少女は自転車にj乗って | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます




『少女は自転車に乗って』 原題:Wajida
2012年 サウジアラビア=ドイツ合作 ハイファ・アル=マンスール監督作品

これは素晴らしい!
年初に、今年一番の作品を観てしまったかもしれない。
愛おしくなるという形容がぴったりの心温まる傑作。

国情により、映画館が全くない国サウジ・アラビア。
宗教の戒律が厳しく、男尊女卑が根強く残っている国。
そんな中で女性監督が作り上げた爽やかな本作。
いろんな制約もあったであろう過酷な製作過程の元、
こんなにも心震わせる作品を作り上げたことは、奇跡とも思えます。

物語は、サウジ・アラビアの首都郊外に住む10歳の少女
ワジダが、どうしても欲しい自転車を手に入れる過程を描いた物語である。

ワジダは母親と二人で暮らしており、父親はたまにしか帰ってこない。
母親はもう子供を産むことができずにいるが、
父親は男の子を欲しがっている。
そのため、父親は第二夫人となるべき女性と一緒になろうとしている。
(この国ではひとりの夫に4人までの妻が認められている)



アジダは、ある朝男の子の友達アブドゥラと喧嘩をする。
彼は「男に勝てるわけないだろう」と言い捨てて自転車で走り去る。
いつか自転車を買ってアブドゥラを負かしたいアジダ。
「私も自転車を買うわ!」

ワジダの通う女学校は、当然ながら戒律が厳しく、
友達同士笑いながら喋っただけで、
「男子に声が聞こえます。声は肌と同じですよ」と校長から注意されたりする。

そんな学校だから、制服の下はジーンズとスニーカー、
ヒジャブ(黒いスカーフ)も被らず登校してくるアジダは問題児扱い。

学校からの帰り道、店頭でみかけた緑色の自転車。
店主は冷たく「800リヤル、高いよ」と言い放つ。

母親に頼んでも、
「女の子が自転車なんて」といって相手にしてくれない。

それならば自分で稼ぐしかないということで、
ミサンガを作り友達に売ったり、ラブレターの配達をして手数料をとったりするが、
800リヤルはやっぱり大金、手が届かない。

さて、ワジダは念願の自転車を手に入れることができるのか・・・

あらすじはざっとこんな感じです。
イスラムの厳しい戒律にはびっくりしました。
家系図には女性の名前はのらないのです。

友達同士の雑談で、「友達が自爆テロをしたの、痛そう」
の問いに対し、
「神のためだから痛くないのよ」なんて会話が普通に出てくる。

でもぜんぜん湿っぽくならないのが、この作品のいいところ。
特にボーイフレンドアブドゥラとのやり取りはくすぐったくなるほど微笑ましい。
最高です。
(でも、男女交際は御法度の社会ですよ。)

どうやってワジダは自転車を手にするのかは、観ていただいた方がいいでしょう。
感動的なシーンです。

そして、自転車に乗ってアブドゥラを抜いてどこまでも走っていくワジダ。
本当に爽やかな風のよう。
縛られているものから解きほどかれるようにどこまでも走っていきます。

イスラム教の戒律の厳しさがこの物語の幹となっていますが、
決して宗教批判になっていないところもいい。

初めて作られたサウジアラビアの映画。
異文化を感じるとともに、我々日本社会とそんなに変わらないんじゃないか、
程度の問題だけで、なんて考えたりもしました。

とにかくいい映画です。
オススメ!!

読者登録してね
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ にほんブログ村
ポチっとしていただけたら嬉しいです。