『ケイコ 目を澄ませて』(2022年) #ユナイテッド・シネマ大津 #岸井ゆきの #三浦友和 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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昨年劇場鑑賞した45作品のうち、未だブログ記事化出来ていない作品が、あと計13作品も残っておりますが、今回は、今年の1月に入り、滋賀県大津市のユナイテッド・シネマ大津にてセカンド上映してくれていた、『ケイコ 目を澄ませて』を、その公開日の1月20日(金)に鑑賞に出向いて来ましたので、その節の感想を、取り急ぎ記録しておこうかと思います。

 

率直な感想としまして、決して派手さはない作品ですが、非常に良く出来た映画で、それを裏付けるかのように、現在、今作が、昨年の2022年度の邦画の幾多の賞レースを席巻し、牽引している事もあり、拙ブログの複数人の読者の方からも、「出来ればこの映画の感想をブログ記事化して欲しい」との旨のリクエストも頂戴しておりましたので、拙い感想文ではありますが、今回は、その『ケイコ 目を澄ませて』の感想について、先ずは、他の作品よりも優先してブログに記録しておこうかと思います。

 

今年(2023年)の2本目の劇場鑑賞作品。

(※今年度のユナイテッド・シネマ大津での1本目の劇場鑑賞作品。)

 

 

 

「岸井ゆきのさんの演技力に大注目の快作(2023.2/20)」

ジャンル:ヒューマン/ スポーツ

製作年/国:2022年/日本

製作:『ケイコ 目を澄ませて』製作委員会(メ~テレ、朝日新聞社、ハピネットファントム・スタジオ、ザフール)

制作会社:ザフール

配給:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト:https://happinet-phantom.com/keiko-movie/

上映時間:99分

上映区分:一般(G)

公開日:2022年12月16日(金)

原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)

撮影:月永雄太

録音:川井崇満

ボクシング指導:松浦慎一郎

手話指導:堀康子 / 南瑠霞

手話監修:越智大輔

編集:大川景子

脚本:三宅唱 / 酒井雅秋

監督:三宅唱

キャスト(配役名):

岸井ゆきの(小河ケイコ) / 三浦友和(ジムの会長) / 三浦誠己(林誠) / 松浦慎一郎(松本進太郎) / 佐藤緋美(小河聖司:ケイコの弟) / 中島ひろ子(小河喜代実:ケイコの母) / 仙道敦子(会長の妻)/ 中原ナナ / 足立智充 / 清水優 / 丈太郎 / 安光隆太郎 / 渡辺真起子 / 中村優子 その他

 

 

 

【解説】

「きみの鳥はうたえる」の三宅唱監督が「愛がなんだ」の岸井ゆきのを主演に迎え、耳が聞こえないボクサーの実話をもとに描いた人間ドラマ。元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に、様々な感情の間で揺れ動きながらもひたむきに生きる主人公と、彼女に寄り添う人々の姿を丁寧に描き出す。

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る。

主人公ケイコを見守るジムの会長を三浦友和が演じる。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

  実在の女性ボクサーの自伝に着想を得た、三宅唱監督のオリジナル作品。

 

生まれつき耳が聞こえない障碍を持ちながらもプロボクサーのテストに合格し、2013年までに通算3勝1敗の戦績を残された小笠原恵子さんの自伝『負けないで!』を原案にし、着想を得た、三宅唱監督が作ったフィクションのオリジナル作品。

 

 

  あらすじ。

 

大まかなお話しの流れとしましては、

嘘がつけず愛想笑いが苦手な小河ケイコ(岸井ゆきのさん)は、感音性難聴という生まれつきの聴覚障碍のために、両耳とも聞こえない。

 

 

再開発が進みつつある東京都内の下町の一角にある小さいが歴史のあるボクシングジムで、ジムの会長(三浦友和さん)が見守る中、ジムのマネージャーの林(三浦誠己さん)やトレーナーの松本(松浦慎一郎さん)などからホワイトボードを使いながらの”会話”をして指導を仰ぎながら、日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続けるのでした。

 

 

平素、彼女は、シティホテルの客室清掃員として働きながら、弟で健常者の聖司(佐藤緋美さん)と同居するマンションから毎朝早く出てロードワークに励む日々でしたが、昨今のコロナ禍で皆が始終マスクをしているため、仕事のみならず、様々な局面で、相手の口元の動きが読み取れない不自由さを感じていたのでした。

 

 

実家の母(中島ひろ子さん)からは「いつまでボクシングを続けるつもりなの?」と心配され、言葉に出来ないもどかしい想いが心の中に溜まっていくのでした。

そんな中、「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての休会届の手紙を、なかなか出せずにいた或る日、ジム自体が閉鎖される事を知り、ケイコの心の中が”雑音”の如くザワザワと動き出すのでした。

 

 

そしてジムの会長もまた眼の具合が悪く、視力自体を失いつつあったのでしたが・・・。

 

 

といったイントロダクションの映画でした。

 

  岸井ゆきのさんの巧みな演技力に注目!

