決して高級料理ではないけれども、
何故か劇中でおいしそうに見えた食事風景。
クレイマークレイマー(1978)でのフレンチトーストを食べる場面。
妻に出ていかれた夫ダスティン・ホフマンが、
残された息子のために悪戦苦闘しながら朝食のフレンチトーストを焼く。
正直、この作品を観るまでは、
「フレンチトースト」なる食べ物を知らなかった。
レシピまで見せてくれるんだよね。
でもそれを作り上げていく過程は、
息子との関係を象徴するように最初はむちゃくちゃ。
息子(確かビリーという役名だったと思う)の指示に従いながらも大失敗。
しかし物語も進み、
公私ともに悪戦苦闘を続けるうちに、
息子との関係もよくなっていく。
徐々に料理もうまくなっていき、
ラストでは感動の共同作業で焼き上げる。
観客のこちら側としては、
この場面になると、
涙のしょっぱさも加わって忘れられない味になった。
公開されたのが、
『地獄の黙示録』と同じ1979年。
描かれる世界がまさに正反対の小宇宙といえる本作品がアカデミー作品賞を受賞したのは、
この時期のアメリカ国民にとって、
ヘリコプターでベトコンの村を焼き払うことよりも、
父子二人でフレンチトーストを焼き上げる方が胸にしみたのかもしれない。