1968年度(日)山下耕作監督作品。
と、いうわけで今日は任侠映画です。
生前に三島由紀夫先生が、
「一つの限定された社会の様式的完成」と絶賛されていた本作。
それぞれの人物描写が素晴らしく、
全てが悲劇に向かって進んでいく物語は、
ギリシャ悲劇にも通じるという評があるように、他のヤクザ映画とは一線を画す仕上がりになっております。
舞台は昭和のはじめ。
天竜一家の総長が倒れたことにより、跡目相続の問題が浮上する。
中井(鶴田浩二)が二代目に推挙されるが、服役中の兄弟分である松田(若山富三郎)が継ぐべきと主張する中井はそれを固辞。しかし体制は松田が服役中であることを理由に、組長の娘婿である石戸(名和宏)が跡目を継ぐこととなる。
出所してきた松田はこの決定に不満を持ち怒りにまかせて、石戸に殴り込みをかける。
松田は謹慎処分となり、次に問題を起こしたら破門ということに。
組織と松田の間を取り持とうとする中井。
しかし事態はすべてが裏目に出てしまう。
三人の兄弟分がわずかの誤解から血を流しあわなければいけない悲劇。
全ては仙波(金子信雄)の画策であることが次第にわかってくるのだが、
悪の組織を颯爽とやっつけるヤクザ映画の爽快感はここにはない。
「任侠道か・・・そんなもん俺にはねえ・・・俺は、ただの、ケチな人殺しなんだ・・・」
伯父貴分の仙波にドスを向けるとき、この作品の悲劇性が決定されます。
脚本は後に「仁義なき戦い」シリーズを書く事になる笠原和夫。
ギリギリの状況に追い込まれた人間が破滅へ向かっていく様を、
描いていて、どこか一つでも欠けてしまったら、崩れてしまう見事な作劇です。
演者では松田を演じる若山富三郎がいい。
容量や融通なんてものは、彼にはない。
納得のいかないことには周囲のことなど気にせず筋を通そうとする。
しかし組織の中ではそういう人物ははじかれてしまうのだ。
そんな兄弟の松田を斬る中井を演じる鶴田浩二。
二人が対峙する場面での苦悩の表情は、本作品のクライマックスだろう。
金子信雄は、やっぱり小悪党を演じさせたら天下一品だ。
世の中哀しいかな、こういう人間が左右しているのであろう。
矛盾を感じつつも二代目を引き継ぐ石戸を演じる名和宏もいい。
結局は利用されていることを知るが、彼は彼で任侠道を全うしようとする。
誰ひとり、かっこいいヤクザは出てこない。
任侠映画の中では、間違いなくトップに近い位置にある作品だと思います。
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