2001年の9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件。
4機の旅客機がハイジャックされて、
そのうち2機が世界貿易センタービルに突っ込み、
1機はペンタンゴンに突っ込んだ。
そしてもう一機は攻撃対象不明のままペンシルバニアの草原に墜落。
本作はそのペンシルバニアに墜落したユナイテッド航空93便の緊迫した機内の模様を描写した作品です。
他の3機と違い、
本機は観客たちがテロリストたちに抵抗したために、
推測ではアメリカ合衆国議会議事堂かホワイトハウスに向かう予定だったのが失敗したといわれます。
まずアメリカン航空11便の航路が異変を始めて管制室がおかしいと思い始める。
ハイジャックされたのではないかという意見が上がる中、
情報が交錯してなかなか判断できない。
そして1機目の飛行機がビルに突っ込む。
CNNのニュース画面が管制室に映し出されて尋常ではない状況であることはわかってきたが、
小型飛行機による単独事故の可能性もあるということで指揮系統は混乱する。
コックピットの中の会話を傍受したテープを分析すると、
犯人グループと思われる会話の中で、
Planesをハイジャックした旨が語られているのがわかる。
「Planes」つまり複数形ということで多重ハイジャックであることがこのあたりで分かってくる。
一方93便の中では、
最初は穏やかなフライトの様子が描かれるが、
犯人グループが武装を始めて操縦士や客らが刺されるに至って、
阿鼻叫喚の地獄模様と変化する。
ここから、
有名な俳優が全く出演していないこともあってまるでドキュメンタリーを観ているような緊張感が持続します。
軍と管制側との意思疎通がうまく取れず、
この非常時に大統領とのホットラインもうまくつながらなかったことから、
ちぐはぐな対応しかとれない。
このあたりの大統領の混乱した模様は、
マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー『華氏911』で詳しく描かれています。
画面に映し出されるCNNの映像は、
いつ観ても衝撃的なのですが、
その衝撃的な映像が本作でも印象的に挟まれていて、
自分の記憶に刻まれた恐怖と哀しみがぶり返します。
最後までテロリストに抵抗した一般人たちの勇気ある行動に涙が止まらない。
作品で描かれている以上に悲惨な状況だったかもしれないことを考えると胸が詰まります。
わざとらしいCGを多用するということもなかったので、
よりリアリティに溢れた画像になったともいえます。
絶望的なラスト。
余計な説明も余韻もなく終わります。
誰が勝ったのだろう・・・
『ユナイテッド93』United 93(2006)
ポール・グリーングラス監督 111分