パタゴニアを離れたのは、夜中、というよりもむしろ早朝に近い、午前4時前。
一緒にパイネ国立公園のツアーに参加したインド人のミロニに空港で再会。I was attacked by penguins!(ペンギンに襲われた)という話をしたら、かなり爆笑していた。そりゃ、ペンギンに襲われる人なんてそうそういないだろうよ。
そんなこんなで飛行機が出発するまでの時間を潰し、そして2300Km北にあるサンチアゴへ。
南半球なので、北に行くほど、暑くなる。
3時間後の午前7時、5日ぶりに、常夏のサンチアゴに戻ってきた。
それにしても暑い。
汗が吹き出るような暑さだ。
日差しが肌を刺すように、俺を照らしている。
この旅を始めてから、短いスパンで、暑いところに行ったり、寒いところに行ったりを繰り返している。
それ自体は別に問題ないのだが、数日単位で着ている服装が変えなくてはいけないのがけっこう面倒くさい。
昨日まで長袖、セーター、ジャケットの上にウィンドブレーカー、さらにユニクロのヒートテックのタイツを着用していたのに、今日は半そで、短パン、みたいな。
我ながら、よく体調を崩さずに来ているな、と思う。
中国、インドを越えてから、軽い体調の不調はあっても、大幅に、寝込むほど体調を崩すことがなくなった。どこでも寝られるし、そういう意味では繊細すぎない体でよかった、と思う。
体に関して困ったことといえば、
空気の悪いところにいることが多く、鼻毛が伸びるのが早いことと、
ずっと同じ靴を履いているので、足がむれること、
あと、イタリアのヴェネチアで銀歯が取れて、歯にモノが詰まりやすいこと
・・・それくらいか。
こうやって羅列してみると、ほんとに大したことない悩みばかりだな・・・。
俺のくだらない悩みはさておいて。
前日、22時間起きていたせいで、飛行機に乗った瞬間、死んだように寝てたが、午前7時に着いたので、まだ眠い。
眠い目をこすりながら、サンチアゴ空港内のLAN航空のカウンターへ向かう。
なぜかって?
前日の日記にも書いたとおり、南米の滞在を延長したおかげで、航空券の日付を延長していた。そして、ニュージーランドへの航空券はまだ、ウェイティングリストに乗っている状態だったのだ。
やりとりをしていた、ペルーにあるJALオフィスからは、まだコンファームされていない、と前日メールが来ていた。
・・・が、しかし、こういう場合、待ちの状態よりも、攻めた方がいい結果が出る事を、旅をしながら、なんとなく気付き始めていた。
ということで、早朝のLAN航空の空港オフィスを奇襲攻撃。
新人らしい女性スタッフが対応してくれる。
隣にいる、先輩っぽいスタッフに聞きながら、いろいろPCを操作しているようだが、なにやら険しい顔をしている。
・・・やっぱりまだダメなのか、、、
諦めかけたその時、なにやら、細切りの紙切れのようなものを渡された。
「これを持って、今日の夜、23時10分のフライトに乗りなさい。2時間前には空港に来て下さい」
よっしゃー!!
奇襲作戦、成功!!
