『帰ってきたヒトラー』(2015年) #帰ってきたヒトラー | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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「ネット社会よりもTV全盛の人気者に恐怖?(16.6/23・劇場)」

ジャンル:コメディ

原題:ER IST WIEDER DA

製作年/国:2015年/ドイツ

配給:ギャガ

公式サイト:http://gaga.ne.jp/hitlerisback/

上映時間:116分

公開日:2016年6月17日(金)

監督:デヴィッド・ヴェンド

出演:オリヴァー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ、クリストフ・マリア・ヘルプスト、カチャ・リーマンほか

 

 

 

 

 

 

かつてのドイツのナチス党・ヒトラー総統を描く映画は山ほどありましたし、昨今、ナチスやヒトラーを描く映画が多数製作配給されて来ています。

ですが、戦時中にチャールズ・チャップリンが『独裁者』で、ヒトラーを揶揄したコメディ映画を製作してはいましたが、これまで過去の「あやまち」とちゃんと対峙しているドイツ連邦においては、ナチス式敬礼自体でさえも法律で違法行為として罰し禁止しているほどのお国柄にあって、当然の事ながら<ヒトラーでコメディ>はタブー視してきました。


そんな中、ドイツでベストセラーになったというティムール・ヴェルメシュ原作小説を映画化。

 


現代にタイムスリップしてきたヒトラー。
リストラされたフリーランスのテレビマンが発見して、こともあろうか<そっくりさん>として売り込みTV番組で人気者となってゆく。
タイムスリップものにつきものの世代間ギャップネタも盛り込まれて、ヒトラーやナチスの栄枯盛衰の歴史に熟知していれば、なおさら笑えるかとは思います。

 

 

撮影の手法もユニークで、いわゆるドッキリテレビ風に、要所要所に、本作の主人公たるヒトラーに扮装させた無名の舞台俳優オリヴァー・マスッチを街の中に立たせて、市井の人々のリアルな反応を捉えた映像を挿入し、ドキュメンタリー映画っぽく仕立て上げています。

 

 

また、それでは飽き足らずに、実在の極右政党の党首などの政治家や有名人などに突撃対談を敢行するなど、ヒトラーがタイムスリップしてきたならば、さぞや、この様に論戦するだろうとばかりに、現在のドイツ連邦の主要な政治家や有名人に論戦を挑むシーンなどは、おそらく本国のドイツ国民やドイツ連邦の現在の政局に明るい人達ならば大爆笑するほど面白いのでしょう。

 

ですが、この手の社会風刺の内輪ネタの時間の尺が、やや長過ぎて、ドイツ国内の事情に疎い私の場合には、正直、かなり飽きて来て、眠たくなってきたのも事実。

 


ただ、その方法論はともかく、リストラされたテレビマンやヒトラー共に人生でつまずいたもの同士が<やり直す>を図るという点では共感は出来ますね。
ヒトラーは歴史上最悪の独裁者というレッテルを張られていますが、本当にそうなのかという問いかけは重く響く。
ヒトラーがいなくなって70年。現代のドイツ連邦あるいはEU諸国は、果たして理想的社会に近づけたのか!?
当時のナチス党ならびにヒトラーがその地位に就いたのは、いったい<誰に責任がある>のかをよくよく思い返してみなければならないでしょうね。

 

また、欧州のドイツ連邦から遠く離れた、この日本国においても、タイムリーにも、来る7月10日投票日とした参議院議員選挙がありますが、この今回の選挙の隠れた争点として<日本国憲法改正の是非を問う>選挙とも言われています。

その意味合いでも、自らの投票行動に責任を持って、先ずは期日前投票で良いので、是非とも選挙に行って欲しいですね。

 

先日、国民投票で、<EUからの離脱>が決定した英国においても、未来を担う若者層の多くが、<EUの残留>を支持して投票をしたにも拘わらず、50才代以上の高齢者の多くが<EU離脱>を支持し投票活動をした結果、英国国民の過半数が<EU離脱>を支持という投票結果になってしまっているのです。


コメディというオブラートに包みながらも極右政党の台頭や移民問題などによるEUの分裂の危機に揺れる欧州社会を巧みに取り入れている社会性は今日性を感じましたし、ヒトラーの存在を教訓にしている点で普遍的なテーマとも言えるかも知れないですね。

 


ただ、コメディにしてはブラックな内容過ぎて、笑うに笑えない。

 

また、前述した通り、ネオナチや極右政党が台頭しつつある現代にあっても、過去の「あやまち」とちゃんと対峙しているドイツ連邦では、法律で、ナチス式敬礼自体をも違法行為として罰しているくらいのお国柄にあって、「もしもヒトラーがタイムスリップしてきたら」という主題で映画を製作すること自体がすごい企画だとは思いましたし、民衆を扇動するのに長けていた、あのヒトラーが、このインターネット社会に舞い降りて来たらと考えると恐怖さえ感じました。

しかし、このインターネットが普及する社会にあって、本来的な本質的な恐怖感という点ではどうでしょう。

この映画では、せっかくのYouTube動画についても、TV放映と同格扱いにしか活用させず、ドイツ国内でのTV放映を見た観客の反応の視聴率を図るうえでの指数・指標的にしか捉え切れていなかったのが、全くもって残念でした。
せっかくのYouTube動画という媒体では、インターネットという手段で、地球上のどこにいてもネット環境が使える場所であれば、世界各国の人々の人心掌握も可能というような危険性をはらんでいるという、もっと地球規模の大きなレベルで、その恐怖感を煽ってくれれば良かったのにと、もっと欲張った見方をした次第でした。

 

そういった現代の地球規模のインターネット社会の本質的な活用までを描き切れていなかった点で、なんだかイマイチ腑に落ちない様にも感じた次第でしたね。

 

 

私的な評価と致しましては、

この参議院議員選挙が近づき、英国のEU離脱・残留を問う国民投票が実施される前に観賞に行ったこともありましたが、既に観賞なされた人達のレビューでは、「コメディというよりも恐怖感を感じました。」などとの感想を一部散見致しましたが、要は、怖いのはヒトラーではなく、市井の人々の声ですから、その点では、この時代が、70年以上も前と同じく、再びヒトラーのような存在を要請しているかの様で怖い気も致しましたが、だからこそ、この映画を教訓に自らの投票行動を見つめ直そうとも思い直す機会にもなって良かったです。

評価とは、話が逸れましたが、その意味では凄く参考になった映画でしたね。

 

また、欲張った見方をすれば、地球規模でのインターネットを活用した扇動の恐怖感という点までは描ききっていなかったという意味では非常に惜しかったですし、残念でしたね。

表現手法は違いましたが、ネット社会を描いた細田守監督のアニメ映画『サマーウォーズ』のネット社会のOZ(オズ)の世界観の方が、その点は怖かったですね。

 

これらを、総合的に勘案致しまして、

四ツ星相当の★★★★(80点)の高評価も相応しい映画かとは思いました。

 

●映画『帰ってきたヒトラー』予告編

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。