昨日アップした『喜劇とんかつ一代』の併映作。
こちらは橋本忍オリジナル脚本の極上サスペンスです。
すごい2本立てですよね、今考えると。
死刑廃止論者弁護士宗方（千田是也）の弟子浜野（仲代達也）は、
宗方夫人と不倫関係にあり、
ある日二人の間にいさかいが起こり宗方夫人を絞殺してしまう。
しかし警察は、
その後物盗りに入った前科4犯の男・脇田(井川比佐志）を強盗殺人の容疑で逮捕する。
担当検察官・落合（小林佳樹）の強硬な取り調べに自暴自棄となった脇田は、
自分が宗方夫人を殺したと自白してしまう。
そして死刑を求刑されるのだが、
なんと脇田を妻を殺された宗方が弁護するという。
そして助手を夫人を殺した浜野が務めるというのだ。
検察側は状況証拠も完璧で、
その後の公判手続きも滞りなく進んだことで鼻高々だったが、
ある日浜野が検察官のもとを訪れて、
強盗に関しての証拠は揃っているが殺人に関しての証拠は容疑者の自白しかないではないかと問い詰める。
落合は、
完璧だと思っていた捜査に疑問を持つようになり、
再捜査を始めるのだが・・・
なんといっても橋本忍の脚本の素晴らしさが光ります。
派手な銃撃戦やアクションシーンがあるわけではないのに、
二転三転するストーリーは観るものを釘付けにする。
推理サスペンスではないので、
犯人探しが主目的ではなく、
観客は真犯人浜野の狼狽ぶりに注目していくのですが、
これが見事に裏切られるんですよね。
いやあ、すごいです。
ラストのほんの数秒のオチも見事で、
「あっ」と小さく叫んだあと口が開いたままになります。
監督は黒澤明監督の『七人の侍』などの助監督をしていた・堀川広通。
テンポのいい演出でスマートな脚本をスタイリッシュに調理した腕前はお見事です。
そして、もうひとつ素晴らしいのは撮影。
照明を上手に使った陰影のある夜の街のシーンがとてもお洒落です。
そして音楽が・武満徹。
登場人物らの不安定な気持ちをより高く表現してくれています。
冒頭にも書きましたが、
この作品が川島雄三監督作品と併映だったなんて、
なんと贅沢な組み合わせだったのでしょう。
松本清張氏がカメオ出演していたりして、
遊び心もうれしい一本です。
未見の方はぜひ、どうぞ！
P.S 浜野の恋人役を演じた大空真弓がとても綺麗。
『白と黒』（1963）
堀川広通監督 113分
橋本忍オリジナル脚本 音楽武満徹