さよならミス・ワイコフ(1979)
当時の映画雑誌で、本作の暴行シーンをクローズアップした刺激的な特集が組まれたのを覚えています。
1950年代のアメリカ中西部。
保守的なこの街の高校で教師をしているミス・ワイコフ。
彼女は幼いころの両親の不仲で心理的に傷を負っており、特に男性器に対しては恐怖心に近いトラウマを持っていた。
そんな彼女は35歳になった現在でもそれが原因となっていて男性経験がなかった。
保守的なこの街で、彼女の考えは進歩的で人種差別に反対し、共産主義の考えも耳を傾けるべきという信念を持っており、学校長や生徒たちからも尊敬を受けていた。
そんな彼女だったが、時々、性的抑圧が爆発するのか情緒不安定になる事があり、精神科の病院を受診することに。
医者の的確なアドバイスで彼女の情緒不安定は改善していき、男性に恋心を抱くようになるのだが、そんな中、彼女はフットボールの奨学生である黒人青年に教室で暴行を受けて・・・
この暴行シーンが執拗な描写で、センセーショナルな話題になりました。
それがどんどんエスカレートしていき、ワイコフが男子生徒の性奴隷に堕ちていく様は観ていてあまり気持ちのいいものではありません。
男子生徒は口淫を要求するのですが、そんなもの嚙みちぎってやればいいのにと思いましたね。
この出来事はたちまち噂として町中に広がり、ワイコフは自殺を図ろうとしますが、ふと吹っ切れた表情になり、下宿を追い出されて一人旅立ちます。
一人の女性の自立を表現したかったのだと思いますが、なんとも後味が悪い。
自分が擁護していた黒人に凌辱されるという皮肉もあるのだろうが、刺さらない。
すべてに浅いんですよね。
だから余計に熱のこもった暴行シーンがクローズアップされることになり、人間ドラマとして評価されにくくなってしまいました。
それでもワイコフを演じる、アン・ヘイウッドは頑張っていたと思いますよ。
体当たりでワイコフを演じていました。
脚本にもっと深みがあれば共感できたかもしれないのになあと残念に思います。
あまりにも、図式的すぎましたね。
ワイコフが同僚らと、映画『欲望という名の電車』について論じたりしているシーンは面白かったです。
『さよならミス・ワイコフ』 Good Luck, Miss Wyckoff(1979)
マーヴィン・J・チョムスキー監督 105分
1979年10月日本公開