バタアシ金魚(1990)
何度でも見返したくなる男純情物語。
直球ど真ん中、日本青春映画の傑作。
主人公の高校生カオルはある日偶然出会った水泳部のソノコに一目惚れ。
カオルは泳げないのにソノコのいる水泳部に入部。
オリンピックに出場すると意気込んでソノコの気を惹くように必死に頑張るが、ソノコはまるでカオルに気がない。
気のない素振りのソノコの気持ちを知ってか知らずかカオルは猛アタックを続け、恋のライバルたちに勝つために水泳の練習に一層励むことになるのだが・・・
誇張することなく等身大で描かれる高校生たちの青春模様。
オープニングの授業が終わった後の教室の風景とか部活を頑張る生徒の風景とか、そんななんでもない描写がなぜかノスタルジィを誘う。
流れる雲、夏の虫の声、喫茶店、そしてその窓から眺める雨、虹、花火・・・
自分が青春時代に見たであろう風景がそこに再現される。
多分に思い出補正がかかっている自分の記憶だが、確かにそれは存在していた。
そんなシーンの連続にいつも涙がこみあげてくるのは何故だろう。
ビートルズの楽曲『Because』の一節、
Because the sky is blue, it makes me cry
の気持ちかな。
主人公カオルの生きざま。
勝者の栄光と敗者の尊厳。
どちらも素晴らしく尊いものだ。
照れることなく真正面からそれを描いているのも素晴らしい。
拗ねる照れる反抗する。
思春期の精神栄養素が100%詰まっている。
特にカオルの感情の出力は大きく、
あまりにも大きいカオルのエネルギーを受け止めきれなくてソノコは過食症になって太ってしまうほど。
主人公カオルを演じた筒井道隆はもちろん好演だが、ヒロインソノコを演じる高岡早紀の圧倒的魅力と言ったら。
そりゃカオルじゃなくても狂いますわ。
「弱い自分を認めたところから進化が始まる」なんて名セリフが次々飛び出す脚本も魅力で、無視され続けてもソノコに送り続けているラブレターの文章は名言のオンパレード。
幼いころの浅野忠信や東幹久、白川和子らが脇を固める。
そしてラストは最高に甘酸っぱくてね。
本当に大好きな作品なのです。
『バタアシ金魚』(1990)
松岡錠司監督 95分
1990年6月公開