乗りに乗っていた80年代のウディ・アレン監督の佳作。
ブロードウェイの軽食屋で芸人たちがダニー・ローズ(ウディ・アレン)のことを振り返り、
思い出話を始める。
彼は、売れない芸人ばかり面倒をみる芸能マネージャー。
彼が必死になって売り出して人気になった芸人は、
みんな彼の元を去って条件のいいエージェントの元へ去っていく。
ダニーは自分が芸人だったこともあるので、
彼等の背信行為が理解できる。
そんな彼がいま力を入れているのは落ち目の歌手ルー。
元愛人ティナ(ミア・ファロー)との間を取り持ったりマフィアとのトラブルを解決したり、
ダニーは必死になって彼のために仕事を取ってくる。
それによってふたたび売れたルーだが、
彼も有力なエージェントに移籍してしまう。
一連の騒動で愛情が芽生えたティナと心が通じ合ったかと思ったが、
なんと、一緒にルーのカムバックを手伝ったティナもルーと一緒にダニーの元を去っていく。
ウディ・アレン作品の中でも一番切ない作品じゃないかと思う。
モノクロ作品なのがブロードウェイの昔話という感じが出ていてとてもいい。
ダニーの部屋で売れない芸人たちが集まって、
冷凍食品のわびしいパーティーを開いているところにティナが謝りに来るシーンは、
チャップリンの名作『街の灯』の花売り娘がチャップリンのことを恩人だと気づくシーンにダブって素晴らしい。
ウディ・アレンのフィルモグラフィーの中ではあまり振り返られない作品かもしれませんが、
とても心のこもった小品で佳品です。
ブロードウェイのダニー・ローズ Broadway Danny Rose (1984)
ウディ・アレン監督作品 84分