Go (2001) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

先日舌の腫瘍を切り取ったあと、

9月16日に熱が39.2度まで上がって、

「こりゃ、ヤバイ、コロナか?!」と思ったのですが検査は陰性。

原因は腸炎でして、その日から続く激しい下痢と吐き気。

普段は高血圧の薬を飲んでいるのに薬を飲まない状態で最高血圧が90を切っていました。

 

ゼリーとヨーグルトしか口にすることができず、

歩くこともしんどい状態でとてもPCの前に座ることもできない最悪の状態でした。

ブログの更新もとてもじゃないけどできる状態ではありませんでした。

 

まだまだ下痢は続きますが、

徐々に体力も回復してきましたので、

久しぶりに映画ブログを更新することができるようになりました。

 

と、前置きが長くなりましたが、

今回ご紹介いたします作品は、

『Go』(2001)。

 

在日韓国人の主人公杉原のアイデンティティの模索と日本人少女との恋愛を描いた作品で、

直木賞受賞の金城一紀作の同名小説の映画化です。

 

民族学校開校以来のバカと呼ばれて、

社会からも警察からも疎まれている「クルパー」こと杉原。

 

元プロボクサーであった父親からボクシングを教わり、

喧嘩が強く、いつもヒリヒリするような生活を送っていた。

 

そんな杉原が、

悪友の誕生パーティーでミステリアスな少女・桜井と知り合い恋に落ちる。

 

杉原には唯一リスペクトしている正一(ジョンイル)という民族学校時代からの親友がいたのだが、

彼は些細なことから日本人高校生に刺殺されてしまう。

 

「ジョンイルはそんなことは望んでいない!」

日本人に復讐しようとけしかける悪友たちの声には耳を貸さず、

杉原は人生について悩む。

 

傷心の杉原の気持ちに気付いた桜井は、

一夜を共にすることで杉原を慰めようとする。

その場で、杉原は自分の出自を桜井に告白しようとするのだが・・・

 

原作者の原体験が描かれているだけに、

国籍難民ともいえる在日の立場がとてもリアルに描かれている。

 

主人公の杉原は触れたら火傷しそうなほど熱い男だが、

ただ暴れるだけの男ではなく真面目に人生を生きようとしている姿に共感できる。

それらしい恰好をしてヘッドフォンでラッパー気取って聴いているのが実は志ん朝の落語だったりするのが嬉しいじゃないか。

シェークスピア全集を読んで涙したりね。

 

それには親友のジョンイルの存在が大きかった。

この作品の中で一番凄い奴。

杉原でなくてもリスペクト出来る凄い奴。

 

杉原を演じるのは窪塚洋介。

彼の作品を全作観たわけではないですけど、

おそらく彼のベストパフォーマンスなんじゃないかなと思います。

静かな表情の奥に秘めた熱い情熱の爆発。最高でしたね。

 

ヒロイン桜井に・柴咲コウ。

原作者は彼女をイメージして作品を作り出したらしく、

役柄が合わないわけがないですよね。

 

脚本に宮藤官九郎。

原作のイメージを壊さずうまく脚本化したなという印象。

彼独特の省略法ともいえる展開が、この作品のスピード感、躍動感につながっています。

 

監督が行定勲。

手堅い演出でうまくまとめているが、

時折見せるスタイリッシュな映像というのが僕にはあわないところがあり少し残念。

スタイリッシュな映像はまた古臭く感じるようになるのも早くなってしまう。

 

自分は虐げられた存在ではなく、

自分の道は自分で切り拓くのだという主張が声高になることにならず、

甘酸っぱいラブ・ストーリーとしてエンディングを迎えるのもいいですね。

 

総合的には、

爽やかな印象を残す秀作だと思います。

 

 

『Go』(2001)行定勲監督

122分