 

所謂、実録物映画ではないとは言え、小笠原恵子さんという実在の聴覚障碍を持つプロボクサーをモデルにした主人公・小河ケイコを演じる岸井ゆきのさんを取り巻く、日常を切り取ったようなあたかもドキュメンタリー映画を観ているかの様な錯覚を覚えた作品でした。

 

先ずは、まさにゼロから身体を作り上げて、ボクシングの基礎を学び、プロのレベルに見えるボクシング技術の習得を行ない、そして台詞に頼らず手話と目元などの表情だけで感情を相手(観客)に伝える演技を会得するといった、どちらか一方だけでも非常に難易度が高く大変な役作りの挑戦を、僅か3ヶ月の期間に、ジムに通って本格的なトレーニングに日々鍛錬を積みながら、東京都聴覚障害者連盟に通いながら手話を学ぶなど、この映画1本の主演のために同時にこの二つの難題に取り組んだ点をからも、彼女を高く評価したいですね。

 

この努力が実った今作で、岸井ゆきのさんも新境地を開拓することが出来て、本作は、まさに彼女の代表作にもなるかと思いました次第です。

 

  エンタメ映画の対極に位置するような、日常風景を切り取ったドキュメンタリー風な作品。

 

また、所謂、エンタメ映画のようなドラマ性を帯びた面白味がある映画というよりも、むしろ、その対極にあるような、先ず、日常風景を切り取ったような演出にするべく、かなり映画の撮影・録音などの技巧的に優れた映画だったかと思いました。

 

 

工事中の建物や鉄橋を渡る電車の音、道路を行き交う自動車の音などの何気ない生活音や環境音、ジムでのトレーニングでの音以外は、同居する弟・聖司役の佐藤緋美さんのギター演奏の音を除き、あえて効果音や劇伴を極力排して、観客に感じさせなくしている点が、上手かったですね。



そして、聴覚障碍者の主人公ケイコ役演じる岸井ゆきのさんの演技が巧かった点を具体的に挙げますと、例えば、遠方から俯瞰でロングショットで撮っているシーンなどで、背後から自転車が近づいて来ているのも耳が聞こえずに全く気付かない風な演技をしているシーンなど、さり気ない日常を映したシーンがすごく印象的でした。

 


またケイコが付けてる日記帳を読む、会長の奥さん(仙道敦子さん)のナレーションの台詞に被せるが如く、会長(三浦友和さん)とケイコのトレーニング風景が上手く動作がマッチしていた点なども印象に残っています。

 



またジムの会長役の三浦友和さんのいぶし銀な演技も素晴らしく、ボクシングを通して、まさにケイコと心が通い合っているのが伝わって来るかの様でした。

 

 

そして、本作で、最も特徴的だったのは、エンディングが作り物の映画的でなくて、あくまでも、日常を切り取ったような生活音、環境音と街の風景のみで終わる仕掛けがなされている辺りも新鮮味があって面白い試みだったように感じました。

 



ドキュメンタリー映画を観ているかのような錯覚を起こすような映画で、決して派手さはない映画ですが、私は好きな作品でした。

 

  劇的な展開はないが『ミリオンダラー・ベイビー』の師弟関係とも似て非なる映画。

 

あのクリント・イーストウッド翁による名作『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)のような重くヘビーでドラマチックな見せ場のある作風ではないですが、その父娘のような師弟関係にある二人の関係性は、本作とも似て非なる映画かも知れないですね。

 



私は、この『ケイコ目を澄ませて』の三宅唱監督の作品は今作が初見でしたので、監督さんはじめ撮影・録音など、実に才能溢れるスタッフさん達だなと感心した次第です。

 

  16㎜フィルムを使うこだわりの逸作。

 

最後に、私は鈍感だからか、あまり気が付かなかったのですが、今作は、デジタルではなく、あえて16㎜フィルムを使って撮られた映画だったそうで、そう言われてみると、画面の質感や人物などの映り具合が幾分か優しくどこか温かみ感じる映画だった様な気もしました。
 

 

 

 

 

 

 

  私的評価:★★★★☆(ほぼ満点の90点)。

 

エンタメ映画慣れしてしまっていると、ついつい劇的なドラマ性の帯びた作品から得る鑑賞後のカタルシスを作品に求めてしまいがちですが、この映画の場合には、所謂、実録物映画ではないですが、ドキュメンタリー映画かと勘違いしてしまうほどにドラマ性を極力排した映画で、映画を盛り上げるような効果音も劇伴も一切無い映画ではありますが、ほとんど話すこともない聴覚障碍を持つケイコの一挙手一投足を通して、その不器用な生き様を、障碍を持つからとか健常者だとか関係なく、1人の人間としてその閉ざされた心の変化の在り方を上手く活写している点がすごく良かったです。

面白味というか派手さはないのですが、心にジワッと沁みてくる映画のようで私は好きですし、多くの方々にも鑑賞をお勧めしたいですね。

 

と言うことで、私的な評価と致しましては、五つ星評価的にも、ほぼ満点の四つ星半の★★★★☆(90点)も相応しい映画かと思いました次第です。

 

現在も、昨年(2022年)度の邦画の幾多の賞レースを席巻し、牽引しているのも良く理解出来るほどの出来映えの作品でした。

 

『さかなのこ』にて、日本アカデミー賞の優秀主演女優賞にノミネートされている、のん(能年玲奈)さんを応援している身ではありますが、この映画を観た後では、最優秀主演女優賞には、岸井ゆきのさんの受賞こそが相応しいと思わざるを得ないですね!

 

○12月16日(金)公開|映画『ケイコ 目を澄ませて』本予告

 

 

 

◎安藤サクラさんの劇的ビフォーアフターな役作りに感嘆したボクシング映画の『百円の恋』(2014年)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。