友よ静かに瞑れ | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 友よ静かに瞑れ(1985)

 

北方謙三原作のハードボイルド小説を、崔洋一が演出、監督した作品。

小説では舞台が山陰の地方都市ですが、映画版では沖縄になっています。

 

沖縄の多満里地区では、下山建設という不動産開発会社が、この周辺の土地を次々と買い占めていた。

 

その開発(地上げ)に反対し、下山建設の幹部に刃物を振り回したという容疑で、阪口は逮捕拘留されていた。

 

阪口の旧友で医師の新藤は、そんな阪口を釈放させようと、東京からやって来る。

 

多満里地区に着き、阪口の経営しているホテルに行こうと村人に道を尋ねようとするが、どの住民もそのホテルの名前を言っただけで怪訝な顔をされてしまう。

 

阪口の息子も、父親の件でいじめを受けている様子。

 

新藤が周辺を調べてみると、そこには、開発会社、警察、ヤクザのきな臭い関係が浮かび上がり・・・

 

寡黙なヒーローが旧友を救うためにふらりと現れて、悪者をとっちめて去っていくというのはまるでアメリカの西部劇のような筋立て。

終始静かなムードで淡々と進む物語。

 

展開的には、阪口の息子が大きなキーパーソンになっているのですが、この気弱である設定の少年がとても聡明そうでちょっと合わなかったかな。

 

阪口の愛人で、バーを経営している志摩(倍賞美津子)が色香あふれる艶っぽい役を演じていますが、どうも深みがない。

いや、彼女だけではなく、登場人物全員に深みがないから、誰に感情移入することもできず。

クライマックスの対決シーンは構図もなかなか凝っており、一応の見せ場にはなっているのだが、全体的にはいまいち乗り切れず、湿っている薪のような作品という印象。

 

舞台の多満里地区とは、最近何かと騒がしい辺野古地区のこと。

原作と舞台を変更したのは何か意図があったのかなと変に勘ぐってみたくなる。

 

 

『友よ静かに瞑れ』(1985)

崔洋一監督 103分

1985年(昭和60年)6月公開