BEST GUY (1990) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

『トップガン・マーヴェリック』で盛り上がる昨今。

思い出してほしい作品が本作です。

 

航空自衛隊千歳基地で、

トップガンを超える称号である『BEST GUY』を目指す若者たちの物語。

 

大当たりをとった『トップガン』への日本流のオマージュとして、

最大限の賛辞を捧げよう・・・と思うのだが・・・

 

いや、あまりにもお粗末ですね。

自衛隊の協力を得てF-15戦闘機を画面いっぱいに描き出す迫力はあるのですが、

どう甘く優しい目で観ようとしてもドラマ部分がね、

いや、お話にならないくらい酷い。

 

ミュージックビデオの制作者の財前直見と航空自衛官の織田裕二との恋。

これが主軸なのかと思うとそうではない。

 

死んだ兄を継いで航空自衛官としてトップパイロットになろうとする織田裕二と、

彼のライバルとのトップ争いが主軸なのかと思うとそうではない。

 

兄の死に関して何らかの秘密を握る上官と織田裕二の確執が主軸なのかと思うとそうではない。

 

一体何なんだ!!!

 

ここまでテーマが明確としない作品は、

むしろコメディ作品としての鑑賞をおススメします。

そういう目で鑑賞するとツッコミどころが満載なのだ。

 

ここはどこなの?というアメリカ風のバーでの織田裕二のナンパシーンから、

どこかのリゾートホテルでの恋人との抱擁シーンまでそういう視点で観ると笑えて愉しめる。

 

部外者の侵入を緩~く許してしまう自衛隊職員。

もっと危機感持てよ!

 

『愛と青春の旅立ち』を模したようなシーンも、

主人公の織田裕二の足が水に取られてつまずきそうになっているのが笑える。

 

どのキャラクターも喰い足りなくて、

「何で?」というシーンの連続だし、

一番感動シーンを持って行かなければならないラストシーンが、

何の感情移入もできていない、

唐突過ぎる教官の退官シーンで閉めるというのがドラマ的には下手すぎる。

 

最終教程のど真ん中で職場放棄し鹿児島の街をうろつく主人公の行動も謎過ぎる。

そんな主人公がBEST GUYを争うポイント争いのトップを競っているっているなんて本当にお笑いの域だ。

 

本家『トップガン』の製作が1986年。

4年もたってこの出来栄えなのは本当に嘆かわしい。

戦闘機の離陸場面とちょっとした洋楽とこ洒落たラブシーンがあればヒットすると思っていた東映首脳陣。

そんなこざかしい考えは本当に罪だ。

作品は今後おそらく半永久的に残るのだから関わっている制作陣が気の毒。

黒歴史は消せないのだから。

 

ソ連のミグが領空侵犯してくるシーンで、

あまりにもCGがチープだと批判する旨もあるようだが、

技術的な面でこのシーンはあまり批判したくない。

当時の日本の技術ではこれが限界だろう。

製作費もいっぱいだっただろうし。

竹中直人や島倉千代子を意味もなく出演させるならこちらの方にお金を回してあげればと思った。

むしろ、

このシーンでスリルが盛り上がらなかったのは監督の技量の無さが要因。

 

例えば、

同時期に制作された米映画『メンフィス・ベル』(マイケル・ケイトン=ジョーンズ監督)での似通ったシーンでは、

本作よりもCGがチープであるにも関わらずとても緊張感のあるシーンを生み出していた。

 

ほっつきまわっていた主人公が突然戻ってきて、

「イマジン(主人公のライバルの名前)……俺は<BEST GUY>になることに決めた」と宣うシーンは、

日本映画史に残る爆笑シーン。

 

もし、『BEST GUY ゴクウ(主人公のニックネーム)』という続編があれば、

私は真っ先に観に行きます!

私は頭のおかしい映画バカですから!

 

あ、ちなみに、

BEST GUY というのはトップガンより上の称号らしいです。