パッチギ(2005年) | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

『パッチギ』 2005年(日)

井筒和幸監督作品

 

1960年代後半京都。

男子高校生の松山康介は、

日ごろから喧嘩の絶えない隣接する朝鮮学校に親善サッカーの試合を申し込みに行く。

そして、その朝鮮学校でフルートを吹いていた少女キョンジャに一目ぼれするが、

彼女は朝鮮学校の番長アンソンの妹だった・・・

 

『ガキ帝国』(1981)ガキ帝国 | あの時の映画日記~黄昏映画館 (ameblo.jp)

『岸和田少年愚連隊』(1996)岸和田少年愚連隊 | あの時の映画日記~黄昏映画館 (ameblo.jp)

等に見られるように、

関西不良少年ものを撮らせたら天下一品の腕前を誇る井筒監督だけに、

この作品も見せ方がうまい。

 

キーとなる楽曲「イムジン河」を効果的に使いながら、

群集心理を巧みに盛り上げていくクライマックスへの導き方などは名人芸だと思う。

 

他の井筒作品でもそうだが、

登場人物たちがしゃべる関西弁のやりとりが、

変に作りこまれた関西弁ではなく自然なのがいい。

 

劇中街の映画館で上映されている映画が、

猿の惑星」であったり「女体の神秘」だったり、

グループサウンズのバンドに熱を入れすぎて失神する少女がでてきたり、

学生闘争にかぶれる学生や日常会話の中に挟まれる時事ネタの織り込み方も、

上手に当時のディーテールを浮き上がらせている。

阪神パークにレオポン(ヒョウとライオンの子)を観に行こうとするシーンなどは、

懐かしすぎる。

 

演者たちはすべて好演だが、

キョンジャを演じる沢尻エリカの圧倒的なかわいさよ。

ちょっとふっくらしているんだけどいいね。

 

で、作品という点では非常によくできていて、

あるいは感動する場面なんかもちょくちょく織り込まれているんだけど、

評価するとなると微妙なんですよね。

 

朝鮮人差別が奥底のテーマになっているんだけど、

ちょっと偏っているというか、ね。

 

まあ、この作品からそのテーマを省いてしまうと、

ただの甘っちょろい青春恋愛映画になり下がってしまうんだけど。

 

井筒監督らしいといえばらしいんだけど、

似たようなテーマを扱っていてもそこまで声高でなかった、

「ガキ帝国」の方が好きかな。

 

 

自らの声の大きさに酔ったのか勘違いしたのか、

演出技法を過信したのか、

続編の、

『パッチギLOVE&PEACE』(2007)は駄作となってしまった。