ネタバレしています。
むしろネタバレしかしていません。
それでも大丈夫な方だけお進み下さい。
私は素人なんで舞台の良し悪しなんてわかんない(笑)
でも見終わって、すごくいい時間を過ごせたと思えたら、もうそれで良いと思うんです。
『蜘蛛女のキス』は、映画も(小難しい映画を喜んで見てた時期ww)好きだった。
だから、この舞台を楽しむ下地はバリバリありました。
そういうのが加味されていたのかもしれませんが。
終わった後、すごい満足でした。
同じ舞台を同じ熱量で語れる人と語りたくて仕方なかった。
(1人で行ってたからそれも出来ず。。。)
だからこうやってすごい勢いで(笑)ブログを書きました。
まず、おおまかなあらすじ。
ブエノスアイレスにある刑務所の小さな監房。
その孤独な密室空間に二人の男が収監されている。
一人は政治犯として捕まった若き革命家・ヴァレンティン(大倉忠義)。
もう一人は未成年者に対する背徳行為で投獄された母親想いの中年・モリーナ(渡辺いっけい)である。
境遇も思想も正反対の二人だが、そんな彼らを結ぶのは、モリーナがヴァレンティンに夜な夜な語って聞かせる映画の話であった。
二人は徐々に心を通わせていくのだが……。
この舞台は場面転換がありません。
ずっと2人がいる、刑務所の監房の部屋の中だけで話が進みます。
(部屋の外の設定は、面白い見せ方をしていました)
2人芝居です。
モリーナ(渡辺)は中年のトランスジェンダー。
監房の中でも、女装しています。
粗野なベッドにも、綺麗な布のカーテンをつけたり。
着ている服装にも気を遣ったり。
(全身ピンク系の服装をしている)
立ち振る舞いは、まさに女性です。
片や、ヴァレンティン(大倉)は若い革命家。
(でもある程度の教育をうけた良家のお坊ちゃん)
態度は最初は荒々しい。
少年っぽい感じもあるけれど男臭くてイヤな感じもする。
着ている服はボロボロ。
そして、シャツの隙間から見える胸に深い傷があります。
一日中監房の中にいるだけの彼ら。
おそらく、そういう無限の暇な時間をつぶすためなんでしょう。
(あと現実逃避か・・・)
モリーナが自分が過去に見た、好きな映画のシーンを話す場面から始まります。
登場人物の髪型や服装まで、細かく語ります。
ここはずっと、いっけいさんの長い語りのシーンです。
(大倉がときどきツッコミを入れる)
ヴァレンティンはそんなモリーナの話を聞いてはいますが。
気に入らないといちいち怒鳴ったり。
食べ物の話と女の話はするな!
(監房にいる自分ではどうしようもない事柄なので)
荒々しくワガママな若者。
最初はモリーナも、ヴァレンティンに対しては何も感じてなかったんだと思います。
自分の釈放と引き換えに、刑務所の所長と取引をしています。
政治犯のヴァレンティンを弱らせるために、下剤の入った食料を食べさせようとしたり。
でも一度目は、逆にモリーナが下剤入り食料を食べるハメになり苦しみます。
ヴァレンティンがそんなモリーナを心配して優しい言葉をかけてくれます。
一緒にいるうちに、2人共、心を通わせてくるわけですね。
次のシーンでは、ヴァレンティンが腹痛に苦しんでいます。
(下剤入りの食べ物を結局食べちゃった模様)
それを懸命に介護しようとするモリーナ。
(モリーナはそうしなければいけない自分の立場と、苦しむヴァレンティンを助けたいという気持ちで揺れている)
激しい腹痛でも部屋の外(病院やトイレ)に出るのを拒むヴァレンティン。
政治犯の彼は、弱ると薬漬けされてしまう事を悟っているから。
そしてとうとう。
ヴァレンティンがベッドの上で粗相をしてしまう。
(大の方を漏らしてしまう)
と、汚れたパンツを脱がせ、自分のシャツを使ってその始末をしてあげるモリーナ。
そんなモリーナに心を打たれるヴァレンティン。
その、粗相のシーンの後。
それまではモリーナを「あんた!」と呼んでいたヴァレンティンが、初めて「君」と呼ぶようになります。
