[カントゥク]
あれは俺がたまたま宿舎にいた時。
トゥギヒョンの部屋から怒鳴り声と何か物が倒れる音がした。
「え・・・?」
『ーって!!ーがーだからーだ!!』
珍しく、トゥギヒョンが怒鳴っている、それだけでもびっくりしたのに。
部屋から出てきたのはヒチョリヒョンで。
何かから逃げるようにリビングへ走って行ってしまった。
(何だ?喧嘩か?)
心配になってトゥギヒョンの部屋をのぞく。
ドアはヒチョリヒョンが出て行った時に全開だったし、何より何があったのか好奇心が湧いた。
部屋の中はだいぶ暴れたのか服やCDが散乱して、酷い状態だった。
ベッドの前に倒れてる棚がさっきの音の原因だろう。
部屋の主はベッドに腰掛けた状態で項垂れていた。
「ヒョン・・・トゥギヒョン!」
「あ・・・カンイン・・・」
俺の声でこちらを向いた顔。
ヒドい顔色だ。
俺は部屋に入るとなんとか物を乗り越えて彼の隣に腰掛けた。
勿論何か事情があるのだろうと思ってドアは閉めて。
「ごめん、うるさかったよな。」
「何があったんだよ。こんな風にヒョンがなるなんて、よっぽど大変なことが」
「大したことじゃない。大丈夫だから。」
突き放すように俺の言葉を遮った彼。
まるで俺自身が拒絶されているかのように思った。
「だから部屋にもど、」
「俺はそんなに信用ないか?」
「え・・・」
「俺はそんなにあんたにとって信用無いのかって聞いてるんだよ。」
「わぁっ!?」
頭に血が登った俺は立ち上がりかけた彼の腕を掴み、思いっきり引き寄せた。
そのまま後ろから抱きしめるかたちで腕に力を込めた。
「カン、イン・・・何だよ。」
「確かにヒョンはリーダーで、俺は頼りない弟かもしれないけど・・・話してくれてもいいじゃないか・・・」
「お前・・・」
「メンバー同士で喧嘩なんて、俺は嫌だ。」
「喧嘩ってほどじゃ、無いし・・・」
この体勢が恥ずかしいのか、耳元で聞こえる俺の声が擽ったいのか、彼の耳は真っ赤に染まっていた。
それを見て今更ながらに俺も恥ずかしくなってきた。
でもまぁこの状態はおいしいし、どもっている彼が可愛いのでしばらくはそのままでいようと思う。
今はとりあえず事の真相を聞き出すのが先だ。
「じゃあなんであんなに怒ったりしてたんだよ。」
「あれは、怒ったっていうか、話し合いっていうか・・・」
「話し合いで部屋がこんなふうに荒れるのかよ。」
「う・・・」
俺の腕からなんとか抜け出そうとしていた彼が俺の一言で動きを止める。
まぁあの状態じゃ誰がどう見たって喧嘩にしか思えない。
俺はヒョンの肩に顎を乗せて彼の手を握った。
「怒ってるわけじゃないんだ。ただ、心配なんだよ。」
「・・・カンイン。」
「大したことないんだったら話してみろよ。な?」
「う、ん・・・」
事の真相はこうだ。
トゥギヒョンはヒチョリヒョンにCDを貸していた。
返すのはいつでもいいと言っていたが急にダンス練習で必要になった。
いざ返してもらおうとヒチョリヒョンに言ったら、帰ったきたCDのケースが割れていた。
「それだけ?」
「それだけってお前!大事なCDだったんだぞ?」
「でもCDは割れてないんだろ?ならいいじゃねーか。」
「そういう問題じゃないんだよ!!」
お前もヒチョルと同じこと言いやがって!!とプリプリする彼の頭を撫でて落ち着かせる。
心配したけど、まぁ本当になんでもなかったな。
「トゥギヒョン。」
「何だよ。」
「とりあえず、片付けようぜ?」
END