今日は
なんだか色々な感情が私の中にごちゃっと満ちて
会えない人のことを思い出したり
会いたい人のこと考えていたら
たまらなくなって
コンビニに駆け込み
マッチとたばこを買って
ずいぶん久しぶりに一本吸った。
最後に口にしたのは14、5年前
1度目の結婚をする前か、した後か、終わる前か。
はっきりは覚えてはないけれど
まぁずいぶん前。
大好きなおじさんが肺の病気になって手術をして退院したということを聞いて
大阪からサンダーバードで金沢へ
金沢からおじさんの住む能登へ向かった。
家に着いて、ちょっとだけ病気の話をして
あとは特になんてことない話をしあった。
ずいぶん痩せたおじさんから、たばこを辞めたことも聞いた。
日帰りだったから長居はしなかったけれど
私が来たことをとても喜んでくれて
私はまたねって言って金沢まで車を走らせた。
金沢駅
電車のホームへ向かうまでにあったゴミ箱に
持っていたタバコもずっと使っていたジッポも捨てた。
思いつきみたいに全部捨てたわたしは
願掛けもあって
その日を最後にたばこを吸うのをやめた。
それからひとりになったり
恋人が出来たり
また結婚したり
子どもを産んだり。
住む街が変わって
また子どもを産んだり。
身体のなかで私を養分に育ったり
身体で作られるもので育ったりするから
長い間、私の身体はわたしだけのものじゃなかった。
おじさんの身体はとっくに無くなったし
わたしはずっと死ぬまで歌をうたうから
たばこはもう必要なものではない。
でも今日は
なんだか無性に
わたしがわたしだけのものだった頃が懐かしくて
その頃のわたしに、あなたに
逢いたくて、たまらなくなった。
久しぶりに手にした、たばこのジャケは
昔見た海外のものよろしく
注意喚起のために色気の無い文字が並んでいて
好きだったデザインは上に押しやられ
ひっそりと張り付いていた。
思い出すこともなかったくせに
わたしの中にはいつもの手順がこっそり残っていたようで
上部のビニールを炙って赤いラインを残して
重なった紙は人じゃない方をあけて
反対側をとんとんと指でたたいて一本取り出す。
咥えて
マッチをすって
火をつけた。
吸い込んだ煙の匂いは懐かしく
久しぶりだからむせるかなと思ったけど
そんなことはなくて
ゆっくりと一本吸い終わった頃には
頭の中でごちゃごちゃしていたものたちは
それぞれ所定の位置に還っていた。
20歳になる2日前、片町でオープンしたバーの店名から始まって
25歳の時、都島区で始めたバーに引き継がれた店名
そして30歳
弾けないギターを抱えて歌い出したバンドの名前
今、ひとり歌う時のステージネームの中にもそれはある。
最も光が当たって明るく見える部分
見せ場
見どころ
お店の名前を考えていた時
ふと傍らにあったたばこに目がいき
綴りはちがうけど、単語の意味を知って運命を感じた。
まだまだ途中だけれど
わたし人生にはたくさんの見せ場があった。
たくさんの出逢いがあって
色んな時期にそれぞれ輝きのようなものがあって
これから先もきっとたくさんあるだろう。
望んだことも望まないことも全部
今のわたしを形作る大切なピース。
もしもわたしの身体が無くなる前に
思い返すことがあったなら
わたしはどの場面が1番輝いていたと思うんだろう。
光が当たっていた場面はたくさんあるから
暗い部分も、きっと全てが輝いて見える。
眩しくて目を細めながら
最後に一本ハイライトに火をつける。
もしわたしが最後まで吸えなかったら
火の始末だけは誰かお願い。