『神様メール』(2015年) #神様メール | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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「もしも余命宣告メールが届いたら。(16.6/5・劇場)」

ジャンル:コメディ

原題:LE TOUT NOUVEAU TESTAMENT

製作年/国:2015年/仏=ベルギー=ルクセンブルク

配給:アトミック・エース

公式サイト:http://kamisama.asmik-ace.co.jp/

上映時間:115分

公開日:2016年5月27日(金)

監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル

出演:ピリ・グロワーヌ、ブノワ・ポールヴールド、カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワ・ダミアン、ヨランド・モロー、ローラ・ヴェルリンデン、セルジュ・ラリヴィエール、ディディエ・ドゥ・ネック、ロマン・ジェラン、マルコ・ロレンツィーノほか

 

PG12

 

 

 

 

突然、自分の余命が解ったら人間はどうするのだろう。

私の様に漠然と時間を過ごしている身には突き詰められる問題提起であり、今回のこの作品の主題のひとつでもあります。

そう言う意味では、作品タイトルは、「神様メール」という邦題よりも「余命宣告メール」と言った方が解りいいかも知れないですね。

 

『ミスター・ノーバディ』のベルギーの鬼才ジャコ・ヴァン・ドルマン監督が描くファンタジック・コメディという謳い文句ながら、その実かなりへんてこりんな内容の映画でしたね。

 

絶対的な父権主義の「神様ご一家」の家族の弊害が人間界にも暗い影を落とすといった、ブラックコメディでありながら実にシュールな世界観を描いた作品でしたね。

 

こんな神様は絶対に嫌。でも、あまりにも不条理に思えることが起こると、こんな神様を想像してしまう気持ちも解らないでもないでしたね。

 



「神様ご一家」は、何故だか、ベルギーのブリュッセルのアパートに、奥さんの女神と、10歳の娘エアと三人で暮らしています。当の「神様」は、 自分の娯楽のために創造した人間で遊ぶことにも飽きてしまい、 毎日、一人書斎にこもって、この世を支配するために使っている旧式のデスクトップパソコンで、ちまちまと人間を不愉快にする法則をプログラミングしているのでした。神様が人間というコマを動かして一人でチェスを愉しんでいるという表現は何かの書物でも読んだことがあった気がしますが、コンピュータでプログラミングしているというのも、なんだか頷けるからオカシイですね(苦笑)。

 



そんな人間界を弄んで楽しむ、父親の意地悪な神の振る舞いを知り、なんとかしなくてはと思った神の娘エアは、父のそのパソコンを勝手に操作して、世界中の人に余命を告げる通知メールを一斉送信するのでした。案の定、世界は大混乱。

エアは、人々を幸せにするために、下界に旅立ち、兄である「JC」こと「イエス・キリスト」の12人の使徒に、新たに6人の使徒を加え、計18人にし、「新しい新約聖書(新・新約聖書)」を書くことを決意するのでした。

 



この作品の要約を読まれてお解りの通り、「なんてへんてこりんで大胆不敵な筋書きのお話しなのだろう。」とお思いになられる事かと思います。とにかく、この「神様」が嫌な奴過ぎて、敬虔なキリスト教徒は、眉をひそめるかもしれないですね。

 



しかし、唯一救われるのは、神の娘エアが使徒にしようと訪ねる人たちが、皆、愛に飢えて孤独を抱えていること。

かの「新訳聖書」によりますと、(この映画ではエアの兄とされる「JC」こと)、イエス・キリストも同じように、孤独で罪人と蔑まれた人々のもとを訪ねられたと聞く。

 

※尚、奇想天外なお話しでしたので、字幕スーパーにも、「JC」と略して書いてあるので、「イエス・キリスト(ジーザス・クライスト)」の事ではなく、ついつい「女子中学生」の略語かと勘違いしてしまったほどでした(笑)。

 


神様の娘エア役のピリ・グロワーヌが、実に愛くるしく、彼女の自立と成長がこの作品の筋運びと上手くシンクロしながら相乗効果を見せてくれているところも良かったですね。

 

人生の残り時間を意識した時にこそ、自分の本心に目覚めるというのは定番ネタではありますが、前向きに捉えているメッセージにも受け取れるところも良かったでしたね。

また、使徒のひとりとなる、セックスレスに悩む裕福な主婦役を演じる大女優カトリーヌ・ドヌーヴも、この奇妙な世界観をかなり楽しんで演じているようにも感じましたね。

 



この映画の肝とも言えますが、横暴で旧態依然とした父(神様)に、反旗を翻すのが娘のエアであることがある種の希望であり、子供こそが未来の象徴であって、世界の構築に失敗した男性達(父と兄)に代わって、新しい時代を築いていくのは女性であるべきという提言にも感じ取ることが出来ましたよね。

そして、また人々に息吹を与える娘エアの名は、もしかして英語の「Air」から名付けのではとも想像してしまいましたよね。

 

この男性陣に失望している描写としては、冒険野郎のケヴィンの実に浅はかな馬鹿げた行動からも明白かもしれないですよね(苦笑)。

 

<余命>は解らなくても<タイムリミット>は誰しもに必ずいつかは来る。

限りある時間を大切に生きるのに、余命自体の長さは関係はないのだから。

 

未だに根強く男尊女卑の国である、この日本であっても、古くは天照大神に代表されるように、「女神さま」を中心に据える宗教観や考えを抱くのは不謹慎でもないですが、絶対的な父権主義的な神様を尊ぶキリスト教圏から、こうした<神様>をふざけおちょくり、また男性よりも女性を尊ぶような宗教観を描く映画が登場したことにも驚かされますね。

 

この映画を高く評価することには、形式的ながらも、私も、幼き頃に洗礼を受けたキリスト教徒のはしくれとして躊躇いの念も感じなくはないですが、正直、とても面白かったですね。

でも、私の様な不真面目なキリスト教徒ではなく、欧州や米国などの敬虔なクリスチャンはどの様な眼でこの作品を評価するのかと、やや心配にもなりましたね。

この様な宗教観を露骨に表現している点で、問題作として揶揄されるかも知れないですが、勝手な解釈かもしれないが、本当の天に召します「神様」は、この映画のような「神様」とは全然違って、慈愛に満ちた御方であられるはずなので、きっと笑ってお許し下さる事と願うばかりです。

 

 

私的な評価としましては、

敬虔なクリスチャンでもないので、キリスト教に関する知識にも乏しいためイマイチ取っつきにくいところもあり、当初想像していた作品とも違いましたので、その点を差し引きましても、なかなかの野心作かと思われましたので、星4つの★★★★(80店)の高評価も相応しい作品かとは思いました。

 

●映画『神様メール』予告編

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。