『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年) #TOHOシネマズ二条 #大坂なおみ選手 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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ちょうど、つい先日の9月9日(日)に、大坂なおみ選手が日本人初の世界四大大会のひとつである全米オープンテニス大会に初優勝したという歴史的偉業を成し遂げた事もあり、もうかれこれ7月26日(木)のTOHOシネマズ二条での上映終了日の際に劇場鑑賞した映画ではあるのですが、今更ながらですが、敢えてブログ記事化して備忘録的に残しておきたいと思います。

 

 

 

「男女平等の時代を切り開く世紀の一戦(18.7/26・2D字幕)」

ジャンル:人間ドラマ

原題:BATTLE OF THE SEXES

製作年/国:2017年/アメリカ

配給:20世紀フォックス映画

公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/battleofthesexes/

上映時間:122分

公開日:2018年7月6日(金)

監督:バレリー・ファレス、ジョナサン・デイトン

キャスト:

エマ・ストーン、スティーブ・カレル、アンドレア・ライズブロー、サラ・シルヴァーマン、ビル・プルマン、アラン・カミング、エリザベス・シュー、オースティン・ストウェル、ナタリー・モラレス

 

 

【解説】

「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンが実在のテニスの女王を演じ、1970年代に全世界がその行方を見守った世紀のテニスマッチ「Battle of the Sexes(性差を超えた戦い)」を映画化。73年、女子テニスの世界チャンピオンであるビリー・ジーン・キングは、女子の優勝賞金が男子の8分の1であるなど男女格差の激しいテニス界の現状に異議を唱え、仲間とともにテニス協会を脱退して「女子テニス協会」を立ち上げる。

そんな彼女に、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスが男性優位主義の代表として挑戦状を叩きつける。

ギャンブル癖のせいで妻から別れを告げられたボビーは、この試合に人生の一発逆転をかけていた。

一度は挑戦を拒否したビリー・ジーンだったが、ある理由から試合に臨むことを決意する。

ビリー・ジーン役をストーン、ボビー役を「フォックスキャッチャー」のスティーブ・カレルが演じた。

監督は「リトル・ミス・サンシャイン」のジョナサン・デイトン&バレリー・ファリス。「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイルが製作、サイモン・ビューフォイが脚本。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

 

大坂なおみ選手(20歳)が日本人初の4大大会(グランドスラム)のひとつである全米オープンテニス大会の女子シングルス決勝で元世界ランキング1位のセリーナ・ウィリアムズ選手をストレートで破り、男女を通じて初の制覇の快挙を成し遂げたのですが、その約4億2千万円以上の優勝賞金は、現在では、男女ほぼ同額な訳ですが、その約半世紀の昔には、男女の優勝賞金に大幅な格差があり、チケットの売り上げはほぼ同じであるにも拘わらず、この作品が描いている1973年当時は、女子テニス選手は男子テニス選手の賞金の八分の一しか得られなかったのでした。

 

この映画は、そんな男性優位主義が横行していた時代のお話しです。

 

 

1970年代と言えば、ウーマンリブ運動も盛んになりつつあった頃。

 

そんな理不尽な男性優位主義に不満を募らせていたビリー・ジーン・キング夫人(エマ・ストーン)を筆頭に、女子テニス選手の仲間達が試合をボイコット。

全米テニス協会から離れ、女子選手の地位向上を掲げた女子テニス協会を立ち上げて独自興行を行うこととなるのでした。

 

 

一方、そんなビリー・ジーン・キング夫人に対して、ギャンブル依存症でありながらも「男性至上主義」を訴える55歳の元男子テニス世界チャンピオンの往年のシニアプレイヤーのボビー・リッグス(スティーブ・カレル)が、不仲となった妻との関係修復を図る契機にするべく、その当時、年間獲得賞金額が10万ドルを突破した最初の女子テニス選手であり、文字通り女子テニス界の女王ビリー・ジーン・キング夫人に試合を挑むのでした。

しかし当初その試合を断られたリッグスは、ある大きな大会の決勝戦でビリー・ジーン・キング夫人を破ったマーガレット・コート夫人に対して男女対決試合を持ち込むのでしたが・・・。

