フィル・スペクター(2013) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 フィル・スペクター(2013)

 

60~70年代の洋楽に興味がある方でしたら、この名前は記憶に強く残っていると思います。

 

名音楽プロデューサーでありながら奇人。

その奇行の数々が嘘か誠かまことしやかに広がっており、2003年に女優を自宅で射殺した容疑で逮捕起訴され、収監中の2021年にコロナウィルスで亡くなった、フィル・スペクター。

 

本作は、その彼が犯した殺人事件の裁判と、彼の弁護を受けた女性弁護士の物語です。

女優殺人の容疑者として逮捕された、フィル(アル・パチーノ)。

この事件はそれまでの彼の奇行やDV癖によって、世間は完全に有罪の空気になっており、彼にとっては不利な状況だった。

 

彼は大金を使って大物弁護士を雇うのだが、裁判の不利を悟ったのか、この大物弁護士は助手である女性弁護士(ヘレン・ミレン)に半ば無理やり弁護を引き継がせる。

 

この女性弁護士も、有罪を疑っていたのだが、実際に彼に会い話をしてみたり、状況証拠を改めて調べてみると、無罪かもしれないと思うようになり・・・

 

音楽プロデューサーとしての彼の才能は本当に素晴らしいものでした。

その強すぎる個性がたびたびアーティストと衝突し、ビートルズのアルバム“Let it be”の中の一曲『The Long and Winding Road』のアレンジを巡ってポール・マッカトニーと揉めたのが有名です。

 

でも、そんなフィルを、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは信頼しており、名盤『ジョンの魂』 (John Lennon/Plastic Ono Band)(1970)や『オール・シングス・マストパス』(All Things Must Pass)(1970)は傑作となってます。

 

でも、そんな彼を支持するジョンをもフィルは銃で脅したことがあるという噂があります。

 

それ以外も女性関係などでスキャンダラスな人物だっただけに、世論が有罪一色に染まってしまうのも理解できます。

 

ただ、それは多少なりとも彼のことを知っている観客ならわかりますが、彼のことをあまり知らない人にはよくわからないストーリーだと思います。ちょっとルーズな作り方かな。

 

弁護側がいろんな証人を集めて証言させたり、法廷に現場を再現しようと試みるシーンは多少興味がそそられますが、法廷ものとしては少々物足りなく感じました。

 

本作の見どころは、法廷サスペンスの側面よりも、フィルになりきって演じた、アル・パチーノのゴキゲンな芝居ぶりです。

ラストに裁判の顛末がテロップで流れますが、

そんな彼がコロナウィルスが原因で亡くなったのは、なんともいえない気持ちになりますね。

 

モーツァルトもそうだったのですが、音楽の天才には奇人が多いのでしょうか。

 

 

『フィル・スペクター』Phil Spector(2013)

デヴィッド・マメット監督 92分 TVM