この場面については演出家の鈴木さんによると、
英語では「YOU」で言い換えはないのだけど、日本語訳した戯曲ではこのタイミングで「あんた」→「君」になっていたと。
そのタイミングにひっかかったので稽古で試してみたら、この訳に納得がいったと。
難易度が高い戯曲だからこそ、稽古では丁寧な積み重ねをしてひとつひとつ確認していった。。。というような事をおっしゃってました。
私は幕が上がる前にたまたまチラリとパンフレットを読んでいて。
あ、じゃぁそのタイミングがどこなんだろ??と思って、気をつけて見てました。
ヴァレンティンが(女性としての)モリーナに心を開いたのがよく伝わる場面でした。
渡辺さんはまさに、中年のちょっとウザいおばちゃん!って感じで。
大倉氏はそれに対して最初はイライラしている若者。
それが、2人がちょっとずつ心を通わせていくうちに、柔らかい表情になって、恋人のようになって行くんですよね。
普通ではあり得ないけど、特殊な環境下だったから起こり得た出来事だったのかもしれない。
(ヴァレンティンには事実、外に恋人もいる)
でも。
渡辺さんのモリーナは、映画のモリーナ同様。
最初は女装した中年男性にしか見えないのですが。
話が進むにつれ、どんどん女らしくなっていき、
最後には、可愛らしい女性にしか見えなくなるんです!
ホントにキュートで可愛いの!
とっても適役だったと思いました。
サスガですよね。。。
##############
休憩をはさんだ後の場面。
刑務所から差し出された(下剤入りの)食料を日々食べさせられたと思われるヴァレンティン。
とても弱っています。
思考能力もなく。
寝たきり一歩手前に。
(大倉さん、めっちゃ痩せてる)
でもここでもハッとしました。
最初のシーンでは、偉そうで身長の高さが目立っていて骨太に感じた大倉ヴァレンティンでしたが。
この場面ではガリガリで、倒れそうな雰囲気になっている。
(実際痩せてるし)
ここではまだ、モリーナはヴァレンティンを騙してるわけです。
自分の出所と引き換えに、ヴァレンティンを弱らせるのが目的だから。
だけどだんだん、それをしているのが苦しくなって来たんでしょうね。
所長との対面の時(母が面会に来た、という名目でモリーナは所長室へ行く)
「ヤツから何か話は聞けたか??」
という所長の問いをうまくごまかし、ヴァレンティンをだますためには母親からの差し入れが必要だと訴えて、ヴァレンティンのために食べ物をたくさん用意させる。
弱ったヴァレンティンを見てられなくなって。
食べ物を与えるモリーナ。
そんなモリーナによりいっそう、心を許していくヴァレンティン。
最初は出所したくて取引していたモリーナですが。
ヴァレンティン惹かれるにつれ、良心の呵責にさえなまれる感じになってきて。
所長との対面の時間が来ると、足取りも辛そうになります。
所長との対面のシーンはどう表現していたかというと。
(要するに監房の外の世界)
客席に背中を向けて椅子に座った所長が、舞台手前の下から出てくるんです。
椅子ごと。
監房の場面の一角にスポットライトが当たって、その部分が所長の部屋に早変わりするという演出。
舞台正面奥に、ドアがあるんですが。
所長シーンではドアが高そうな木のドアになって。
監房シーンでは、鉄の、錠がたくさんついているドアになっていました。
寝たきりでシャワー(水)も浴びれず辛がるヴァレンティンの背中を、モリーナが大切な水を沸かしてお湯にして、拭いてあげる場面があります。
ここでヴァレンティン大倉が背中を出すのですが。
背中一面に広がる拷問の跡。
切り傷や、ムチの跡。。。。
作り物だとわかっていても胸が苦しくなりました。
背中を拭いてもらって。
ふふふ。
とヴァレンティンが笑うんです。
バカにしてるの?とモリーナが聞くのですが。
痒くなくなったから、とヴァレンティンが楽しそうに答えて。
その場面もすごく良かったんだよね!