 

 

といった流れで展開するお話しの映画でした。

 

 

率直な感想と致しましては、

想像していた以上に素晴らしく、感動的な作品でした。

もっと軽めのコメディタッチ風味の映画かと思っていましたが、そうではなくて、実在するテニス選手のほぼ忠実に実話を基にした、男女同権を訴える勇気ある女性の物語を再現した映画であり、更にはLGBTQについてもサラリと描写がある作品で、非常に面白かったですね。

 

私の場合には、スポーツの中でも、ことテニスについてはプレイするのが特に下手くそなので、とりわけ詳しくもなく、主にTV中継などで観るばかりでしたが、ビリー・ジーン・キング夫人についてもその選手名は記憶しているものの、この映画で描かれるような男女対決試合の世紀の一戦が『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(性差を超えた戦い)として有名らしいのですが、この映画を観るまでは、このエキシビションマッチの存在さえ全く知りませんでした。

 

ただ当時の女子テニス界の選手については、ビリー・ジーン・キング夫人の少し後に活躍した、1975年にプロデビューした、マルチナ・ナブラチロワ選手(旧・チェコ共和国)などを代表格に、所謂、LGBTQのレズビアンの性的嗜好がある選手も意外に多かったような印象が残っていましたので、その辺りをどう描くのかは気にはなっていました。

 

 

この作品でも、美容師のマリリン・バーネット(アンドレア・ライズブロー)という女性と深い仲になるビリー・ジーン・キング夫人(エマ・ストーン)の同性愛の絡みについても、ちゃんと時間を割いて描写していて、逆に好感が持てましたし、私の場合には、偏見ではないのですが、所謂、BL系の映画の絡みとは違って女性同士のレズビアンの絡みには、あまり抵抗感もなく観られましたね。

 

 

 

ビリー・ジーン・キング夫人はテニスの賞金などで夫を養い、女性の愛人をつくりながら各地を転戦するといった、ある種、男性のプロスポーツ選手などにはありがちなことをするビリー・ジーン・キング夫人に、同じくLGBTQのゲイでありマイノリティー的な立場にある専属デザイナーのカスバート・“テッド”・ティンリング(アラン・カミング)が「世間にはそういうことを好まないひともいる。」と耳打ちをする。

 

このアラン・カミングが彼の資質を活かした役柄で大いに納得でしたね。

 

 

悩んだ末の挙げ句に、結局は1人きりで決勝戦の試合相手であるマーガレット・コート夫人に立ち向かい、試合終了後、更衣室で1人で涙を流すビリー・ジーン・キング夫人をエマ・ストーンが見事に好演。

 

すっぴん顔の眼鏡女子でしたが、個人的には『ラ・ラ・ランド』よりも今作の方が、より一層に演技派女優っぽくて素晴らしかったですね!

 

この辺りのエピソードからも、つくづくスポーツの中でもテニスはメンタリティなスポーツだと実感させられましたね。

 

 

 

その後、マーガレット・コート夫人とボビー・リッグスとの男女対決試合が実施されますが、ボビーの完勝であったため、女性の権利の復権のためにと、今度は、ビリー・ジーン・キング夫人が立ち上がり、当時55歳の往年の男子テニス世界チャンピオンのボビー・リッグスとの「男女対決試合」のエキシビションマッチを行うこととなり、クライマックスへ・・・。

 

▲写真上のビリー・ジーン・キング夫人役のエマ・ストーンの容姿は、それほどでもないですが、スティーブ・カレルが写真下のボビー・リッグスご本人と激似なのが凄いですよね!

