『スティーブ・ジョブズ』(2015年) | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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「不親切な作りの事情通向け応用編的映画(16.3/2・劇場)」
ジャンル:人間ドラマ
原題:STEVE JOBS
製作年/国:2015年/米国
配給:東宝東和
公式サイト:http://stevejobsmovie.jp/
上映時間:122分
公開日:2016年2月12日(金)
監督:ダニー・ボイル
出演:マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・スタールバーグ、キャサリン・ウォーターストン、バーラ・ヘイニー=ジャーディン、リプリー・ソーボ、マッケンジー・モス、セーラ・スヌーク
ほか


スティーブ・ジョブズ:2015年版・映画チラシ 

スティーブ・ジョブズ:2015年版・映画チラシ裏 

TOHOシネマズ二条さんでは、久し振りのおひとり様観賞。選んだ映画は、ダニー・ボイル監督版の『スティーブ・ジョブズ』。

私は、PCについてはMacユーザーではないのですが、iPhoneやiPodなどApple社製品のユーザーでもありますので、多少なりかはスティーブ・ジョブズという人の変人・奇人ぶりや仕事に対する異常なる拘りなどは聞き及んではいましたが、今回の作品は、それでも、アシュトン・カッチャー主演の2013年度版の『スティーブ・ジョブズ(原題:JOBS)』などを、<入門編>として観ていないと理解し難い様な作品であって、実に不親切な作りの事情通向け<応用編的な作品>でしたね。

スティーブ・ジョブズ:2015・ジョブズ2 

Apple社の歴代のコンピュータなどにまつわる専門用語や製品名などについての製品知識くらいならば、いざ知らず、スティーブ・ジョブズと関わる人間関係。例えば、かの有名な、PEPSIコーラからヘッドハンティングしてきたジョン・スカリーやApple社の共同創業者のスティーブ・ウォズニアックなどとの関係のみならず、Macintoshの当時の開発技術者までもを把握しなくてはならないのは、先ず、事前にパンフレットででも予習しておかないと困難なくらいに、私生活を含めた背後関係の把握も必要なので、Apple社製品のファンや、スティーブ・ジョブズの半生に興味がある人以外にとっては、それこそ「いったい何ですか?この映画は?」と反感を買うのではないかとも危惧される様な作品でしたね(苦笑)。

スティーブ・ジョブズ:2015・ジョブズ&スカリー 


●アシュトン・カッチャー主演版『スティーブ・ジョブズ』(2013年)
スティーブ・ジョブズ:2013・カッチャー版 

たしかに、アシュトン・カッチャー主演の2013年度版『スティーブ・ジョブズ』と同じ様な、謂わば<本流>の伝記映画であれば、再度映画化する意味を成さないということからなのか、主に、3つの製品発表会の開始40分前を舞台にした会話劇を中心に特化して描いた、言うなれば<亜流>に徹した伝記映画でしたね。

その3つの製品発表会とは、

①Macintosh製品発表会。
スティーブ・ジョブズ:2015・Macintosh 

②Apple社を追放されて立ち上げた、NeXT Cube発表会。
スティーブ・ジョブズ:2015・NeXT社 

③Apple社がNeXT社を買収したことを機に再度Apple社CEOとしてのiMac製品発表会。
スティーブ・ジョブズ:2015・ジョブズ1 


この3つの製品発表会の開始40分前の会話劇では、基本的には、スティーブ・ジョブズと周りの人間との意見の相違。それは、彼特有の突然の閃きによるアイデアの具現化に伴う衝突や、娘リサの認知や養育費などに関わる親子関係が描かれていますが、前者の「突然の閃きによるアイデアの具現化」の話は、製品発表会の開始40分前の話題としては理解出来ますが、そんな大事な製品発表会の開始40分前に、果たして、後者の「娘リサの認知や養育費など」といった極端なくらいに私生活に関わる話題が本当にのぼったかどうかは甚だ疑問ではありましたね。

スティーブ・ジョブズ:2015・親子幼少 

また、この3つの製品発表会といっては、開始40分前からの開始に至るまでの舞台裏の出来事を中心に描いた会話劇であって、具体的な製品発表のプレゼンテーション自体は、ほとんど全く描かれてはいません。
それにも拘わらず、会話劇とそれを補完する映像から、この3つの商品の特性までもを上手く描写している点は評価には値しましたね。

