八つの夢の話で構成されています。
夢には人間の
心の中に眠っている、
あるいは、かくしたり、
おさえ込んだりしている
いろいろな気持ちが
正直に現われます。
そして、
夢はそれを驚くほど
自由奔放な形で
見事に表現して見せてくれます。
私は、この映画で
その夢と云うものに
挑戦してみたいのです。
黒澤 明
1990年度(日)
スティーブン・スピルバーグ提供
黒澤明監督作品。
『夢』
黒澤監督自らが語っているように、黒澤監督が見た夢を自由奔放なイメージで8話のオムニバス形式にして作り上げた作品です。
過去の黒澤作品と比べると評価は低いようなんですが、私は好きな作品です、
老境の域に達した黒澤監督が、変に気負わずに素直な気持ちが吐露された作品のようで微笑ましかったのです。
物語は「私」がいろんな年齢になって登場し、ある時は情緒的に、ある時は恐ろしく、またあるときには幻想的に自分の夢を再現していきます。
第1話は、日照り雨。
5歳くらいの「私」が登場し、木陰から狐の嫁入りを目撃します。
日照り雨には、きっと狐の嫁入りがあるという、昔からの日本の言い伝え。
幼かった「私」が見てはいけない狐の嫁入りを杉の大木の陰から垣間見るのである。
第2話は、桃畑。
少し大きくなった「私」
子供の頃の「私」にしか見えない桃の花のような少女を追って裏の段畑に出るが、そこで少女を見失い雛人形達60人に取り囲まれてしまうのです。
人間達によって刈りとらえた筈の桃畑に舞い散る桃の花。
実にファンタスティックです。
第3話は、雪あらし。
「私」たち4人のパーティーは、荒れ狂う吹雪の山中。
そこで死の眠りに落ちていく。
そこへ美しい雪女が現われる・・・
幻想的な夢。
第4話、トンネル。
これは恐怖の夢である。
長く暗いトンネル。狂気の時代に死んでも死に切れない亡霊たちの悲しい足音が響いてくる。
それは、故郷と自然を愛した人間達の葬送曲のように・・・」
「私」は一人だけ戦争から生還している。
暗いトンネルを覗くと、そこには戦死したはずの部下達の亡霊が現われる・・・
第5話、鴉
画廊の中で、ゴッホの画の強烈さに圧倒されている「私」。
「アルルの跳ね橋」の絵に見入った「私」はいつの間にか画の中に入り込んでいた。
そこで、画学生の「私」は憧れのゴッホに出会う・・・
第6話、赤富士。
恐ろしい近未来の夢。
原発が次々と爆発し、富士山までが灼熱のために真っ赤に溶けていく夢。
大地が荒れ狂う中で「私」は呆然と立ち尽くす・・・
第7話、鬼哭
これは、人類滅亡の夢。
「私」は一人生き残ったらしい。
そこで鬼と出合った「私」。
鬼に案内された先で「私」が見たものは・・・
そして第8話、水車のある村。
美しい自然の村。
かつての日本ではどこでも見られた風景だった。
老人が「近頃の人間は自分達も自然の一部だということを忘れている」と語る。
そこへ、賑やかなブラスバンドがやってくる。
「今日はお祭ですか?」とたずねる「私」。
「いやー、あれは葬式だよ」と老人。
「よく生きて、よく働いて、ご苦労さんといわれて死ぬのは目出度い」
老人は、その華やかな葬列に加わっていった。
「正直、生きているのはいいもんだよ。とても面白い!」
老人の言った言葉が脳裏に焼きついて離れない・・・
これが、黒澤監督の「夢」です。
画面は驚くほどに美しい。
本当に美しい映画、イマジネーションの結晶です。
黒澤作品の中では、あまり語られる事のない作品ですが、
私はお勧めです!!!
がちゃん
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