カポネ大いに泣く(1985) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 カポネ大いに泣く(1985)

 

 

 

昭和初期。

芸者の小染(田中裕子)は、旅芸人で浪曲師に憧れる男、海右衛門(萩原健一)との浮気が夫であるヤクザの親分にバレて、二人してサンフランシスコに逃げる。

 

海右衛門は米国に住む在留邦人を浪花節で励ますという壮大な夢があったが、この渡航はブローカーによる詐欺であり、二人は一文無しになってしまう。

 

小染は女郎になり、海右衛門は乞食になってしまうが、そんな時ヤクザのガン鉄(沢田研二)と知り合い、アメリカの高級ナイトクラブショーを観ることになる。

 

そして・・・

あらすじを書くととても面白そうでしょ。

しかし、僕には合わなかったな。

 

着想はいいんですよ。

浪花節とアメリカのブルースやジャズとのセッションの場面もとてもいい。

 

KKKに海右衛門をはじめとした日本人が迫害されたり、お馴染みの、禁酒法時代の、アル・カポネとガン鉄が酒を巡って対峙する場面もいいんです。

ショーケンが唸る河内音頭の場面なんか、田中裕子の合いの手を含めて最高なんです。

 

物語の中に太平洋戦争を絡めて、問題提起しようとしたのもわかる。

 

だけど、この緊張感のなさは何なんだろう。

130分の尺が3時間くらいに感じます。

 

鈴木清純の映画は、時々観ているのがつらくなるような作品がありますが、本作がまさにそう。

彼なりの自由な表現に観客のほとんどはついていけない。

 

自由な表現と言えば、真っ先に、フェデリコ・フェリーニが思いつきますが、彼の表現には彼にしか創造できないイメージがあった。そのイメージの羅列と観客は対決し酔うのであるが、鈴木清純の描くイメージは陳腐。

だから格闘する前に飽きてくる。

 

そんな本作での一番の見どころは、田中裕子。

彼女が登場するシーンだけ、陳腐なイメージが『画』となっていました。

彼女の魅力は監督の独りよがりのイメージを破壊します。

酷評したのは僕の浅学のせいかもしれません。

面白いという人がいるのも確かですので、

あなたの感想を聞かせてほしいです。

 

『カポネ大いに泣く』(1985)

鈴木清純監督 130分

1985年(昭和60年)2月公開