映画の題材が、インドで、生理用の紙製ナプキンの普及に努めた男の実話ということで、男性の私からは、ちょっとした苦手意識というか、観るのに、やや抵抗のあった本作ですが、仲良くして下さっている、映画ブロガーの、めえめえさんからのお薦め作品との後押しもあり、今回、変な偏見は捨てて、TOHOシネマズ二条にて、昨日の朝イチの午前8時30分からの上映回に本作の鑑賞に行って来ましたが、率直な感想として、予想を遥かに凌ぐほど、すごく面白くまた感動作でしたので、取り急ぎ、この作品についてご紹介したいと思います。

「現代の偉人・信念の人パッドマン(18.12/28・字幕)」
ジャンル:人間ドラマ
原題:PADMAN
製作年/国:2018年/インド
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
公式サイト:http://www.padman.jp/site/
上映時間:137分
公開日:2018年12月7日(金)
監督:R・バールキ
キャスト:
アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー、アミターブ・バッチャン


【解説】
現代のインドで、安全で安価な生理用品の普及に奔走した男の実話を映画化したヒューマンドラマ。
インドの小さな村で最愛の妻と新婚生活を送るラクシュミは、貧しくて生理用品が買えず不衛生な布を使用している妻のため、清潔で安価なナプキンを手作りすることに。
生理用品の研究とリサーチに明け暮れるラクシュミは、村人たちから奇異な目を向けられ、数々の誤解や困難に直面する。
そんな彼の熱意に賛同した女性パリーの協力もあり、ついに低コストで大量生産できる製造機の発明に成功。
農村の女性たちに、ナプキンだけでなく、その製造機を使って働く機械も与えようと奮闘するラクシュミだったが……。
主演は「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」のアクシャイ・クマール。共演に「ミルカ」のソーナム・カプール。
(以上、映画.comより、引用抜粋。)

お話しの流れ的には、
インド北部の地方の小さな村。
ラクシュミ(アクシャイ・クマール)は、新妻を迎えていました。
妻ガヤトリ(ラーディカー・アープテー)は、ラクシュミの母と妹2人に温かく迎えられ、ラクシュミを家長として新しい生活が始まっていたのでした。
何でも修理する工場で機械工として働いているラクシュミは機械いじりが大の得意。タマネギを切って泣いている妻の姿を見て、自動タマネギ裁断機を作るような心優しい夫でした。


或る日、家族団らんの食事中に慌てて部屋を出て行く妻を追いかけようとしたラクシュミは、「これは女の問題。あなたは見て見ぬ振りをしてたらいいのですからね。」と、母と妹に止められる。この村では、生理は穢れたものとされて、その間のおよそ五日間は生理中の女性は部屋を出てベランダでの生活を強いられるのでした。

ラクシュミは度々ベランダに往き来し妻と一緒にいようとしていたのでしたが、その際に、妻が干していた生理用の汚れた布に驚かされたのでした。
「こんな汚い物を使っていたら病気になる。」と思い立ち、直ぐに薬局に生理用ナプキンを買いに行くと、55ルピーもするインドの一般庶民にはかなりの高額なものなのでした。
(およそ、インドでのお米1㎏の相場の約7倍、コーヒー1杯のなんと約5倍以上に相当する価格なのでした。)
それでも買って帰ったラクシュミでしたが、喜び勇んで一旦は手にした妻のガヤトリでしたが、その値段を聞き卒倒するのでした。
「そんな高価な物、返品してきて!お義母さまにも怒られる!」
しかし、薬局で返品も断られ、ポケットに生理用ナプキンを突っ込み職場に向かったラクシュミ。
ちょうどその時、機械工仲間が機械に挟まれて大流血の騒ぎが起きていた。
早く止血しないとと、咄嗟にナプキンを使って止血して病院へと運んだのでした。
しかし、当の怪我人も職場仲間も「なんて不浄な物で止血したんだ!」と責め立てたのでしたが、医者のみはこの措置を絶賛。
「もしも違う不潔な布であったら、そこからバイ菌が入り、腕は切断することになったかもしれない」。更に医者は続けてこう言ったのでした。「ここでは女性が汚い布を生理用に使っていて、病気になることも多いんだ。」と。

やはり、愛する妻の身体の為には綺麗な生理用ナプキンを使って欲しい。しかし、高くて手が出ない。
「そうだ!それならば自分で作ればいいんだ!」と。
こうして、ラクシュミの挑戦が始まったのでした。
と言ったイントロダクションの映画でした。

率直な感想としましては、
予想以上に面白く、私が今年観た計66本の新作映画の中、(昨年公開分は除き)ベスト10にランキング入りするか否かなくらいの感動作でしたし、本当に面白い悪戦苦闘の半生記を描いた作品でした。
映画ブロガーの、めえめえさん。今回もお薦め頂き、私の本作の劇場鑑賞の後押しをして下さり本当に有り難うございました。
今回、観に行って良かったです。

