フェリーニに恋して(2018) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

昨日の記事で『魂のジュリエッタ』(1965)について熱く語ってしまいましたので、

今回はその口直しという意味も込めて、

タロン・レクストン監督の『フェリーニに恋して』のご紹介。

 

過保護気味の母親のもとで育った二十歳の少女ルーシー。

ある日、フェリーニ映画祭を催している劇場に入り、

そこで観たフェリーニ監督の『道』に衝撃を受ける。

 

心すべてフェリーニに奪われたルーシーは、

『8 1/2』や『甘い生活』『サテリコン』など彼の名作を片っ端から鑑賞。

ますます彼に対する憧れが強くなり、

いよいよ抑えきれなくなった彼女はフェリーニに会いにイタリアへ。

 

全くの世間知らずだった彼女にとってはとても大きな決断だった。

 

そして・・・

 

作り手側がフェリーニ好きだというのはとてもよくわかります。

ルーシーの部屋にテレビがあってそこにフェリーニ作品がたびたび流れているというのも、

『魂のジュリエッタ』の演出に対するオマージュだというのもよくわかりますし、

怪しいパーティーシーンなども色彩を含めて相当思い入れがあるんだろうなと思いました。

 

カメラもとても綺麗で、

逆光を利用したローマの名所の風景だとかヴェニスの運河などの描写は郷愁を誘われます。

 

ただ、展開がよくないのが残念。

母と娘の絆みたいなのが重要なサイドストーリーとなるはずなのですが、

ここの処理がうまくないために軽くなってしまった。

この母親姉妹の会話が、

「ストーリーがわからない」とか「抽象的な画面が多すぎる」とか「裸のシーンが多い」とか、

アンチ・フェリーニの声を表しているところは面白かったですね。

 

旅先でイケメンに出会って恋に落ちるのもあまりにも定石過ぎて苦笑してしまう。

 

が、ラストシーンは結構気に入りました。

念願のフェリーニ出会うことができたルーシー。

パラパラとページをめくるように過去の場面にさかのぼっていって、

フェリーニ監督死亡のニュースが流れてからのハッピーエンド。

 

甘すぎるくらい甘いエンディングなのですが、

こんなおとぎ話のような終わり方は嫌いじゃないです。

 

フェリーニ作品が好きな人はいろいろ感じるところがあると思いますし、

賛否両論があるでしょう。

ただフェリーニを知らない人が観たら全く面白くないということは断言できます。

それだけ作り方がルーズなのですが、

私の感性にはわりと合う作品でした。

 

主人公のルーシーを演じたクセニア・ソロはとても魅力的!

 

『フェリーニに恋して』In Search of Fellini(2018)

タロン・レクストン監督 103分