愛をうたう -10ページ目

愛をうたう

ショウジョウハイライト明香のアタマ




洗い終わった洗濯物の中に1枚のハンカチ。

薄手のバンダナのような黒色に赤い模様で

私が10年ちょっと前に友人から借りてそのまま持っているもの。



◻︎◼︎◻︎



私が大阪に来てしばらくして

縁あって都島でお店をやることになった。

その当時、20代半ばだった私が基本1人でお店に立つことを心配して

その時の恋人が後輩のボクサーたちを用心棒がわりに手伝わせると言い出して

心遣いはありがたかったけれど

柄の悪い男の子たちが日替わりでやって来ては、しかめっ面でいるもんで

あっという間にボクサーのいるやばそうな店という評判がたった。

猛獣使い気分で何とかやりくりして何とか楽しくやっていたある日

コンビニにお客さんのタバコを買いに行った後輩の1人が

見知らぬ年配の男性を連れて店に帰ってきた。



いらっしゃいませ


生ビールあるの?じゃそれで。



後輩の知り合いですか?と聞くと

いやコンビニの前で声をかけられて面白そうやから一緒に来たと言う。



おっちゃん、おもろい店あるから飲みに来いや。

アイスやるから。



そう言われてついて来た50歳過ぎのおじさん。

飄々としていて少年みたいに笑う白髪混じりのおじさん。

新地でガットギターを弾いて暮らしているカミジさんという人だった。


◻︎◼︎◻︎


歌を歌う人になる


と言って金沢出た私だったけれど

恋人の家に住み、そこから繋がるツテでアルバイトをする日々の中

歌うことに関しては特に何か現実的にするでもなく

大阪の少ないツテの一つの音楽サークルで歌ったりするくらいだった。

そんな日々の延長上で始めたお店だったから

歌を歌う人になるという私の意気込みは

どうして大阪に出て来たのかという問いに対する、少し夢のある返事になっていただけだった。


そんな私に

お前、うた歌うんならギター弾くから歌うか?

と言って

まるでアイス食うかみたいなノリでカミジさんは誘ってくれた。


カミジさんはラテンミュージックを基本に新地のクラブで毎日ギター演奏をやっていて

リクエスト用に歌謡曲やらも色々レパートリーがある。


この曲知っとるか?


と、楽譜を渡されてそれを練習した。

ポルトガル語やスペイン語の曲も何曲か練習した。

私の店が休みの日に、バーや音楽祭で歌ったり

昼間の単発の営業に一緒に連れて行ってもらったりした。



恋人も変わって、店の近くで1人で暮らして

後輩のボクサーたちもただの友達になって、お店も馴染んできて

時折カミジさんと一緒に歌いに行く。

暮らしの中に歌があって、私は何だかいい気分だった。




お店の常連さんで私よりいくつか年上のサカエちゃんという女の子がいて

私はその子と気が合って、よく一緒に遊んだりしていた。

サカエちゃんはカミジさんとも仲が良かったので、自転車に乗って出かけたり、立ち飲みに行ったり、よく3人でも遊んだ。


カミジさんには別れた奥さんと暮らしている私と年の同じ頃の娘さんがいて

私とサカエちゃんを娘みたいに思ってくれていたところがあったような気がする。

でもカミジさんは人を年齢や職業で全く区別しない人で

同じ目線で対等に付き合うので喧嘩になったことも何度かあったし

3人で泣きながら明け方まで話をしたこともあった。







認められたいとか
分かってほしいとか
何かのためにとか

言い出した途端に
色んなことが面白くなくなってしまう。


そこが目標になると楽しくなくなるまであっという間。





でもわかる。

そうだったし
今もその癖は抜けきっていない。

認められたり
褒められたりしたら
いい気持ちになるし
もっといい気持ちになりたくなるし
何なら
常に気分良くいたいもんね。


でもその思考自体が幻覚のようなもの。


そうなったら
そうじゃないことが怖くなって
求めて
確かめて
演じてみたりしちゃって
なんかどんどん離れていくんだよね。

自分なのに
自分が遠くなる。




そこじゃないところに思考の先がある人って面白い。
輝いている。
愛される。


面白いから。
楽しいから。


それのどこがダメなんだろう。

大体問題にしたがるのは
羨ましい人たち。



なぜ輝いて
なぜ愛されるか


自分に対して嘘がない。



それの美しいこと。




でも出来ないことをやっているんじゃないよ。
やらないんだ。
出来ないって自分で決めているだけ。

状況でも環境でもタイミングでもない。

自分がそう決めているだけ。




私はつまらないものはいらない。

だってつまらないから。







台風が過ぎて秋がやってきたよ。




明日は通天閣の足元
まるでお家のようなお店
のこされ島で歌います。

のこされ島のカレーも美味しいしナシゴレンも好き。
でも久しぶりに新世界行くから鶏カツわさびは外せない。
小さなグラスで最初の1杯が飲みたいから飲み切らなくても瓶ビールがいい。
あとは居合わせた誰かに飲んでもらって空いたグラスで乾杯。

そこに行けば会いたい人がいて
そこでしか食べられない美味しいものを食べる
笑ったり
思い出したりして
少し帰る時間を遅らせたり。

そんな夜が私は好きです。


明日ははあなたが会いに来てくれるから
私はここで待っているよ。




■□■ショウジョウハイライト 9月のライブ


9月22日(木祝)
会場■新世界のこされ島
開場■18:30
共演■なかみねしょー/クロエ
料金■投げ銭
☆ショウジョウハイライトは20:40頃から歌います。