真幸くあらば | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 真幸くあらば(2010)

 

多分、本作を演出している、御徒町凧という方は、映画監督が本職ではないのだろうね。

展開が恐ろしく平坦で、盛り上がりもサスペンスも感動もない。

 

カップルを殺害し、死刑宣告を受けた男。

弁護士からの控訴の要請を断り、死刑を受け入れる。

 

拘置所にいる主人公に、ある日、弁護士の知り合いだという女が面会に訪れるのだが・・・

 

いやあ、何もかもが唐突過ぎて、しかも主人公と尾野真千子演じる面会にくる女のやりとりが陳腐。

 

女は、主人公に聖書を差し入れるのだが、その聖書に秘密のやり取りが記してあるシーンが、かろうじてドラマ的だなと感じる程度。

 

そして、この二人の関係に驚くべき事実があったという展開を描こうとしているのだが、これがまったく驚きがなく困ってしまう。

 

遠く離れた二人が、満月の夜にお互いを思いながら自慰行為をするシーンがおそらく山場なんだろうけど、こうなるほどの関係性が全く描かれていないので、観客はその行為をただ傍観するだけ。

これによく似たシーンで思い出されるのが、アラン・パーカー監督が1978年に撮った『ミッドナイト・エクスプレス』でのシーン。

いつ出られるかわからないトルコの牢屋の中で絶望している主人公に恋人が面会にくる。

恋人は胸をはだけ、主人公はそれを見ながら自慰行為をするのである。

人生の先が全く見いだせない主人公の悲劇がぐっと高まり、息苦しくなるほどの切ないシーンだった。

 

 

比べるのもなんだかなあと思いながらも、本作の人物の描き方の浅いこと。

 

森山直太朗が、音楽を担当しているようなのだが、こちらも単調なスコアが延々と続き退屈を誘う一つの原因となっている。

伴奏音楽に関してまったく素人だということだ。

 

1時間30分ほどの作品だが、あまりにも退屈で、3時間超の作品のように感じた。

見どころは、クライマックスでの尾野真千子の自慰行為に耽る官能的な表情のみ。

 

 

『真幸くあらば』(2010)

御徒町凧 監督 91分

2010年(平成22年)1月公開