『小さいおうち』(2013年) | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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「小さい秘密(14.2/7・劇場)」
ジャンル:人間ドラマ
製作年/国:2013年/日本
配給:松竹
上映時間:136分
公式サイト:http://www.chiisai-ouchi.jp/
公開日:2013年1月25日(土)
監督:山田洋次
出演:松たか子、倍賞千恵子、吉岡秀隆、片岡孝太郎、黒木華、妻夫木聡、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子、あき竹城、松金よね子、笹野高史、ラサール石井、林家正蔵、螢雪次朗、市川福太郎、秋山聡、木村文乃、夏川結衣、米倉斉加年、小林稔侍
ほか

小さいおうち・チラシ1
小さいおうち・チラシ1裏
小さいおうち・チラシ2

滋賀県草津市のシネコンにて、母と叔母と一緒に鑑賞。

率直な感想と致しましては、
ようやく久々に山田洋次監督らしい作品を世に送り出してくれたと思わせる佳作でしたね。

直木賞を受賞した中島京子さんの原作は、あいにくと未読ではありますが、前作の『東京家族』では、無理からに小津安二郎監督の『東京物語』を現代調にリメイクした為に、バッシングを浴びもした山田洋次監督。
ですが、今回の作品では、汚名返上とばかりに、東京の昭和初期の中産階級の人々の生活ぶりの本当のところを活写することにより、戦前の軍靴がコツコツと鳴り響き、暗雲が忍び寄ってくる時代にあっても、市井の人々の営みを極々自然に見せてくれる辺りは、戦後育ちの私には、闇雲に反戦を謳うよりかは遙かに説得力があり、日本がどのように戦争に突入していったという過程について、とても興味深く観ることが出来ましたね。

小さいおうち・平井家

また、年老いた布宮タキ(倍賞千恵子さん)の姉の孫である荒井健史(妻夫木聡くん)が、戦後教育で受けた近代史に妙に詳しい設定にしているところが、ミソでもあり、教科書の近代史では解らないところを、観客にも、その当時の暮らしぶりの本来の姿を伝えてくれる辺りも良かったですね。

小さいおうち・健史&タキ2

お話しの流れ的には、
布宮タキ(倍賞千恵子さん)が悔恨の涙を流しながら数ヶ月後に亡くなるのでした。
そのタキは生前に自叙伝を遺していたのでした。
若かりし日のタキ(黒木華さん)が、遠く山形から女中として奉公していた、平井家という、赤いトンガリ屋根の小さいおうちに閉じ込めていた<小さい秘密>が、平成の今を生きる青年・荒井健史(妻夫木聡くん)によって紐解かれていくのでしたが・・・。
といったストーリー展開の映画でした。

小さいおうち・健史&タキ

映画を追っていく過程で、<小さい秘密>自体は観ている観客である私たちには、あらかたはその秘密を知ってしまっているのですが、この荒井健史が、大叔母の布宮タキの秘密について無粋なことをするのではとハラハラとさせながらも、自叙伝による、若かりし日のタキちゃんを取り巻く人々との過去の回想シーンと現代とを行き来しながらお話しは進行していくのでした。

小さいおうち・時子&タキ1

前半部分であまりにも『東京家族』と同じキャストの俳優陣が次々と出演されるのを観て、「これはちょっといただけない」とは思ったものの、平井家の奥様・時子さん役の松たか子さんが、これまでは女優として<飛び抜けた美女>という訳ではないのが善し悪しでしたが、今作品では、往年の美人女優が担いそうな役柄を託されて、それに応えるべく、実に垢抜けた気品溢れる華やかな女性像を演じていましたね。

小さいおうち・時子&板倉

その一方で、奥様の時子さんとは対照的な、山形育ちの女中の布宮タキちゃん(黒木華さん)が本当に愛らしくて、特に、戦時下のタキちゃんへのお見合い話のシーンでは、こちらまで気の毒で、哀しくなってしまうほどでしたね。

小さいおうち・時子&板倉2
小さいおうち・小さいおうち

タキちゃんと同じく東北育ちで、美術学校出身の平井家の旦那様が常務を務める玩具メーカーの社員の板倉正治(吉岡秀隆さん)とタキちゃんは、まさに、東京の昭和初期の中産階級の、赤いトンガリ屋根の小さいおうちは、まさに憧れの眼差しで見ていたでしょうし、年老いたタキさんの寝室に飾ってあった絵からも、<小さい秘密>を抱えたタキちゃんと板倉正治のその後の想像を喚起させられた映画でもありましたね。

小さいおうち・時子&板倉3

平井家の奥様・時子さんと板倉正治の<秘密>。
そしてタキちゃんが抱えた<小さな秘密>。

小さいおうち・健史&タキ2

もしも、それらの<秘密>を持たなくても運命はさほど大きく変化したりもしなかったでしょうが、若かりし日のタキちゃんが、年老いてまで、一生悔やむことになるほど悔恨の念で苦しむことになるのが観ていて辛かったですね。

また、久石譲さんの映画音楽がすごく良かったですよね。

小さいおうち・健史&ユキ

私的な評価と致しましては、
当時の市井の人々の営みを極々自然に切り取った辺りや、日本が戦争に突入していく過程も、非常に勉強にもなりましたし、原作ありきの今作ではありますが、如何にも、久々に山田洋次監督らしい作品に出会った感じで嬉しかったですね。
ただ、惜しむらくは、『東京家族』と同じ様なキャストが次々と出演している点が玉に瑕ではありましたね。
ですが、決して、あの『永遠の0』の様に、反戦を声高に謳った映画ではありませんが、それだけに余計に説得力があった作品の様にも感じさせてくれましたので、★★★★(80点)の高評価を付けさせて頂きました。

お勧め作品です。


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