レインマン(1988)
高級中古車店を経営している、チャーリー(トム・クルーズ)が、様々な検査の不合格が原因で経営に行き詰ったところに、父親の訃報が届く。
父子の関係は冷え切っていたが、付き合っていた彼女に説かれて葬儀に参列。
父親は巨万の財を築いていたが、トムに残された遺産は、ビンテージ物の中古車と薔薇の木のみ。
残された財産のほとんどは、管財人の管理の元、兄、レイモンド(ダスティン・ホフマン)のもとにわたるように遺言で残されていた。
それまで、兄がいることさえ知らなかったチャーリーは、精神福祉施設で暮らす兄を引き取り、遺産の分け前を受け取ろうとするのだが・・・
ホフマン演じる、レイモンドはサヴァン症候群の持ち主で、数字の記憶力が抜群にいいのに、自分を表現する方法がうまくいかず、それによって最初はイラついていたチャーリーが、次第にその能力に驚いていく経過が、誇張なく描かれているのがいい。
チャーリーの幼いころの記憶にわずかに残っている、歌を歌っている夢の中の人の正体が次第にわかっていくところもうまい。
最初は俗な気持ちで兄を引き取ろうとしていたチャーリーが、ビートルズのある曲(曲名は書きません)がきっかけで、兄弟愛に目覚めるところもあざとくなくていい。
音楽の使い方がとてもうまいんですよね。
ストーリーだけを追うと、しんみりお涙頂戴のロードムーヴィーのように思えますが、バリー・レヴィンソン監督は、湿っぽくならないように、ところどころでギャグを挟み込んでくるので、気分よく観ていられる。
Kマートのパンツのエピソードなど最高だ。
レイモンドの特技を活かして、カジノで大儲けする場面は爽快だし、チャーリーがレイモンドにダンスを教え、そのダンスをコールガールと踊るのを楽しみにしていたのにすっぽかされがっかりするが、事情を察したチャーリーの彼女がエレベーターの中でレイモンドとダンスをするシーンは胸が熱くなる。
綺麗ごとで終わらず、少しほろ苦い後味の残るラストシーンもいいですね。
トム・クルーズが、だんだんいい奴に見えてくるの演出も上手いが、やっぱり、ダスティン・ホフマンの自然な演技が抜群で最大の見どころ。
人情噺の上手いバリー・レヴィンソン監督ですが、そのフィルモ・グラフィーの中でも、上位に入る作品ではないかと思います。
完全に余談ですが、
妻と結婚する前に二人で本作を劇場鑑賞したのですが、なぜかお互い観終わった後不機嫌だったなあ。何故だろう・・・
『レインマン』Rain Man(1988)
バリー・レヴィンソン監督 134分
1989年(平成元年)2月日本公開