1980年のちょうど今頃『地獄の黙示録』を観に行った | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

大阪のシネラマ劇場、『OS劇場』で「地獄の黙示録」を観に行った。

大作が似合う超一級の劇場です。

 

『ゴッドファーザーシリーズ』で稼いだ金を本作に投入して作り上げた渾身の作品という前評判に煽られる形で観にいきました。

 

それはまさに映画鑑賞を超えた、

『体感』でした。

とにかく凄かった。

 

オープニングの「The End」ですでにTripしてしまった。

ヘリコプター騎兵隊が、

ワルキューレの騎行をバックに村を空爆する場面は、

すべての映画ファンの記憶に残る名場面でしょう。

 

カンヌ映画祭に出品するために、

あえて不完全な形で公開された本作。

 

私が最初に観たのは、

カンヌ公開版と同じ70mmのエンドクレジットがないバージョン。

このバージョンは、

エンディングが唐突に訪れるのでかなり驚いた記憶がある。

 

そして次に、

エンドクレジットとともに、

カーツ王国の派手な爆破シーンが描かれた35mm。

このラストシーンの火薬の量だけで、

下手な小国くらい占領してしまえるくらいの量があったという。

 

そして次にこの作品と再会したのは、

2001年の『地獄の黙示録特別完全版』だった。

大阪の大阪ステーションシネマで観たのかな。

 

この特別完全版では、

オリジナルで大胆にカットされたフランス人入植者のフッテージや、

台風で不時着したプレイメイトらとの後日談などが描かれていた。

 

オリジナル版では一切笑顔を見せなかったウィラード大尉が、

ギルゴア大佐のサーフボードを盗む場面で、

イタズラっぽい笑顔を見せていたり、

同じくオリジナルでは常に影があって決して全身を見せることのなかったカーツ大佐の全身姿が見られたりと、

神秘的だったオリジナルに比べてひどく世俗的な作品になってしまったものだと嘆いたものです。

 

そして今回。、

ファイナルカット版なるバージョンを鑑賞してみた。

そうか、これが本当にファイナルカットというのであれば、

コッポラが観客に伝えたかった事とはこんなに浅いことだったのかと落胆した。

 

オリジナルにあった、

訴える何かを観客に委ねる作風を完全に捨ててしまったんだなと。

 

何を読んでこのような異なるバージョンを制作したがるのか、

(おそらく金のこと・・・かな)

観客である庶民にはわからないことだけれども、

一番不完全な形で公開されたオリジナル70mmが、

私が考えるベトナム戦争の不条理というテーマに即していると思えるのは、

なんだか皮肉なことだなと思う。