ジャンル:サスペンス
原題:TRANCE
製作年/国:2013年/米=英
配給:FOX
上映時間:102分
公式サイト:http://www.foxmovies.jp/trance/
公開日:2013年10月11日(金)
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・マカヴォイ、ヴァンサン・カッセル、ロザリオ・ドーソン、ダニー・スパーニ、マット・クロス、ワハブ・シークほか
R15+
滋賀県大津市のシネコンにて、サービスデー(浜大津アーカスの日)に鑑賞。
率直な感想と致しましては、
如何にも、ダニー・ボイル監督らしい奇抜な映画でしたが、スタイリッシュ・クライム・サスペンス映画と言う謳い文句の割りには、クライム(犯罪)の部分がやや弱かった様にも思うのですが、どちらかと言えば、記憶と現実、意識と無意識が交錯する催眠療法(トランス)という状態を、伏線を張り巡らして、鮮やかな映像と音楽とを効果的に巧みに用いて描写することにより、観客を欺く様な映画でしたね。
こういった脳内状態を上手く活用した映画は、私の好みでしたので、すごく面白く観ることが出来ました。
この様な作品を、ダニー・ボイル監督が、あの2012年のロンドン五輪の開会式総監督の大役と同時並行して製作していたことを知りますと、余計に舌を巻きましたね。
お話しの流れ的には、
白昼のオークション会場から、絵画強盗団に、時価約40億円のゴヤの名画『魔女たちの飛翔』を奪われた競売人のサイモン(ジェームズ・マカヴォイ)は、絵画強盗団のボスのフランク(ヴァンサン・カッセル)にスタンガンを浴びせるも、逆に頭を殴打されてしまい、その衝撃で、記憶の一部を喪失してしまうのでした。
それも、よりにもよって、絵画の隠し場所の記憶が消えてしまっていたのでした。
病院から退院したサイモンに拷問を加えるものの記憶が甦ることもなく、そこで、絵画強盗団のボスのフランクは、催眠療法士を雇うことを考え、サイモン自身に、催眠療法士を選ばせるのでした。
フランクの携帯の検索サイトから、サイモンが選んだのは、女性の催眠療法士のエリザベス(ロザリオ・ドーソン)でした。
ですが、サイモンの記憶には、いくつもの異なるストーリーの記憶が存在し、深く探れば探るほど、そこに関わる者を危険な領域へと引きずりこんでいくのでした。
そして、その先には、当のサイモンでさえ予想もつかなかった<真相>が待ち受けていたのでした。
といった、一見したのみでは、ひと筋縄では、なかなか解けないストーリー展開の映画でした。
この映画を観ている当初は、私もそうでしたが、観客のほとんどが、サイモンに同情して観てしまっていますが、催眠療法(トランス)を行っていく過程で、彼を、<可哀相な主人公>として観ていくと混乱を招くといったトリッキーな仕掛けが施されている辺りがミソでしたね。
私も、本作品を鑑賞後には、あたかも自分自身もトランス状態に陥っているかの様に、お話しの筋が混乱してしまっていましたが、ようやく、冷静になって、よくよく、この映画のストーリーでの場面、場面での描写を振り返って、考え直してみますと、この絵画強盗という事件の犯行の起点とは、実は、「あそこの時点にあったの!?」と気が付くのには、相当に時間を要してしまいましたね。
ただ、あまりにも多くの記憶の風呂敷を広げ過ぎたために、張り巡らした伏線の回収の辻褄合わせを、ナレーションと複数のショットで纏め上げてしまうのは、親切設計からと言うよりも、ジョン・ホッジ&ジョー・アヒアナによる脚本の構成上、致し方なかったのかも知れないですが、少々勿体無かったですね。
ですが、それらの点を補うべく、かなり拘ったことがうかがえる線と面のみを強調した様な美術セットに、数々の映像ショットの上手い繋ぎ。
そして、「アンダーワールド」のリック・スミスによる音楽が彩りを添えて、この映画の世界観に、観客を欺き、引きずり込む工夫がなされていましたね。
後半は、スタイリッシュ・クライム・サスペンス映画というよりも、愛憎劇の様相を呈した様な映画でしたが、観客に先読みさせずに騙そうと謀るには、サイモン(ジェームズ・マカヴォイ)、フランク(ヴァンサン・カッセル)、エリザベス(ロザリオ・ドーソン)の3人を主軸とした配役の上では、致し方ない設定だったのでしょうね。
しかしながらも、特に、エリザベス役のロザリオ・ドーソンは全裸シーンを含め、妖艶な役を、なかなか好演していましたね。
ただ、非常に残念なのは、絵画強盗という犯罪のみならず、他人の命を奪うという設定にもなっていた点が、かなり後味が悪い作品となってしまっていましたので、その点が、非常に悔やまれましたね。
私的な評価と致しましては、
ダニー・ボイル監督らしい奇抜な作品で、私を含め、観客に先読みさせないくらいに、上手く欺いた様な作風で、脳内状態を上手く活用した映画は、私の好みでもあり、すごく面白く観ることが出来ましたし、ジェームズ・マカヴォイも、ヴァンサン・カッセル、そしてロザリオ・ドーソンも実に好演していた映画でしたし、何度も繰り返し観たくなる作品でしたね。
ですが、伏線を張り巡らせるべく、記憶という複数のエピソードの風呂敷を広げ過ぎたために、伏線の回収の辻褄合わせを、ナレーションと複数のショットのみで纏め上げていたのが少々勿体無かった点や、絵画強盗という犯罪のみならず、他人の命を奪う設定になっていた点が、かなり後味が悪い作品になっていた点が非常に悔やまれましたが、それらの点などのマイナス要因とこの映画の出来映えとを勘案致しましても、ほぼ満点の★★★★☆(90点)の高評価に値する快作だと思いました。
お勧め作品です。
リック・スミス名義のこの映画『トランス』のオリジナル・サントラ盤も購入したいところですが、この楽曲を聴いて快眠出来るかどうかと考えますと、映画の内容を想い出しますと、少々怖いですねσ(^_^;)
●映画『トランス』予告編
●Trance:Original Sound Track ⑪.Bring It To Me
※ダニー・ボイル監督の『スラムドッグ$ミリオネア』の記事は以下を参照下さい。
→ 『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)
この度も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。