雁の寺 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます



雁の寺

1962年(日) 川島雄三監督作品


これぞ日本映画。

若くして逝った川島監督の才気が光ります。


原作は第45回直木賞を受賞した水上勉の小説。

色に溺れた禅寺の和尚と、

歪んだ過去を持つ修行僧の物語ということで、

映画化には仏教界からの強い反発があったという。


しかしこの作品は、

背景をそのように設定しただけで、

人間の普遍的な業を描いていると感じます。


襖絵師の遺言に従い、

美しい女性を妾として迎えた和尚。

その和尚のもとでいじめに近い修行を受けている13歳の修行僧。


修行僧にはつらい過去があるらしく、

過去には決して触れられたくなかった。


そんな修行僧を身近にみていた妾の女は、

ある時その少年(修行僧)の悲惨な過去を知る。


なんとも形容しがたい感情に駆られた女は、

修行僧と過ちを犯してしまう。


その時から、

すべての者の運命が流転し始める・・・


自分の過去を恨みながらも、

その運命に逆らえずにいた少年が、

静かにその情怨を爆発させ、

完全犯罪を企てます。


庭にそびえる大木の意味を、

女に聞かせる場面が静かなタッチながら熱い。

襖絵に描かれている雁の絵が、

物言わず雄弁に物語っている。


同じく少年が先生に、、

自分を知ること?

悟りとは何?

罪とは何?

と畳みかけるシーンはすごい。

ベルイマンの神と人間との対峙に迫るものがある。


ニヒリストである川島監督は、

この重いテーマを提示したまま終わるのは照れたのだと思われ、

まったく予想だにしないエンディングを迎える。

これは映画のオリジナルであろう。


全編にわたって、

若尾文子の艶っぽさが際立っていて、

この作品に重みと説得力を与えている。


やっぱり川島監督はいいなあと、

改めて感じることのできる作品だと思います。


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