先ず、最も感心すべき点は、たとえ実話ベースとは言えども、邦題の副題からおおよその展開は想像できてしまうかも知れません。が、実際には、そんな生半可で良くありがちなサクセスストーリーではない上に、また、女性用の生理用の紙製ナプキンの普及という苦労話を、おそらく、日本であっても、映画ではなかなか取り扱いにくい題材を真正面から捉えながらも、ちゃんとエンタテインメントとして成立する作品に仕上げているところが実に見事でしたね。

正直、男性の私からすると、テレビに流れる生理用ナプキンのCMでさえも、家族団らんのお食事時やゴールデンタイムに放映されると、気恥ずかしさもあるくらいで、逆に、こういったCMの放送時間もテレビ局サイドでも配慮して欲しいと思うくらいでしたので、これは本当に驚かされました。

次に、感心したのは、生理用の紙製ナプキンの普及に尽力した主人公が男性だという点です。
しかも、古い伝統が色濃く残り、宗教的な戒律が厳しいインドでは、つい最近の21世紀になった2001年が舞台であるにも拘わらず、あまりにも前近代的な慣習から、生理を「穢れたもの・不浄な物」と見做して、生理中の期間のおよそ五日間は家の外のベランダでの生活を強いられるという実に非科学的な風習にはとても驚かされました。

ですから、更にそこに主人公の男性が分け入って積極的に尽力して発明をし、事業を興して、意識改革をしていき、生理用の紙製ナプキンの普及をしていったというのが、本当に驚きでしたね。

▲アニメ化や小泉今日子さん主演で映画化もされた『生徒諸君!』。
因みに、私も、その昔々に、同級生から借りて読んだ、当時人気を博していた少女漫画『生徒諸君!』を読んだ際に、大阪から転校してきた少年・沖田というキャラクターが主人公の少女・北城尚子(通称:ナッキー)に向かって、「女は生理っちゅうもんがあるから穢れてるんや!」といった女性蔑視・偏見のような内容の台詞があり、この生理を穢れと見做す定義がいまいち理解出来ずに、首を傾げていましたが、同様に、この映画の主人公のラクシュミの気持ちや純粋な生理に対する疑問も分かるのですが、それでも彼の一途なくらいのバイタリティ、不屈の精神には圧倒されていまうばかりでした。

では、果たして、今回のケースにて、ラクシュミのこの不断の努力のモチベーションとなったものはいったい何なのか?
単純に考えますと、一途な妻に対する愛情の為か、それとも金儲けになるからか、のどちらかと思ってしまいます。
しかし、肝心の妻のガヤトリの方は、古くからの女性の生理の風習や世間体、恥の文化などから、ラクシュミのこの行動をすごく嫌がっていましたし、また、金儲けを目論んでいたのではないという事は後半の展開で解るので、誰もが不思議に思うところではないでしょうか。

それは、実は、当初は、単純に、妻の身体の為を気遣っての一途な気持ちが契機だったのだとは思いますが、それが周囲から可哀想なくらいに異常者・変態扱いされ、自尊心は傷付きしていく中、やがて発明意欲からの使命感が宿りするうちに、達成せざるを得ない心境に到達したから他ならないかとも思われました。


今回の主人公は、実話でも、発明家ではありますが、決して、生理用の紙製ナプキン自体やその自動製造機を新規に発明したわけではありません。
既存の生理用ナプキンを安価に製造できるように機械を簡易型の手動製造機に作り替えたに過ぎないのであって、それ自体は、特許出願の中でも、特許というよりも、おそらく実用新案レベルだとは思います。
しかし、彼が素晴らしい発明家なのは、その簡易型の手動製造機を使って女性達にこの仕事を広めて、雇用の創出と生理用ナプキンの普及を図ったことではないでしょうか。


おそらくこのビジネスモデルは、女性の生理用の紙製のナプキンの需要がなくならない限り、かなり理想的なものかという気がしました。
ラクシュミは決して金儲けをしたかったわけではないのです。
なぜならば金持ちになっても喜ぶのは自分だけ。製品である生理用の紙製ナプキン自体の価値を抑えて、多くの女性達を喜ばせたい。
その発想こそまさに博愛主義にも基づいた人間愛だと思いましたし、尊敬に値する発明だと言えるかと思いました。

しかし、このビジネスモデルの確立に到達するまでには、ラクシュミの草の根運動を支援してくれた、都会の女子大生パリー(ソーナム・カブール)という女性の存在が大きかったでしょうね。
幾ら男性が生理用ナプキンの普及を説いて発明した安価なナプキンを、自ら一般女性の人たちに販売するのは違和感もありますし、至難の業でもあります。
それならば、彼が作った商品である生理用ナプキンをいったいどうやって使って貰うのが最適なのかが大きな問題だったのでしたが、女性の生理現象は女性同士のクチコミにより、普及を図るという作戦で成功を収めるのでした。
この草の根運動を企図したのも女子大生のパリーとの出会いのお蔭でした。
信念の人ラクシュミは、挑戦と失敗の繰り返しの中、ロビンではなく<パリー(妖精)>と出会うことにより、<現代の偉人・パッドマン>となっていくのでした。

