昨年劇場鑑賞した45作品のうち未だブログ記事化出来ていない作品が、あと計14作品残っておりますが、次は、先ず、3年前のミニシアターエイド基金などで微力ながらも支援させて頂いていたのですが、その節のリターン品である、ミニシアターの京都みなみ会館で利用出来る未来チケットの有効期限が昨年の2022年末日となっていて、未だその未来チケットで映画が観に行ける状態だったのに気付いたのでした。
そこで、この『AKAI』というドキュメンタリー作品。
現在俳優の赤井英和さんが<浪速のロッキー>と呼ばれていたプロボクサー時代にスポットを当てたドキュメンタリー映画なのですが、2022年9月9日全国公開の作品でしたが、京都府下の上映館はMOVIX京都のみの単館上映だったので、仕方なく観るのを半ば諦めていました。
ですが、ラッキーなことに、11月4日(金)から、京都みなみ会館でもセカンド上映してくれる事を知り、11月17日(木)に、新型コロナ禍の以前に老朽化から一時休館後、リニューアルして営業再開されて以降、初めて、京都みなみ会館まで、その未来チケットを有効活用するべく、独りで鑑賞に出向いて来ましたが、このドキュメンタリー映画の感想や、新しくなった京都みなみ会館についてなど、その他諸々について、今回は採り上げたいと思います。
鑑賞当時、昨年度の40本目の劇場鑑賞作品。
(※昨年度の京都みなみ会館での1本目の劇場鑑賞作品。)
「かつて日本中を熱くさせた天才ボクサーがいた。(22.11/17)」
ジャンル:ドキュメンタリー
製作年/国:2022年/日本
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/akai_movie/
上映時間:88分
上映区分:一般(G)
映像協力:朝日放送テレビ / 阪本順治
音楽:上倉紀行
編集・監督:赤井英五郎
出演:赤井英和 / エディ・タウンゼント / 大和田正春 その他
【解説】
俳優、タレントとして活躍する赤井英和のプロボクサー時代にスポットを当てたドキュメント。
1980年にプロボクサーデビューし、21戦19勝16KO2敗の戦績を上げた赤井英和。「浪速のロッキー」の愛称で多くの人から愛された赤井は、85年の大和田正春との対戦でKO負けを喫し引退。自身の自伝をベースにした阪本順治監督の「どついたるねん」で俳優デビューを飾った。本作は再起不能のダウンから復活し、自分自身を演じた「どついたるねん」の映像、世界王者に挑戦したブルース・カリー戦、そして大和田正春戦の試合映像にインタビューを交え、多くの人を熱狂させた赤井英和の実像に迫っていく。
監督は赤井英和の長男で、自身も現役のプロボクサーとして活躍する赤井英五郎。
(以上、映画.comより、引用抜粋。)
リニューアル後の京都みなみ会館初体験。
先ず、久し振りに出向いたミニシアター・京都みなみ会館についてですが、この映画館が一時休館後、前にあった場所から九条通を挟んで北側に移転し、リニューアルオープンされて以降、初めてこの劇場で映画を鑑賞しましたが、エレベータも完備していて、新たに結構広い障碍者用トイレも完備してあったりとバリアフリーにも根ざしたユニバーサルデザインを施された劇場に生まれ変わっていて、すごく機能的でオシャレなミニシアターになっていて驚かされました。
以前は、無料駐車場完備の映画館でしたが、移転に伴い駐車場が無くなってしまって以降は、観に行くのがついつい億劫になってしまいがちでしたが、今回は、近くの有料パーキングにクルマを止めて観に行きましたが、それほどバカ高い駐車場料金でも無かったので、考えを改めて、今後も目ぼしい作品の上映があれば、ちょくちょく利用したいと思いました。
惜しまれる吉田由利香館長の退社。
昨年、ミニシアター・エイド基金の際の未来チケットを使って、ようやく新しくなった京都みなみ会館に出向いた訳ですが、リニューアルオープンに際してや、新型コロナ禍の中、京阪神ミニシアター13館・応援Tシャツの販売展開や、ミニシアター・エイド基金の活動の際にも、すごくご尽力なされていた看板娘的な吉田由利香館長が退社をなされていた事実も最近になって知りまして、少々寂しい気分になっていました次第です。
『AKAI』:浪速のロッキーのドキュメント。
さて、肝心の映画『AKAI』についてですが、朝日放送テレビに残るプロボクサー時代の赤井英和さんに関するアーカイブ映像のあまりにもの豊富さに、先ずは驚かされました。
あの当時は、『がんばれ元気』や『あしたのジョー2』などのボクシングアニメの人気にも象徴されるように、プロボクシング人気が、まだ高かったからか深夜帯にも、ボクシング番組を放送していたようですね。
それに加えて、浪速高校・近畿大学当時のアマチュア時代の貴重な映像や赤井英和さんご本人の語録も交えて、近畿大学にボクシング推薦で進学し、オリンピック代表候補(補欠)として注目を浴びるも、ソ連によるアフガニスタン侵攻に端を発した、西側諸国及びイスラム諸国を中心とした、1980年のモスクワ五輪ボイコットのために、五輪出場の夢が絶たれてプロ転向を果たすまでの経緯については、私も全く知らなかったので、今回このドキュメンタリー映画を観て、赤井英和さんも「あのモスクワ五輪ボイコットの犠牲者だったのか」と見識を新たにしました。
