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小泉進次郎氏の死角と選挙公約の見方 憲政史家倉山満【チャンネルくらら】

 

 

 

 

 

▼ ここからは会田さんにこのテーマで話を聞きます
総裁戦では物価高対策を前面に押し出す候補者が目立っています。

自民党総裁選を前に、ポスト候補たちが国民の負担軽減策を競い始めています。

 

こうした中、実質賃金が2ヶ月連続でプラスとなりました。厚労省が発表した7月の毎月勤労統計調査によると、

名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は、前年同月比で0.4%増加しました。プラスは2ヶ月連続です。

7月も夏のボーナスなど特別に支払われた給与の伸び率が大きかったことが寄与したといいますが、

この実質賃金2ヶ月連続プラス、会田さんはどうご覧になってますか?

現在の賃金上昇は、円安による企業収益の拡大によるボーナス、そして輸入物価の上昇から雇用者を守る福利厚生的なものが中心です。決して内需が強くて景気が良いことによる賃上げが中心ではありません。

4月から6月の実質GDPは、前年同四半期比で連続してマイナス成長となっています。

GDP成長率がマイナスにもかかわらず、

見かけだけの賃金上昇で2回も利上げをしてしまうような中央銀行は、日銀だけだと思います。
問題はこの先ですね。


私もお伝えした通り、夏のボーナスが特別に支払われましたが、田さんがご指摘のように、その効果がなくなった時、どうなっていくかが重要です。まさにご指摘の通り、内需が強くならなければならないということです。それが実現するのか、政府がそのためにしっかりと力を発揮できるかどうかが問われますね。

では、現金給与総額の内訳を見てみましょう。基本給を中心とする所定内給与が、前年同月比で2.7%増加しました。ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5%を超え、今年の春闘の結果が反映され、伸び率は31年8ヶ月ぶりの大きさとなりました。しかし、厚労省の担当者は「このまま物価高が落ち着かなければ、実質賃金のプラスを維持することは難しい」と見ています。このあたり、いかがですか?


米国の景気減速がより明らかになってきており、アメリカの中央銀行であるFRBは、利下げに転じることが見込まれます。

グローバルな景気の弱さと円高への転換は、輸入物価を押し下げると見られます。

 

一方、内需はまだ弱く、特殊要因による賃上げがなくなるため、賃金の上昇率も縮小していくと予想されます。

物価上昇率も縮小していくため、実質賃金の伸び率はプラスを維持する可能性があります。

 

しかし、これが日本の景気を支えることにはなりますが、決して良い形での実質賃金のプラス維持とは言えません。

賃金と物価が共に成長する高循環が強くなったとは言えないと思います。

さて、自民党総裁選では、有権者の経済政策への関心が高く、調査によると最も議論して欲しい政策として物価対策が4割近くを占めています。そんな中、総裁選の候補者たちは、有権者の関心が高い物価高対策を全面に押し出しています。茂木幹事長は、増税ゼロの政策推進を掲げ、負担増に反対する立場を強調しました。防衛増税や少子化対策に使う公的医療保険料への上乗せを見送ると明言しています。いずれも、岸田総理の下で導入が始まった方針の転換とも言えます。

また、林官房長官は、電気代やガソリン価格の高騰対策に触れ、年末までに期限切れを迎える補助制度について「エネルギー価格の状況を踏まえて延長を排除しない」と述べました。河野デジタル大臣は、現役世代の社会保険料を下げる意向を示し、資産を持つ高齢者に負担を求める考えと見られます。こうした国民負担に着目した政策について、会田さんはどう評価されますか?


実質GDP成長率はマイナスで、消費と設備投資を含んだ実質民間需要は、コロナ前の2019年の平均を0.99%もまだ下回っています。日本経済は依然として回復途上です。さらに、米国の景気減速がより明らかとなり、円高がインバウンドに影響を及ぼし、頼みの外需にも警戒感があります。そして、マイナス成長下での日銀の2回の利上げは、景気に逆風を与えています。

有権者の経済政策への関心が高いことは、家計が悲鳴を上げていることを意味していると思います。

景気回復を持続させるためには、大規模な経済対策によって家計を支える必要があります。

増税の方針に疑問が出たり、経済政策のメニューの議論がこの自民党総裁選で深まるということは、良いことだと思います。

しかし、できれば増税ではなく、減税という言葉を期待したいですね。

自民党総裁選の争点の一つに、金融所得課税の強化も挙げられています。

給与所得などへの税率は、収入が多くなるにつれて最大55%まで上がりますが、株式の配当や売却益といった金融所得への税率は一律20%です。このため、金融所得が多い富裕層ほど税負担が相対的に軽く、不公平だという指摘が根強くあります。元々、金融所得課税の見直しは、2021年の総選挙で岸田総理が打ち出したものですが、立ち消えのような状態になっています。金融所得課税の強化について、会田さんはどう感じますか?

岸田総理の「新しい資本主義」は、最初は出来の悪いものでした。

取れるところから税金を取って、必要なところに分配するというだけのもので、その一部が金融所得課税の強化でした。

 

しかし、高市経済安保大臣との連合で総裁選に勝利したことで、高市さんの「政府の成長投資で社会課題を解決する」という方針が岸田さんの「新しい資本主義」に織り込まれていきました。

 

社会課題の解決による投資と成長が賃金の上昇につながり、家計への分配が起こるという考え方です。

結果として、増税による分配の方針は消えていきました。

 

今回も同じで、株式市場を大きく下落させて政権の支持を落とすリスクが高いため、

金融所得課税の強化の議論は総裁選後には立ち消えていくでしょう。

さて、国の財政に関しては、河野デジタル大臣が会見で「日本の財政の現状は有事だ」との認識を示し、「そろそろ財政規律をしっかり取り戻さなければならない」と語りました。この経済政策について、インフレが安定的に2%で続くに従って金利の正常化も進み、国の借金の利息の支払いが増えていくなど財政への影響も大きくなるため、財政規律を取り戻すことが重要だと述べています。財政規律の重視についてはどう思いますか?

企業の資金需要が強くなければ金利は大きく上がりません。現在、企業の貯蓄率は異常に高く、貯蓄超過の状況にあります。企業の資金需要がない場合、政府が財政赤字を通じて資金需要を作り出し、支出を増加させなければ経済のマネーは増えていかないということになります。財政収支は大きな赤字の局面にありますが、日銀が誤った景気見通しで利上げをしたとしても、企業の資金需要がなければデフレに戻り、金利はまた低下します。実際、日銀が2回利上げをしましたが、昨年後半からも国債10年金利はほとんど上がっていません。

財政収支の黒字と赤字だけを見るミクロ的な考え方から、企業の金の状況に応じて経済全体を考えるマクロ的な見方に、そろそろ転換する必要があると思います。これまではミクロ的な視点でしか見ていなかったのです。河野さんの考え方は、ミクロ的な見方であり、古いものだと思います。ですが、この考え方を改めてもらわなければいけません。もっとマクロで見なければなりませんが、これができるかどうかは厳しいでしょうね。

他の候補者はどう対応するのか、しっかり議論してほしいところです。チェックできるような質問もぜひしてほしいですね。