『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』(2015年) | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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「ファッション界のカリスマの人生哲学(16.3/24・劇場)」
ジャンル:ドキュメンタリー
原題:IRIS
製作年/国:2015年/米国
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://irisapfel-movie.jp/
上映時間:80分
公開日:2016年3月5日(土)
監督:アルバート・メイズルス
出演:アイリス・アプフェル
ほか

アイリス・アプフェル!:映画チラシ表 

アイリス・アプフェル!:映画チラシ裏 


映画ブログ仲間の映画好き女性ブロガーの愛太郎さんがオススメされていたファッション界のカリスマであり最高齢のファッションアイコンの女性のドキュメンタリー作品だったことから、全国でも8都市しか上映館がない作品でしたが、幸いにして、京都市ではMOVIX京都にて公開されていたので、是が非でもと、今回劇場観賞に臨みました。

アイリス・アプフェル!・10 

ファッション界のカリスマ的存在のニューヨーカーということしかアイリス・アプフェルのことは何一つ知らずに観賞に臨んだ訳ですが、おそらく、あのファッションチェックのピーコさんが小森のおばちゃまくらいに年齢を重ねたらという風に思いながら当初は軽々しく思いながら観ていましたが、その実、そんな生やさしいものではなくて、とても奥が深いファッションを通しての人生哲学がいっぱい詰まったドキュメンタリー映画でした。

アイリス・アプフェル!・01 

アイリスは、1921年。弁護士でありブティック経営者の母親と、インテリア装飾家の父親の一人娘として産まれ、ニューヨーク大学で美術史を学んだ後、一旦、ファッション誌の編集の仕事に就きますが雑用係に将来性がないと退職し、インテリアデザイナーのエリナー・ジョンソンに師事しながら、いつしか自分でも飾ってみたいと強く思うようになり、20歳代にして天職たるインテリアデザイナーに転身を図る。

アイリス・アプフェル!・06 

彼女の独立後、広告業界にいたカール・パテルと出逢い、大恋愛の末、結婚。
アイリスの監修で、アンティークの生地を正確に再現、製造することを専門とするテキスタイル=ファブリック(布地・織物など)をデザインする会社立ち上げて大成功を収めるのでした。
顧客は、パークアベニューの裕福なセレブリティ相手から、メトロポリタン美術館などの内装を手掛けるなど、その仕事は多岐に渡った。
そして9代に渡る歴代大統領の在位期間中、ホワイトハウスの内装修復プロジェクトを全面的に任されて、毎年3ヶ月を費やして世界を飛び廻り、貴重なテキスタイルデザインを見付けては、特殊な技術で製造し、修復作業に貢献していったのでしたが、世界中を旅するうちに、アイリスは熱心なコレクターとなり、織物の生地を集めては衣服に、工芸品を集めては宝飾品に変えて行ったのでした。
1950年代からアイリスはニューヨーク社交界の常連となり、その独創的なスタイルが称賛されるに至ったのでした。

アイリス・アプフェル!・09 

美術史やテキスタイルデザイン、ファッションの歴史にも造詣が深く、歴史的な遺物・産物をただ重んじるばかりではなく、安っぽいアクセサリーや小物の工芸品とも組み合わせることにより、オリジナルなファッションスタイルを確立している点がなんとも素晴らしいですね。
彼女曰く
「ハリー・ウィンストンよりも、4ドル程度のアクセサリーに胸が躍るの!」

また撮影中を問わず、何処に行っても彼女の周りには人が集まります。
真剣に彼女の講義を傾聴する10代の大学生をはじめ、人生相談やファッションのアドバイスを求める老若男女が挙って集ってきます。

アイリス・アプフェル!・02テキサス大学生と 

ミュージシャンや有名ファッション誌のライター、高級ブランドのデザイナーまでもが彼女のファンだと言い、群がってきます。

アイリス・アプフェル!・08 

それも皆、アイリスの独創的なスタイルがファッションアイコンとされているにも拘わらず、決して偉ぶることもなく、ジョークを飛ばしながら、気配りにも長けたその人柄にもあるのでしょうね。本当に人生を謳歌し、自分自身を楽しんでいるかの様に見える姿に人は皆憧れるのでしょうね。