「オリンピックに出られないのなら、プロに転向して世界を獲ります!」と誓って、その年1980年に学生プロボクサーに転向し、鮮烈なデビューを飾り、通算戦績は21戦19勝16KO2敗(※デビュー12連続KO<試合時間計72分>は日本タイ記録)を残した、不世出の天才ボクサーだった赤井英和さんの謂わば<黄金時代>を、赤井さんの長男で、アメリカの大学在学中に本格的に映像について学び、自身もプロボクサーでもある赤井英五郎さんが、この新型コロナ禍で本職のボクシングも出来ない状況下にある時間を活用し、朝日放送テレビや、阪本順治監督などの全面協力の下で、苦労をして初監督したドキュメンタリー映画。
大阪市西成区生まれからか<浪速のロッキー>の愛称で呼ばれ、多くの人々から心底愛された様子は、今池商店街の人々からの声援や、朝日放送テレビの看板番組の「おはよう朝日です」のスポーツコーナーでの花井悠さんなどとの軽妙なやりとりからも伝わって来ました。
本作中、ブルース・カリー戦が白眉。
特に、いま振り返って観ても、世界王者に挑戦した1983年の「ブルース・カリー戦」での、荒削りながらも、どつきどつかれのまさに息を呑む壮絶な試合映像が凄かったですね!TKO負けではありましたが、本当に凄い試合でした。
この敗戦にショックした赤井英和さんが引退をほのめかして失踪した一件については、あえて深掘りされていなかったのですが、もう今ならば明らかにしてくれても良かったようにも思いましたが、まだNGなのでしょうかね。
エディさんの言葉が心に残りました。
名伯楽エディ・タウンゼントさんをトレーナーに仰ぎながら、再び世界戦への前哨戦として臨んだ、1985年の「大和田正春戦」ではKO負けを喫し、脳に重大な損傷を受け急性硬膜下血腫、脳挫傷と診断され、生死の境を彷徨いながら、ドリルで開頭手術をするなどの大手術の結果、奇跡的に一命を取り留めはしましたが、ボクサーとしての復活は叶わず、志半ばで現役引退。
しかし、救急搬送された大阪市富永病院の担当医の先生の腕前が良かったのか、赤井英和さん自身の生命力が凄かったのか、一命を取り留めることが出来たのは良かったです。
退院後の赤井さんに対して、エディ・タウンゼントさんの「アカイ!こんなになっても、これからもそばに残ってくれる人だけが本当のトモダチよ。分かったネ!」というような言葉が、やけに的を射ていて心に残りましたね。
その後、映画『またまたあぶない刑事』(1988年)に用心棒役としてゲスト出演し俳優デビューをした翌年、赤井さんが自身の半生を振り返った自伝を書いた、その本をベースに、阪本順治監督の初監督作品である『どついたるねん』(1989年)で、れっきとした主演俳優としてデビューを飾ったのですが、本作は、そんな引退の引き金となった大和田正春戦後の開頭手術の模様やリハビリの様子、それまでの華麗な戦績のビデオ映像などを映し、<浪速のロッキー>として活躍した<黄金時代>とも謂うべきプロボクサー当時の赤井英和さんの実像に迫った作品となっています。
人生の第一章・ボクサー時代に特化した内容のドキュメンタリー。
今の奥様・佳子さん(再婚)や佳子さんの子供である長男の英五郎さん達家族との絡みのシーンが殆ど無く、あくまでも<浪速のロッキー>時代の赤井英和さんの栄光と挫折、そして俳優として再スタートした点についてのみ特化したドキュメンタリー映画になっているので、やはり、長男で編集・監督をなされた英五郎さんが、あくまでもボクサー目線で観た映像作品にしたかったのかも知れないですね。
※但しながら、パンフレットの中には、現在のご家族との事も沢山収録されています。
学年は違えど同世代を大阪で過ごして数々の喧嘩にまつわる伝説を残してられたらしい、プロレスラーの前田日明さんとの絡みや逸話も一切語られることもなかったのも私的には残念でした(苦笑)
若旦那さんこと坂東玉三郎さんのご紹介で、篠山紀信さんの手により撮ることになった、若かりし日の赤井英和さんのお写真を今回ポスターに使用していますが実に格好いいですよね。
「生きてるだけで丸儲け」を体現した男。
それにしても、人生の第一章では栄光と挫折に遭遇されたようですが、一命を取り留めて復活した後の第二章では俳優・バラエティタレントとしても大活躍されている事を考えれば、まさに「生きてるだけで丸儲け」な人生を体現されている人そのものでしょうね。
私的な評価:★★★★☆(90点)
長男でもある監督の赤井英五郎さんからすれば、ボクサー目線で観た、父・赤井英和さんの<浪速のロッキー>時代を中心に、格好良かった面のみにスポットを当てた編集にしたかったのかも知れないですが、ブルース・カリー戦後の失踪の一件の内幕や、今でこそ話せる、家族だからこそ話せる内容なども、もっと斬り込んで深掘りしても良かったかなとも思いましたので、そこの辺りも、もっと赤井英和さんご本人に逸話について突っ込んで欲しかったですね。
また、今作の映画の中で、<浪速のロッキー>だけに、ビル・コンティ作曲の映画『ロッキー』での使用曲を使っているのは悪くはないですが、やや安直すぎた感じもしましたね。
それらの点が、少々惜しいので、五つ星評価的には、ほぼ満点ながら、★★★★☆(90点)にしましたが、思わず固唾を呑むような、世界王者に挑んだブルース・カリー戦のVTR映像を観るだけでも充分価値が有るボクシング映画かとも思いましたので、ボクシングファンには是非ともお勧めのドキュメンタリーかと思う次第です。
○映画『AKAI』赤井英和の伝説連続KO勝利の本編シーンを解禁!
今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。