ヴァレンティンはモリーナと心を通わせるうち、どんどん組織(革命家だからね)の事や彼女の名前なんかをモリーナに話そうとします。
秘密を一部知ってしまったモリーナですが、それを所長には言えない。
でも最後には、モリーナは釈放される事になるんです。
(モリーナを泳がせて、ヴァレンティンの組織の人間と接触するのを待つ目的で)
最後の夜(だよね?映画では最後の夜だった)
心を通わせた2人は、ベッドを共にする。
その流れも自然で。
最初、モリーナの隣で優しく話を聞いているヴァレンティンが、徐々にそういう雰囲気になっていく。
好きにしていいのよ?
気持ち悪くなければ
そういうモリーンの女心にも胸が痛くなるし。
(年上のオカマという認識で)
そう、自分を卑下するモリーナに対し、ヴァレンティンが怒ったりするんです。それももう優しさしかなくて。
ベッドシーンの記述要りますか?(笑)
じゃ、書きます(笑)
毛布の下の2人。
客席からは毛布から出た2人の足首から先しか見えない。
喘ぎ声と、そのシーンの間はそういう動き。
(足首しか見えないけど、動きはリアルでしたよリアル)
私ね。
大倉氏と安田氏の舞台が始まったばかりの時、
「蜘蛛女 ネタバレ」とか
「俺節 ネタバレ」とか
って検索してみたんですよ。
そしたらどちらも、その手のシーンの事ばっかり出てきて!
唖然としました(笑)
演出に必要だからその手のシーンがあるわけで。
大倉、いやぁぁ!
ヤスぅ、いやぁぁ!
そんなシーンがあるなんて聞いてないぃぃぃ!
そういう問題ちゃうかと!!(笑)
「蜘蛛女のキス」において、この2人の一夜はやはり外せないと思います。
性を超えて、結ばれる話ですよ。
気持ちがそこまで行けばそういう事になる。。。というね。
モリーナが釈放になる!という事がわかって。
ヴァレンティンは、彼女が外で組織と連絡をとってくれるよう、必死に頼みます。
でもモリーナは、そんな危険な事は出来ないと最初は断ります。
モリーナが「映画」を語る。。。
という事柄が、この話にはとても重要な意味を持ちます。
(劇中ずっとこの「映画」を語り続けてる)
最後だからと。
ヴァレンティンが、最後の話をモリーナにねだります。
そして。
モリーナが去る前。
最後にキスをねだるんです。
ヴァレンティンに。
1度もしてなかったわね?
そうだな
気持ち悪くなかったら
バカ言うな
みたいなやり取りがあって。
(ニュアンスです)
ヴァレンティンはモリーナに優しくキスをして。
モリーナを諭します。
「人に利用されるな」
「君は尊厳を持って」
(ニュアンスです)
という事を。
はい。
私はここで、泣きました。。。
大倉ヴァレンティンの優しさに胸打たれ。
渡辺モリーナの切なさにも胸打たれたから。
大倉ヴァレンティンは最高にいい男でした。
ずっと年下の男なのに。
大きな男性と、かよわい女性にしか見えなかった2人。
そのヴァレンティンの優しさに、モリーナはとうとう、
外に出て、組織の人間と接触する事をヴァレンティンと約束します。
そのモリーナの決意に感激したヴァレンティンは、
モリーナにもう一度激しくキスをして強く抱きしめます。
結論から言うと。
釈放されたモリーナは、結局組織の人間と接触しようとしますが、警察(モリーナを張ってたからね)に追われ、組織の人間に射殺されてしまいます。
捕まりそうになったら殺してほしいと、モリーナ自身が頼んでいたからです。
ヴァレンティンはその後ヒドい拷問を受け、意識が朦朧としたところで、モルヒネを打たれ夢をみます。
それは南の島で恋人と手を取り合っている夢。
舞台のラストシーンは、
お互いがお互いのその後を語るシーンでした。
モリーナの最後を語るヴァレンティン。
モリーナの話を促す、少年のようなヴァレンティン。
このシーンも涙涙でした。