ですが、それに対して、スティーブ・ジョブズを取り巻く周りの人間関係に対する描写については、あたかも彼を取り巻く人間模様が<周知の事実>として、事細かには説明されない点は不親切な作り極まりなかったかとは思いましたね。

その中でも、特に、浮き世離れしたスティーブ・ジョブズ役を演じるマイケル・ファスベンダーと、彼を見守りながら、時には突き放して、彼の閃きによるアイデアの実現を具現化しようと努力する、マーケティング担当のジョアンナ・ホフマン演じるケイト・ウィンスレットとの長廻しによる会話劇が、実に見事過ぎて、圧巻でしたね。

スティーブ・ジョブズ:2015・ケイト 

アシュトン・カッチャー主演の2013年版では、ジョアンナ・ホフマンという女性はそれほどクローズアップなされていなかったかと思いますので、その点では、今回は特に重要な役回りでしたね。

アーサー・C・クラーク:1974 

アーサー・C・クラーク:2001年宇宙の旅 

そして、何よりも、この作品では、冒頭導入部の『2001年宇宙の旅』の原作者でありSF作家のアーサー・C・クラークが、まだインターネットもない1974年の40年以上前の昔に、今の世の中のインターネットで繋がるコンピュータの時代を予見していたのが凄過ぎるくらいで感銘を受けるどころか、「もしやアーサー・C・クラークは未来から来た人かも?」と疑ってしまうほど驚かされたのが印象的でしたね。

小澤征爾 

また、スティーブ・ジョブズの口から、尊敬する人物名として、日本人指揮者の小澤征爾とアラン・チューリングの名前が挙げられていたのが印象的でしたね。

イミテーション・ゲーム:映画チラシ 

アラン・チューリング:実物 

※アラン・チューリングは、映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でも主人公として登場する、第二次世界大戦中に、英国でドイツのエニグマと呼ばれる難攻不落の暗号の解読に尽力された英国人天才数学者です。

最後に、この映画は、3つの製品発表会の開始40分前から開始に至るまでの会話劇が中心の映画で、そのほとんどが罵り合いや言い争いといった口論が中心になる映画でしたので、観ていて決して気持ちの良いものではなかったですし、この我が儘言い放題の<口先ひとつで、世界を変えた男。>のキャッチコピー通りのサイテー男ではありますが、周りに良き理解者がいてくれたからこそ、その時々の閃きを具現化させる、<カリスマ><時代の寵児>となり得たことがアリアリと解る映画ではありましたね。

ただ、スティーブ・ジョブズの「JOBS」の姓の通り、あくまでも仕事人として生きた人であって、奇人めいた描写があまりにも多く、スティーブ・ジョブズ信奉者にとっては、観るのも辛い作風の映画ではあるでしょうね。

スティーブ・ジョブズ:2015・親子2 

唯一、観賞中に、ほっこりとした気持ちになれたのは、iMac製品発表会の開始40分前のひとコマで、大学生になった娘のリサに、「もうそんな不細工な大きなカセットテープを身に付けさせないぞ!」と、リサにiPodの開発を約束するシーンが心憎かったですね。

私的な評価と致しましては、
罵り合いなどの口論のシーンばかりで、かなり観るのが、終始しんどくて欠伸(あくび)が出て困った映画でもありましたので、ダニー・ボイル監督や脚本のアーロン・ソーキンによる、製品発表会の舞台裏を活用した伝記映画という着眼点は良かったのですが、その反面、非常に、不親切な作りの事情通向けの映画の様に、マニアックに過ぎる作風にもなってしまっていた傾向にもあるので、それらを総合評価しましても、★★★☆(70点)の★三つ半の評価とさせて頂きました。

※あくまでも個人的見解ですが、入門編的なアシュトン・カッチャー主演の2013年度版の『スティーブ・ジョブズ(原題:JOBS)』が、非常に面白い伝記映画だっただけに、奇をてらった様な今回の作品のような、亜流的な表現手法が好きな人には良いかも知れないですが、決して万人ウケする作風の映画ではなかったとは思いましたね。

●映画『スティーブ・ジョブズ』(2015)予告編




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