大統領の陰謀(1976) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 大統領の陰謀(1976)

アメリカ政界を揺るがしたウォーターゲート事件。この汚職を暴いたワシントン・ポスト紙二人の新聞記者の物語です。

 

1972年6月にワシントンD.Cにあるウォーターゲートビルに5人の男が侵入、不法侵入の罪で逮捕される。

 

新人記者だったボブ・ウットワードはこの事件の法廷取材を上司から命じられ裁判所に赴く。

 

この侵入したビルが民主党本部であったこと、犯人が多額の現金を所持していたこと、35ミリカメラなど不審なものを所持していたことなどが法廷で明かされる。

 

そして、この裁判の傍聴に共和党系の有力弁護士が来ていたこと、容疑者の一人がCIAの警備官だったことからウットワードはこの事件にきな臭さを覚える。

 

先輩記者のカール・バースタインはウットワードの記事を彼に無断で校正し、ウットワードとの仲が一瞬険悪になるが、その校正は的確なものであった。

 

バーンスタインもこの事件に興味を示していたことから、熱い思いを感じ取った上司の後押しもあり二人は本格的にこの事件を追及することになる。

 

しかし取材対象者の対応は冷たく、次第に権力からと思われる圧力もかかり、二人の取材は困難になっていく・・・

 

アメリカ第37代大統領、リチャード・ニクソン失脚の原因となったこの事件。

追及の始まりは新人の新聞記者だったところが面白いですね。

演じるのはロバート・レッドフォード。

一番脂がのっていたころじゃないですかね。

終始抑えた演技です。

先輩記者役がダスティン・ホフマン。

レッドフォードとはピリピリした関係ながらも、時折挟まれるユーモアが楽しい。

そして劇中で実在のニクソンの映像が流れたりするところがこの作品にリアリティを持たせていますよね。

 

露骨になってくる圧力の描写なども説得力があります。

取材対象者たちの演技も、少し後ろめたいものを感じている様子がいいんですよね。

先日辛口批評になってしまった『新聞記者』にはこのリアルさがなかった。

 

局長や上司など脇役も渋いメンツで固めているのも本作に重厚感をもたらしていると思います。

 

報道の自由を守るためにはどんな圧力にも屈するなというようなことを局長が二人の記者に諭すシーンは熱い。

 

ただドラマ的にはズルいところもあって、

記者たちに情報をリークする“ディープ・スロート”なる人物の正体が最後まで分からない。

謎の人物だから謎のままということなんでしょうけど、すごく重要な情報を小出しにしてくるこの人物を掘り下げてくれないと居心地が悪く感じた。

 

しかし、一見この地味なテーマをサスペンス・ミステリー風に仕上げた監督、アラン・J・パクラの演出力は確かなのでおススメの一本ではあります。

本作が公開された時期に日本では、

ロッキード事件を追求した『不毛地帯』が話題を呼んでいました。

 

『大統領の陰謀』All the President's Men(1976)

アラン・J・パクラ監督 138分

1976年8月公開