きっと、ほっておいたら、予約は取れなかったであろう。
なにしろ、世界一周航空券のステータス、つまり、チケットの強さは、他のチケットに比べて、ありえないくらい弱いからだ。
他に正規に購入した、普通に格安航空券で購入した、そういうチケットの方が優先される。
戦闘力で言うと、通常価格で購入したビジネスクラスがフリーザクラスの強さとして、かたや世界一周航空券の戦闘力は、ラディッツが来襲した時に登場した農家のおっさん並み、、、そう最弱だ。
ああ、よかった・・・とホッとする。
その後、荷物を預け、サンチアゴの街に戻る。
なにしろ、まだ出発まで16時間もある。
市内の宿に、預けている荷物も取りに戻らなくてはいけない。
まずは、市内までバスで行き、そこから歩きでモネダ宮殿、アルマス広場、教会などを回る。
ちなみにチリはペルー、ボリビアに比べて物価が高いことはお伝えしたが、それらの街に比べて、街自体もとても発展している。他の先進国と比べても、あまり遜色はないように感じる。
ちなみに、南米に行くまで全然知らなかったが、チリ人は、前出のペルー、ボリビアのようにインドヘナといわれる土着の民族が多い国と比べて、白人が多い。少なくとも、白人とのミックスがほとんどである。アルゼンチンも同様に白人が多い。
話戻って、サンチアゴの魚市場へ。
ビーニャデルマールの魚市場に比べて大きい気がする。
サーモン、貝、魚、海老、ウニ・・・
いろんな種類の魚介類が並んでいる。
・・・う、美味そうだ・・・。
しばらく見て回った後に、日本語で、うちのレストランに来ないか?と勧誘を受ける。
・・・でもお金ないから、、、というと、いろいろな魚介類の刺身盛り合わせ・とスープをつけて、4000ペソ(8ドル)でいい、という。
ホンマかいな、と思いながらも、どうやら「地○の歩き方」にも載っている市場で一番大きなお店らしいので、まぁそれなら、と思い、ついていく。
まずスープが出来てきた。
魚介類がごっちゃまぜにしてあるスープだ。
おそるおそるスプーンで、その黄色く濁ったスープに口をつける。
うっ・・・
うんまーい!!
・・・というリアクションを期待させてしまったら申し訳ない。
正直な話、いろいろまぜすぎていて、あまり美味しくない。
というか、どちらかというとまずい部類に入るだろう。
こんなにいろいろ入れすぎるくらいなら、アサリ一つでもいいから、すまし汁にして頂きたい、と思う。
そして、次にサーモンの刺身の盛り合わせが。
大人から子どもまで、わけへだてなく愛される、オレンジ色のアイツが皿にのって運ばれてくる。
否応なしに高まる俺の期待。
わーい!久々にサーモン食べれるー!!とちょっと興奮しながら、輝くサーモンちゃんに箸を伸ばす俺。
刺身と一緒に運ばれてきた韓国製のしょうゆにつけて、口に運ぶ。
ん?
ぐ、、、んぐふっ!!
しょ、、、しょっぱーーぁあ!!
思わず手元にあった水をがぶ飲みする俺。
サーモン自体に味がついている上に、塩・こしょうで味付けしてある。
さらにそれにしょうゆをつけたもんだから、ありえないくらい塩っからい。
食べつくしたら、これだけで成人病になりかねないくらいの破壊力だ。
期待値が高く、尚且つ、ハズれのないサーモンだけに、俺のショックはかなり大きかった。
激しくへこむ俺。
そのうち、激しいへこみが、だんだんと怒りに変わってきた。
刺身を出す、といって、下味をつけてサーブしたこのレストラン、さらにそんなレストランを図らずもオススメしている「地○の歩き方」に対して。
それでも我慢して、食べる。
・・・辛い・・・
あまりにも辛すぎて涙が出そうだ・・・
むしろ、ちょっと涙が出たかもしれない。
最後はあまりにも辛すぎて、スープで味を落としてから食べていたくらいだ。
それでも我慢しきれずに半分以上残してしまった。
正直、嫌いなもの、食べれないものがほぼ皆無に等しい俺が、こんなに食べ物を残すのは前例のないことで、さらに食べ物をほとんど残してしまうことの罪悪感で心がいっぱいになってしまった。
そして、支払い金額の書かれた請求書を見た瞬間だった。
俺の中で、何かが音を立てて切れた。
プチッ、と鈍い音を立てて。
4000ペソでいい、というから入ったのに、請求書に書かれていた金額は9000ペソ近い金額だった。
9000ペソ。それでも日本円でいうと、たかだか1700円くらいだろうか。
別に払えない金額ではないし、べらぼうな金額を請求されている訳ではない。
ただ、約束が違う。
言った金額の2倍以上って!
