異国の出来事(1948)~ビリーワイルダー監督特集③ | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

ビリーワイルダー監督特集3回目は、

『異国の出来事』(1948)のご紹介です。

 

第二次大戦直後のベルリンで米兵の風紀が乱れているという情報があり、

女性議員フロスト(ジーン・アーサー)ら議員一行がベルリンに視察に訪れる。

 

フロストが空港に降り立ち、

故郷にいる恋人からのプレゼントだと言ってジョン大尉にケーキを渡す。

この何気ないシーンからすでに伏線が張られているから、

ワイルダー監督作品は油断できない。

 

米軍大佐の案内で街を視察したフロストだったが、

そこで目にした米兵たちの生活に驚く。

闇市が横行し、

兵隊は誰彼となくドイツの女性に声をかけ、

肩を並べて仲良くイチャイチャしたりしている。

 

お堅い議員フロストはビックリ仰天。

調査を続行していくと、

米兵もよくたむろしている酒場ローレライで歌っているエリカ(マレーネ・デイトリッヒ)というナチスに関係しているドイツ人の歌手が、

どうやら米軍将校の支援を受けているらしい様子。

 

エリカの相手が、

フロストがベルリンの空港に降り立った時に知り合ったジョン大尉であることは、

序盤で観客にわかっているのだが、

フロストはなんと、ジョン大尉に一緒にエリカの居場所に張り付いて、

支援している将校のことを探りたいという。

 

さてさて・・・

 

という感じのロマンティックコメディです。

ミイラ取りがミイラになるというのはまさに本作のフロストのことで、

彼女が次第にジョン大尉に惚れていき、

ファッションからメイクまで変わっていくところがかわいいですね。

自分のファーストネームが「フィービー」だと明かすところなど恥ずかしそうでとても素敵です。

 

そして、

エリカ役のマレーネ・デイトリッヒの魅力。

ローレライで歌うシーンの貫禄とフィービーとジョンが一緒にいるのを目にした時の奥深い嫉妬のような光よ。

ヒトラーにも愛されたエリカ。

私生活でもヒトラーのお気に入りだったが、ナチスに反対し国を出たデイトリッヒの表情は凄い。

 

空から眺めた瓦礫だらけのベルリンの街の様子。

実際に終戦直後のベルリンが映しこまれているシーンもある。

この街の様子は同じく連合国に敗れた日本の風景と変わらないように感じた。

闇市や、米兵相手にこびた商売をする者たち。

 

クラクションを鳴らして二階の窓から鍵が落とされるのが情事の合図だったり、

その合図がサスペンスの引き金になったり、

資料室での引き出しを引っ張りまくっての求愛シーンがあったり、

椅子の投げ合いがあったり楽しいシーンが満載。

 

酒場で米兵独兵関係なく飲んで騒いで、

さらには胴上げまで行われるシーンを観て、

実際に敵同士で戦っていた兵士たちの行動がなんて無意味なことだったのかと思う。

 

ワイルダー監督らしく、

ただロマンティックな恋愛物語ではなく、

ラストにかけてサスペンスを盛り上げてお洒落なオチが用意されています。

少し毛色は違いますが、

この作品にエルンスト・ルビッチ監督の『ニノチカ』(1939)の香りを感じました。

有名なオープニングクレジットの、

『サイレンが金髪で空襲警報でなかったころ』に似たシニカルなメッセージを感じたからです。

ワイルダー監督はこの作品の脚本に参加しています。

 

 

それにしても、

前回レビューした『皇帝舞踏曲』と同じ時期に本作も監督しているなんて、

どれだけ才能があふれているんだよって思いますね。

凄いです!

 

こんなに面白いのに日本未公開だったのは、

何か理由があったのでしょうか?

 

『異国の出来事』A Foreign Affair(1948)

ビリー・ワイルダー監督 116分

 

ビリー・ワイルダー監督特集