 

今から約半世紀前である、45年前の1973年には、「女が男に勝てるはずがない」と言われ、「女は台所と寝室に居ればいい」と女性を蔑視した発言をされるなど、男尊女卑も甚だしい時代でした。

 

もしも今の時代にそんな発言をしたら「なんて時代遅れな!」と考える人々が大半でしょうが、それはこの映画の主人公のビリー・ジーン・キング夫人のように女性達の権利を求めて闘ってくれた人達がいるからに相違ないですし、お調子者のボビー・リッグスという元世界チャンピオンの賭けぐせのお蔭で<男性至上主義>を否定する女性史を揺るがす大きな転換期となった出来事だったとも言えるでしょうね。

 

 

そして、この作品の肝となるのが、ビリー・ジーン・キング夫人とボビー・リッグスとが対戦する試合のシーン。

絵面的には、試合展開自体には派手な演出を仕掛けることもなく、その点では少々面白味も欠けてしまうのですが、男女の垣根を越えた高度なテニスの試合の面白さを淡々と見せることにより、試合が進行するに連れてお互いが次第に性別を気にしないでプレイヤー同士が闘志を燃やしてラリーに集中しているのが解る辺りが良かったですね。

 

 

またボビー・リッグスの徹底したおふざけな描き方は、実際にそういう選手だったかということはさておき、本来ダニー・ボイルが直接に監督の指揮を執るはずだった本作ですが、監督を降板する必要性から、急遽、監督を務めることになった『リトル・ミス・サンシャイン』を手掛けたバレリー・ファレス&ジョナサン・デイトンの共同監督作品としても、今作には、並々ならぬ執念めいたものも感じましたし、おふざけ描写が独自の妙な笑い所に昇華されていて面白く観ることが出来ました。

また、各々のキャラクターの陽の部分と、陰の部分との描き方の対比や1970年代のファッションや雰囲気をも忠実に描くなど、凄く巧みでお見事でしたね。

また、とりわけ女性陣を未来志向、男性陣を後退志向に見せるべく演出が施されていた点も頷けましたね。

 

 

今作の後味の良さは、本来ならば敵役の口八丁手八丁のボビー・リッグス演じるスティーブ・カレルが役柄にドンピシャにハマっていたこともさることながら、往年の世界チャンピオンであったボビー・リッグスのキャラ自体に魅力を植え付けたおふざけ描写による脚本の妙かも知れないですね。

 

 

また、今回の映画については、女性にはそもそも筋力がないだとか生物学的見地に基づいたものだとか、女子選手の試合自体に迫力がない・面白くないだとかと、その都度に難癖をつけて賞金格差を是正しない当時の男性優位の社会は、あたかもハリウッド映画界でいわれる現代までに至る男女の出演料の格差問題の事情とも通じるテーマだからこそ、今になってこの様な主題が採り上げられ映画化されたのかもと思うのは、あながち間違いでもないのかも知れないですね。

 

 

私的な評価としましては、

つい先日の9月11日(火)に、1980年代。ビヨン・ボルグのウィンブルドンの全英オープンテニス大会5連覇を巡るジョン・マッケンローとの激闘を再現したテニス映画『ボルグ/マッケンロー 氷の男炎の男』を劇場鑑賞し、その激闘の試合シーンの再現度合いが凄くて大感動したのもあり、それに比べますと、<バトル・オブ・ザ・セクシーズ>といった男女対決試合といった謂わばエキシビションマッチであり、男子のシングルスの決勝戦を再現した作品とはそもそもが迫力の差が違い過ぎましたので、試合展開の上での面白さ自体では敵わないものの、男女の性別を賭けた闘いと言っても過言ではないほどに、お互いの立場と意地とプライドを賭けた試合であって、そこまでに至る過程や各々の心情描写を経て、実際の試合の模様をクライマックスに、比較的に事実に忠実に再現した正統派の人間ドラマを描いた映画という点では、かなり面白く観る事が出来ましたので、五つ星評価的には、『ボルグ/マッケンロー 氷の男炎の男』を満点評価とした場合には、この作品は、満点には至らずとも、ほぼ満点評価にも近い★★★★☆(90点)の四つ星半の評価が相応しいかと思いました次第です。

 

●『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』フューチャレット映像:Filming On Film

 

 

●『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』予告編

 

 

 

 

 

 

 

この『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のセカンド上映は、9月8日(土)から現在も、京都・出町座でも上映しているみたいですので、是非劇場まで足をお運びの上ご鑑賞下さればと思います。

 

 

 

 

 

 

 

●【公式】『ボルグ/マッケンロー 氷の男炎の男』8.31公開/本予告

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。