さらに、メシが美味かったら、少しは気持ちも違ったかもしれない。
ただ、今回は冗談抜きにメシが不味すぎた。
負の相乗効果で、俺の怒りも頂点に達した。
担当者を呼べー!マネージャーを出せー!
・・・とまでは言わなかったものの、静かに、冷静にスタッフをつめる俺。
マネージャー、俺を勧誘したスタッフの両方と話す。
なぜ、この金額を請求したのだと怒る俺、双方の勘違いを主張する店側。
最終的に食べたんだから6000ペソは払う、ということになったが、それと引き換えにこういうことがあったと、ガイドブックやネットに載せるから、と伝えた。
それを伝えると店側はテンションがガタ落ちしていたが、同じようなことを他の日本人に味わって欲しくない。本当にそうするどうかは分からないが、少なくとも俺がそういう強気な対応をしたことで、次の日本人にはきちんと、誠実に対応してくれることを心から願う。
あと、大切なことを最後に伝えておいた。
頼むから、ぜったい刺身に下味はつけるな!ということ。
最終的には和解し、マジで、ちゃんとやれよ!と言い残して市場を去る俺。
はぁ、、、疲れた・・・。
その後、睡眠不足と店員とのバトルによって、消耗してしまった俺。
本当は郊外にあるワイナリーにでも行こうかと思っていたが、もう俺にはそんな体力は残されていなかった。
近くにあるサンタルチアの丘に登り、サンチアゴの市内を見渡した後、宿へ戻って、しばし休憩。
夕方まで宿でゆっくり休んだ後、地下鉄・バスを乗り継いで再び空港へ。
最後にチェックしたメールに、またペルーのJALオフィスから、まだコンファームされていないと、メールが入っていたのを不審に思いながら・・・。
サンチアゴ空港にて。
去り際にビルの向こうの山から、光り輝く夕陽が辺り一体を照らしていた。
夕陽で金色に輝く景色を見ながら、ああ、本当に南米を去るんだな、と思う。
自然が雄大で、人が温かくて、いろんなものが違っていて・・・
スペイン語も、たまに上手く言葉が通じなくて、もどかしいこともあったけど、もう話す機会がなくなるのかと思うと、少し寂しい。
そんなノスタルジックな気分は、この直後に一変する。
チェックインしようとカウンターに行って、手続きを開始する。
ここまでは余裕のよっちゃんだ。
なにしろ、もう俺の予約はコンファームされている。
と。
またもや、スタッフのお姉さんが難しそうな顔。
上司らしい男性の人も来て、なにか話している。
その男の人は俺に言った。
あなたの予約はまだウェイティングリストに乗っていて、コンファームされていない、と。
オ、、、
オーマイガー!!
ま、まさか・・・ここまで来て乗れないとか・・・??
1時間後にまた戻ってきてくれ、と言われる。
しょうがないので、空港で1時間待つ俺。
1時間後、、、
チェックインカウンターが閉まってしまう直前に戻る。
お姉さんに話を聞く。
ど、、、どうなりますたかねぇ??わすの、わたすの、、、飛行機は・・・
あなたの席は用意できたわ、急いで中に入って!
ギ・・・ギリギリセーフぅーー!
こうして俺は数々の事件を乗り越え、23時10分、ニュージーランドへ向かうLAN航空に乗り込んだ。
こうして、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンと4カ国を巡った、初の南米大陸の旅は終わった。
なかなか波乱万丈な旅だったが、想像以上に楽しく、刺激的な日々を送ることが出来た。
ありがとう、南米大陸!
また来るからな!!
そういい残して、俺は次の目的地、27カ国目となる、オセアニア・ニュージーランドへと向かった。
☆今日のオマケ画像
チェホンマンあたりと戦わせてみたい。