グレン・ミラー物語 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
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 グレン・ミラー物語(1954)

 

僕はビックバンドジャズが大好き。

だから、オープニングから“In the Mood”を始めとする名曲が次々と流れる本作は、その音楽を聴いているだけでゴキゲンになれる。

 

トロンボーン奏者であり、その旺盛な創作意欲が高じて自ら、“グレン・ミラー楽団”を設立。

売れない時期や、破産などの憂い目にもあいながらも、その先鋭的な楽器編成と編曲が次第に大衆に浸透していき、国民的バンドにまで育て上げた彼の生涯を描いた一作。

 

良き妻、良き友人、良き両親に囲まれ、古き良き時代を過ごした彼。

 

妻にプロポーズするシーンや、大学の学び舎を妻と歩くシーン、破産してしまうシーン、音楽の方向性の違いで思い悩むシーン、誕生日のサプライズのシーン、など、人生の転機となるような出来事が次々と起こるのだが、監督、アンソニー・マンは、これらのエピソードを過度に感情を込めることなく淡々と描いていく。

 

彼は志願兵となり、慰問楽団を率いて演奏しているところに空爆があり、それでも演奏を止めないで演奏を続けるところなど、凡庸な監督などと違い、カメラはグレン・ミラーの表情をアップで捉えて緊迫感を出すのではなく、むしろ、引きの映像で全体を捉えている。

この手法で、かえって緊迫感が増すのだから見事な演出だと言わざるを得ない。

 

また、当然音楽も物語に非常に上手くリンクしており、とてもロマンティックなシーンで使われる“ムーンライト・セレナーデ”や、兵士たちの戦意高揚のシーンに使われる“American Patrol”のシーンも楽しいが、断然楽しいのは、妻の誕生日サプライズパーティーに演奏される“ Pennsylvania6-5000”。

彼の生涯は、悲劇で終わるのだが、観終わった後に暗く寂しい気持ちではなく、逆に爽やかと言ってもいい印象を残すのは、やっぱりアンソニー・マン監督を始めとしたスタッフの音楽に対する造詣の深さに加え、淡々と、そしてキレのいい演出のおかげだと言えると思う。

 

誰一人として悪人が登場しないのもいい。

クラブで、ルイ・アームストロングと即興でセッションする場面も名シーン。

まだまだ言いたいことが書ききれない名作!

未見の方は、ぜひご覧ください。

 

 

『グレン・ミラー物語』The Glenn Miller Story(1954)

アンソニー・マン監督 115分

1954年(昭和29年)1月日本公開