アイリス・アプフェル!・04 

1940年代に、初めて女性のファッションのコーディネートとして、自分自身をジーンズを履きこなした女性だと自負する彼女は口にする、

「特にルールはないの。あっても破るだけ。」

といった言葉をはじめ、名言・金言が次々と出て来ます。

「人と同じ格好をしないのは、自分の意見を持つということ。」

「人の目を気にするのではなく、自分のために服を着る。」

「センスがなくても、幸せならいい。皆好きな服を着るべきだもの。」

「パーティへ行く身支度は、パーティそのものよりもずっと楽しい。」

「毎日無難なことを繰り返すくらいなら、いっそ何もしなきゃいい。」


「自分を美人だと思ったことは1度もない。私みたいな女は努力して魅力を身につけるの。色々な事を学び個性を磨くのよ。」

アイリス・アプフェル!・03 

彼女の話す何気ないひと言が、今の自分の意識の中に足りないものを呼び起こしてくる様で、胸に言葉が響いてきましたね。

また、彼女は、決して、周りから「アイリス先生」なんて呼ばれてもいないし、上流階級を顧客にしていながらも、むしろTVショッピングコーナーなどでは、「珍しい鳥」という珍妙なるニックネームで呼ばれているほど庶民的でチャーミングな人柄が非常にキュートでしたね。

もう自分とは約倍近くの約1世紀近くも生きて来られた、善き人生の先輩という姿・生き様が勉強になるし、勇気が貰える人生賛歌的なドキュメンタリー映画でしたね。

アイリス・アプフェル!・07 

とはいえ、実際に、このアイリスのいう金言・名言たる人生哲学を実践する事が容易く出来るかというと、これまた難しいのが実際のところで、やはりアイリスの様に達観した境地になることが必要なのかも知れないですね。

※たとえば、アイリスの代表的なファッションアイコンの「くいだおれ太郎」か「野比のび太」しか似合わなそうな(笑)、あの大きな丸メガネを他に似合う人が居るかといえばそうは中々居ないですよね。
そう言う意味合いでも人目を気にせずに、独創的なファッションスタイルを貫けるかと言えば、そう容易く実践できるかというと難しいのかも知れないですね。


最後に、アイリスが撮影中に発した、

「積極的に世の中に出たいわ。それが私の生き方なの。歳をとり身体が弱ると、後ろ向きになる人が多い。でも重病じゃないなら、自分を駆り立てなきゃね。むしろ、外へ出て、調子の悪さを忘れるの。」

という言葉が胸にズシン!と響いて来ましたね。

私もアラフィフ世代になり、どうしても身体の調子と共に、気持ちも後ろ向きになりがちでしたが、私も自分を駆り立ててでも、外へ出て、調子の悪さを忘れるようにしたく思い直しましたし、本当に為になる金言であり格言でしたね。

私的な評価としましては、
一見すると、単なるNHKのドキュメンタリー番組的な映画とも言えなくはないですが、あのジャン=リュック・ゴダール監督が「アメリカを代表する最高のアメリカ人カメラマン」と表し、「米国ドキュメンタリー映画の巨匠」と呼ばれながらも、惜しくもこの作品を遺して亡くなった、アルバート・メイズルス監督の遺作でもあり、今回の作品の主役たるアイリス・アプフェルをよく追った作品としてもよく出来たドキュメンタリー映画でしたね。
本作品は、御年94歳になるアイリス・アプフェルという人物をよく理解出来る様に配慮されたドキュメンタリー作品で、彼女の発するさり気ない言葉のひと言ひと言に、まさに魅了された80分間でしたので、若干眠たくなりそうな時間帯があったのは事実ながらも、ほぼ満点の★★★★☆(90点)の高評価を付けさせて頂きました。

オススメ作品です。

●『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』予告編



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