前半部分は、妻への一途な思いに駆られての発明意欲だったのですが、あまりにも可哀想なくらいにラクシュミを異常者・変態扱いする村人たちでしたので、いくら古くからの風習などを理由としているとは言え、その苦労話には本当に涙してしまうレベルでした。

日本のドラマで例えて言えば、その昔の人気作家・花登筐さん原作の「細うで繁盛記」や「あかんたれ」など、最近で言えば橋田壽賀子さん脚本の「渡る世間は鬼ばかり」で徹底的に苛められながら耐えている主人公の姿を見るかの様で、今作の主人公のラクシュミも純粋な気持ちで発明に取り組んでいるが故に、余計に可哀想過ぎました。
また思い遣っているはずの当の妻のガヤトリ自身が、ラクシュミによる自作の生理用ナプキンを嫌がっていたのもあり、本当に気の毒もこの上なかったでした。

そして後半からは、都会の女子大生パリーという女性との関係が中心で肝心の愛妻の姿は全くなかったので、もしやこの2人は?と、予想外の展開にラブロマンス的な要素から胸も熱くなりましたが、でも、ラクシュミは何故自分がこの生理用の紙製ナプキンを安価に開発しようとしたのか、当初の気持ちを忘れていなかったのでした。
最後に、ニューヨークの国連本部に招聘されての演説。
通訳を介さずに単語を並べたような辿々しいスピーチ。
彼の人柄が分かる面白くて説得力のある内容でしたので、熱意があればちゃんと伝わりますし、伝われば良いのでした。
この全く体裁に構わずに通訳を介さずにスピーチをした辺り、世間体や風習や体裁ばかりを重んじる、このインドの地方の村人たちと、それに反して、純粋な気持ちで生理用ナプキンの簡易型の手動製造機の発明に取り組んだラクシュミの考えとうまく呼応するようで面白かったですね。

最後に感心した点をひとつ挙げるとすると、
ラクシュミの草の根運動の良き理解者であり積極的に支援をした、都会の女子大生パリーという女性が、ラストでラクシュミに対してとった行動は、相手を思い遣っての本物の愛情だと思われ感心しました。
愛するということは決して相手を独占するばかりでなく、利害に関係なくおもんぱかってあげられることでしょうから。
でも映画冒頭に「事実を基にしているが、脚色を加えている」との説明字幕がありましたので、ここは事実とは異なるのかも知れませんが、あくまでも映画の劇中のお話しと言う事では、ラクシュミの将来を思うばかりに、彼女の取る行動も素晴らしいとも思いましたね。
作品中、冒頭から、インド製のボリウッド映画なので、お馴染みの歌詞付きのインドの音楽シーンは流れはしますが、ダンスの場面は案外数少なかったです。
途中、「INTERMISSION(途中休憩の意)」の文字が入りますが、日本語字幕では「引き続きご覧下さい。」であり、途中休憩もなかったので、本来の上映時間は137分ではなく、もっと長尺であり、編集でダンスシーン等を大幅に削ったのかも知れないですね。
エンドロールに入った辺りで、主人公ラクシュミ役の御本人であるアルナーチャラム・ムルガナンダム氏の姿が流れますが、やはり笑顔がない硬い表情でしたね(汗)。

▲アルナーチャラム・ムルガナンダム氏御本人と、生理用ナプキンの簡易型の手動製造機。
一度は妻を愛するが故に何もかも失った夫。
あんなにも愛された奥様は、なんて幸せなのでしょうね。

それにしても、都会の女子大生パリーという女性役を演じたソーナム・カブールは、以前、インドのスポーツ映画『ミルカ』(2013年)にも出演され、その美貌を披露されていましたが、今作でも本当にお綺麗でしたね。
私的な評価と致しましては、
予想以上に面白くて、また感動作でしたので、私が今年劇場鑑賞した新作映画66本の中、(昨年公開分は除き)、私のベスト10ランキング入りに滑り込むか否か微妙なくらいに面白い映画でしたので、五つ星評価的には、ほぼ満点評価の四つ星半評価の★★★★☆(90点)くらいの評価でも相応しい作品かと思いました次第です。

▲またパンフレットも、案外コンパクトな大きさながら、インドの社会情勢や宗教・経済事情をはじめ生理用ナプキン事情に関する解説やコラムなども、実に充実した内容にもなっていますので、劇場鑑賞されたらば劇場パンフレット(定価667円+税)も購入した方が宜しいかと思います。
●映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』予告編
【最近のボリウッド映画のヒット作品】
今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。