務局等で入手可)を紙に貼り、QSLカードに同梱

 ※カード1枚ごとに貼るのではなく、送ったカードの重量に従い、100gで1枚とかを別の台紙に貼るようにする。

 

 ビューローは、開封後、重量を測り、ステッカーの枚数を確認するだけですので、大きな負荷にはなりません。(枚数ではなく、重量にしたのはビューロー負荷の低減です)

 問題は、イベント時にJARLや支部等が行っているサービスです。大抵の場合はコンテナが置いてあるだけで自由にカードを入れられるようになっています。イベント時にどうするかは、検討する必要があります。

 

 (3)コスト面(経費削減)

  ビューローの効率化という観点では、機械化があげられます。

  かつて、JARLが郵便番号自動読取機を導入しようとした際、初期投資で数億、年間の保守料で1億前後がかかるということで断念した経緯があります。現在の人手によるコストを考えても、ここは正しい判断だったと思います。一方で、郵便番号自動読取機ほどの精度がいらないOCR読み取り、区分装置は処理スピードや区分量にもよりますが、数百万から2千万前後で導入可能とも聞きます。カードを削減しようとしている中での導入には効果を十分に検証する必要がありますが、人員を増やさず、転送期間を短縮するという観点では検討しても良いかと思います。

 

 ※現状のコストの詳細情報がありませんので、推測ですが、QSL処理能力が100万枚/月、人員が1人減で5年で投資を回収といった計画をきちんと立てることが必要と思います。

 

2.電子QSL問題

 電子QSLへの流れは世界的なものだということを書きましたし、今後もその流れは変わりません。

 世界の流れに周回遅れをとったJARLですが、一発逆転を望める状況でもありません。

 今から構想を練って、システム化してとやっていたら、普通のシステム会社でも1年や2年はかかりますし、コストもばかになり

せん。hQSLを推奨するという案に対して反対する意見も多いですが、新しくシステムを作る際に、既存のものを買収するのは一般企業で良くある話ですし、hQSLを土台にして、それを発展させていくというのは、ビジネス的に見ても有りかと思います。

勿論、現状のhQSLをJARL標準とするには課題が多すぎます。

ただ推進するとか、標準にするだけでなく、いつまでに何を改変していくのかといったスコープをはっきりさせて取り組むことが必要と思います。

結果的にhQSLがJARL標準となっても、今とは全く別物に発展していることもあるでしょうし、hQSLはつなぎとして、数年をかけてJARLとして独自システムを開発するというのもありかと思います。

 一方でJARL森田会長のLoTWとの連携の話も真実味があります。既に世界的に確立されているシステムのライセンス供与を受けるとか、英語が苦手な人向けに日本語化なり、インターフェースの部分をJARLが担うとか、こちらも方法がたくさんあると思います。現状、LoTWも刷新しようとしており、刷新のためのプロジェクトマネージャーの募集をしていたように思えます。ARRLとしては、そこそこ金のかかる話ですが、JARLからも何らかの形でこの仕事に加わることで、JA向けの機能も追加できるのではないでしょうか。大きな話ですので交渉・折衝力も重要ですし、JARLとしての考えをしっかりとまとめておく必要もあります。

 

最後に

JARLは「QSLカード転送があるから」という理由で会員になられている方が多数います。電子QSL化でそのメリットがなくなると、一気に退会の嵐になりそうです。あまり多くの時間をかけるのは得策ではありませんが、もっと多くのJARLの魅力を出し、多くの方に信頼され、電子QSLが浸透してもJARLの会員数は減らないことを切に願います。