子宮に沈める | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 子宮に沈める(2013)

 

2010年(平成22年)に大阪で起きた、大阪2児飢餓死事件をモデルにネグレクト(育児放棄)をテーマにした作品です。

 

二人の幼い子供を育てている由希子はシングルマザー。

 

彼女は良き母となろうと懸命に努力するが、子育てに集中していくうちに世間との隔離を強く感じ始め・・・

 

実在の事件がモデルとなっているので、二人の幼い子供の顛末については想像に難くなく描かれるのですが、それがわかっていても子供たちが不憫でならない。

家に置いてきぼりにされた3歳くらいだろうか、少女がまだ乳児の弟を母親の見様見真似で面倒をみる。

 

ミルクの作り方もよくわからず、手で掬った粉ミルクを哺乳瓶の中に入れ、ペットボトルの水を入れてそれを与える。

 

いよいよ食料がなくなってきたら、パイナップルの缶詰を冷蔵庫から取り出し、それを包丁で開けようとする危うい場面。

 

どんどん苛酷になっていく状況を、極力セリフを排し淡々と場面を積み上げていく。

 

母親には同情を寄せることができないような演出となっており、鬼畜といってもいいような鬼親として描かれる。

一寸垣間見せる良心にも、心は響かない。

ラストの慟哭が虚しい。

ローアングルを中心としたカメラワークが、手を伸ばせない観客のやるせない気持ちを増幅させる。

 

確かに自分の子供でも、忙しい時にギャン泣きされたら、イライラするし逃げたくもなる。

外部の相談窓口を頼ることは恥ずかしくないのだから、困ったときはどんどん頼るべきだと強く感じた。

 

この母親に寄り添った気持ちを書こうといろいろ言葉を捻りだそうとしたが、こういう状況に置かれた時の心理状態が真に理解できなくて、どう文字にしても彼女の心の重さを表現することができない。どう書いても軽くなってしまう気がしてしまうのだ。

母親でもない、女性でもない私には。

 

モデルとなった事件では、この母親にもいろいろ事情があったようだ。それでも赦せるわけではないのだが、彼女は懲役30年の刑が確定している。

※大阪2児飢餓死事件ーWikipedia

子供虐待防止のオレンジリボン推奨作品。

 

 

『子宮に沈める』(2013)

緒方貴臣監督 95分

2013年11月公開