新聞記者 | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

実際に起きた政治スキャンダルをモデルにして作られた社会派ドラマ。

ある学校建設に関して疑惑を抱いた女性新聞記者と、

内閣調査府に属するエリート官僚が真相を追求する物語。

 

一部の観客からは絶賛され、

主演二人の演技にも拍手喝采しました。

 

私の感想は・・・微妙でしたね。

確かにあの事件をモデルにしているのはわかるのですが、

それが軍事利用目的の施設建設が裏に隠されていたというのはあまりにも突拍子過ぎてついていけない。

 

国は国民に隠れてこんな悪いことをしているんだよと告発したいのだろうが現実味がない。

 

それは現実の事件を軽くうわべだけなぞって、

羊のイラストのFAXをヒントに使ったことでわかるように実に薄い推理サスペンス風にしてしまったからだと思う。

 

告発物を作るのだったら、

もっと周りを固めて信ぴょう性を深めて作らなければ、

「あ、これはブラックジョーク?」と思われてしまう。

 

例えばアメリカ映画で、

ウォーターゲート事件を告発した、

『大統領の陰謀』(1976)などは骨太で説得力のある展開になっていた。

物語と時代背景の輪郭がはっきりと描かれていたから。

題材に関するディテールも。

映画としての重量感がまるで違う。

 

原案者の望月 衣塑子氏のメッセージも裏に隠しているようで、居心地が悪い。

映画を使って主張したいならもっと堂々と表現しなよと思いました。

 

国家に戦いを挑んだマスコミの図式は、

内輪では受けたかもしれない。

マスコミが絶対の正義だと思っている人にも。

 

だけど現実としては、

権力に対して弱腰で腐っているマスコミの姿をこの作品が描いている以上に絶望している一般庶民から見ると冷めてしまう。

 

実に浅い社会派の作品でした。

 

『新聞記者』(2019)

藤井道人監督 113分